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アルバイトがしたい! その3

午前中。Amazonから届いた念願の、ペンダントライトを食卓にぶらさげるため、元の蛍光灯を慎重に外していたところ、ドンガラガッシャンとカバーや部品が全部落ち、アパートの退去時まで保管しておくべき大切なネジも全て吹っ飛んでどこかへ消え去り、ショックでそのままふらふらと寝込んでしまった。
そしてさっき起きたけれどわたしは。何をしてるんだ?何もしていない。

照明器具の取り付けも未遂で終わる一日。けれどそんなのまだましで、昨日そしておとといと、記憶がない。むろん、記憶がないというのは、記憶に残るようなことを一切していないということなのだ。ポケモン。DSでポケモンをしたことだけかろうじて覚えている。

家の隣は寺なので今午後六時の鐘がごんごん鳴っている。今このときがドラマや物語で切り取られるのならばまったきこれは、悲壮感というものだ。寺の鐘はごんごん鳴って部屋は真っ暗で、心情を、こんなに煽る情景描写はないだろう。


…と、一週間前ここまでをスマホのメモに書き置いており、おそらく虚しくなって書くのをやめ、これもおそらく、なんとこのあともう一度、わたしは寝た。時間があるなら読書に勤しめばいいものを、とにかく惰眠をむさぼることしかできずにいる。

アルバイトがしたい、と思い始めて思うだけでもう三ヶ月が経つ。あの頃は夏の入り口だったのに、もう秋も超えて、明日は立冬だ。長い冬が来ようとしている。

そんな一昨日の夜、食卓で回覧板を見ていた夫が「こんなのあるよ」と教えてくれたのが、近所の小学校の放課後学習支援のボランティアだった。夕方の一時間、宿題をする子どもたちを見守りつつ、場合によって分からないところは教えたり、一緒に考えるというもの。

これまでアルバイトアルバイトと働くことにしか目が行かなかったけれど、ボランティアというのはとっつきやすい。わたしはあんなに重かった腰をひょいとあげ、翌日すぐに小学校に電話をかけた。

すると校長は大歓迎、ウェルカムアワ!スクール!くらいのあたたかさで迎え入れてくれ、代表の保護者の方とも色々とお話ができた。ホラこうやって、知ってはいたけど本当に、ささいな働きかけで人と繋がることができるのだ。けれどやっぱり、自分でやってみるまでそんなこと、わからなかった。

今日はボランティアの一日目、だったのだけど、想像していたよりも小学生はずっとしっかりしていて、敬語を使われてしまうことに面食らって、へらへらとしていたら終わってしまった。けれども、なんともいえない充足感。

最近、ながらく不安で懸念していたことが、いざ勇気を出して調べてみればそんなに案じることじゃないということが分かってこころが少し上を向いた、こともあってそれで勢いでここまできて、やっと深呼吸ができる感じがする。

これからは平日の夕方、毎日自転車で小学校に通う日々が続きそうです。


最近の食卓。


#エッセイ #コラム #日記 #暮らし #ムーミン #食卓

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