献血で一気飲み大会した話

大学に献血車が来ていた。

自分に針を刺すとか、随分と気持ちが悪い、ましてや中身を抜くだなんておぞましい。

とか思っていたはずが、気がついたら「200mlってまだできますか」と聞いていた。景品につられた。現金な人間である。

だってレトルトカレー×2、お茶とかコーヒー7杯分、タオルにステンレスボトルに入浴剤にマスクにクリアファイル、全部くれるっていうんだぜ?

私の考えなぞ、金の前では価値を持たない。ひとえに風の前のチリに同じ。

とは言え、何もこれは初めての献血ではない。3回目だ。

1回目の事の次第は友人に誘われたから。コロナ以前は大抵友人ら3人で行動していたのだが、その日もそうだった。

友人の一人が曰く「献血してみようかな」

もう一人もまた曰く「私もやる〜」

ええ! 言えませんとも! 痛いの嫌だからやりたくありませんだなんて! 大学受験の時初めてインフルの注射したけど、怖すぎて暴れかけただなんて! 

まだ知り合って2月位だぞ!柏木=臆病者なんて思われたくねえ!

流されやすい私「え、じゃあ、私も〜」。

ここで注記しておくと打算もあった。私は血液型を知らなかったのだ。血液検査をいづれはせねばならぬ。

え、でも、献血すれば、血液検査無料じゃね!!??  無料で血液型が分かる!!!

私は安さと周りに弱かった。

何型だろうという積年の謎が解明される期待感と、針をぶっ刺されるという既知の恐怖感胸がドキドキだった

2回目は時間潰しだ。コンサートに招待されたのだが、とんでもなく早く来てしまったのだ。

暑い日だった。これは喫茶店か、どこかでウィンドウショッピングをするしかない。けど、喉も乾いた。金使いたくねぇ。

近くに献血車がいたからそのままレッツゴー。献血の時は飲み物がもらえるので、それをゴクゴクゴク。

針を刺す直前に悲惨な気分になったが、終わってみれば時間もいい感じで、いい気なものだった。喉元過ぎれば、というやつだ。ちなみに、なぜ献血を、というアンケートで「時間潰し」と答えたら2回くらい聞き直された。

で、今回。流石に3回目となれば恐怖心もそこまでだ。

針を刺すことで実感する肉体の脆さが気持ち悪いのであって、痛いのが嫌だというわけではない。しかも、景品が山盛りとくれば……ねえ、分かるでしょう

しかもこの時はまだエアコンが直っていない頃だった。寒かった。寒いと食事を作る気にもならない。だからレトルトを貰ってストレスを軽減したかった。(直せよ、買えよ)

ちなみに、エアコンを直した話はこちらに。

献血お兄さん「献血いかがですか?」

私「お願いします」(献血カードをシャッと出す)

献血お兄さん「あ! いつもありがとうございます!」

いい気分だ。自粛三昧で誰とも話さない日々が続き、久々の会話が、私への感謝だとは! 私は何だ? 仏か? 神か? ヒャッホーイ!(ただの景品に目のくらんだ学生。

大学での献血だから、初めての人も多い。そんな中感謝をされ、若干の手慣れている感も出せる。プチ特権階級味があって嬉しい。ブルジョワ、ブルジョワ。

そんなこんなで、暖房の効いた献血車に乗ってちびちびペットボトルを飲んで、血圧も測って(ちなみに心拍数が異様に高かった。やはり恐怖心があったようだ)いたところで、イベントが発生した。(やっと本題)

献血では実際に血を抜く前に、血圧測定イベント、献血していいか調べるお試し採血イベント、そして最後の献血メインイベントがあるのだが、ちょうどお試し採血イベントのところだ。

その時車の中には私、多分どっかの教員(仮称:教授)、多分理系の大学院生(仮称:院生さん)、多分どっかの学部生がいて、院生さんが世間話をしながら採血されていた。

ナース「献血何回目ですか?」

院生さん「初めてです」

ナース「ありがとうございます。どうしてやろうと思ったんですか?」

院生さん「ニュースで、血が足りないとか聞いて……」

素晴らしい。人間捨てたもんじゃない。涙が出そうだ。景品につられた私とは大違いだ。正直近頃鬱になりかけていたが、だいぶ暖かな気分になった。

ちょっとしたことで泣いてしまう私はハンカチを取り出そうとした。まあ、緊張の手汗を拭きたかったのもあるが。

ナース「ところで、最初に渡された飲み物は飲みましたか?

院生さん「いいえ、飲んでいません」

ナース「あ、それ血を抜く前に飲み切ってくださいね〜」

申し込んだ時に渡される飲み物は血液を抜くから渡されるんだな。これは。等価交換なのだよ。そんなことよりハンカチ。

と、そこで。

院生さん、300ml一気飲み! のーんで飲んで飲んで、のーんで飲んで飲んで!(空耳)

若干慌ただしくなる周囲。ペットボトルを取り出す皆。

大事に握り締めてるだけで、あまり飲んでいなかったようだ。そうだよね。いま喉乾いてるわけじゃないもんね。私もチビチビ飲んでたけど、まだあるし……と思いきや。

それを皮切りに、ハイ、隣の学部生さんもぉぉ……

のーんで飲んで飲んで、のーんで飲んで飲んで!!(空耳)

じゃあ、教授もぉぉぉ……

のーんで飲んで飲んで、のーんで飲んで飲んで!!(空耳)

清々しく空になったペットボトルを口から離す人たち。まてぃ! ここはどこだ? 飲み会じゃないよな? なんで一気飲みなんだよ皆??

その光景に若干びっくりして笑っているナース。ハンカチ探してたけど、涙も手汗もおさらばした私。いや、笑いを堪えて汗が出てきたからやっぱりハンカチは必要か?

しかし、みんなが飲んでいたから私も飲まないといけない気がしてきた。(周りに流されやすい)

じゃあ、私もぉぉ……

のーんで飲んで飲んで!!

3口くらいで無くなったけど、私も残りを一気飲みした。カフェラテ、美味しい。

ちなみに私はそのあと笑いが耐えきれなくて、お試し採血では針刺されるのが嬉しくて笑っているヤバい学生みたいになっていたし、その後の実際の献血イベントでは血の巡りを良くするためとかでお腹に力を入れて足を交差させてたりするのだが、未だに笑いを堪えていた私はお腹に力が入りまくってそんな事をしないでも血はめちゃくちゃに駆け巡っていたはずだ

また献血行こうかな。(喉元過ぎ…略)

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