あさにっき61
オーケストラを聴いて。
人生で初めてだった。
緊張して、スカートで行ったけど落ち着かなくてデニムに履き替えた。いい選択だった。
席は一番安い二階席。
実は以前もこの二階には来たことがあったが、そのときは高熱を出したまま、あたまに冷えピタを貼って、ほぼ寝ながら鑑賞していたから、正直記憶がない。
しかし今日、いざ座ってみると、思ったより急斜面であり、私は身の危険を感じるほどの恐怖を覚えた。
まるでバンジージャンプを飛ぶ前の、高さに怯えるようなあの感覚…
始まる前も始まってからも、どうやらここの県民の人は揺れたりリズムを刻んだりしてしまうことをしないらしい。
かなり上の席だったので、一階も辺りも見渡せたわけだが、みんな一点を見つめて身体は固まっている。
わたしにはそれも、恐怖だった。
動いてはいけないのか、ちゃんと聴かないといけないのか、少しでも動いたら変に思われるのか、外に出たいけど今出たら白い目で…
なんて、初めての高尚な音楽を目の前にして、そんなことばかり気にしていた。
暗黙の了解。日本の怖さだ。
第一部が始まった。手汗が止まらない。ミンティアを握りしめる、溶けていく。
薬を飲むか飲まないか迷いながら、それでも必死に聴こうとして聴くオケは、苦しかった。
情熱的なバイオリンを聴いた一部が終わり、外に出ようとした。
しかし、一緒に来ていた友人が、
「2楽章、わたし気持ち良すぎてカクンってなったの、見た??」
と聞いてきた。
わたしは、え?オケって、聴きながら寝ていいものなの?!と、内心驚きしかなかった。
その時同時に、わたしは音楽すらも、自分なりの楽しみ方ではなく
「正しい楽しみ方」をしようとしていた。探していた。
あーここにまで来てるんだ…と個人的に愕然。
正しい楽しみ方ってなんだよ。
何か物語を感じることだけが、正しい音楽の楽しみ方かい?
空を飛ぶような感覚を覚えた、それも楽しみ方の一つじゃないか。
弾いてる気分になった、それもそうだ。
気持ちよくなって眠くなった、動きが面白い、みんなでひとつだ。
何もかも、音楽を楽しんでいるではないか。
正しい音楽の楽しみ方を知りたいのなら、大学にでもいけばいい。そうすれば、教えてくれるだろう。
ごく短いアンコールも聴き、私たちは満足して帰路に。
外は少し雨が降っていた。私は晴れ女だから、あまり降られなかった。
チェロがやりたい。仕事がやりたい。
心と体を休めたい。
久しぶりなこんな欲求である。
おはようございます☀
あめ、止みますように。
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