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短編小説たち

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書いてきた、短編小説たちです。
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#雨

短編【帰り道】

今日も仕事を終えた。特に何があるわけでもあったわけでもなかったが、急いで帰って、早く一人になりたい、そんな気分だった。

そんなときに限って、やけに信号に止まる。いや、わたしの中で信号に止まった感覚が強く残っているだけなのかもしれない。
かかる時間も止まる回数も、普段と変わらないだろうから、これだけこの感覚になるということは、よっぽどたくさんの信号が不規則なリズムになったか、わたし自身がそうなのか

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短編【噛み合う】

短編【噛み合う】

今日は雨の音が響く。

やけに少し明るく、雨音が。

その響きが共鳴したのは、いくつになってもずっと消えない、自分とうまく「噛み合わない」ような感覚は何だろう、という疑問だった。

乗りたいバスが目の前で去って行ってしまう時のように、隣の人との会話が全く成り立たない時のように、いつもよく見かける本なのに借りたいときに限って見つけられない時のように、右手と左手が全く同じではないように、

まるで、噛

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