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【エッセイ】先入観を持たない『0メートルの旅』を読んで

高山に旅行に行った時のことである。台湾かき氷の看板が出ているカフェが目に入った。台湾かき氷は緑豆やハト麦、サツマイモ団子などがトッピングされた具沢山のかき氷であだ。

台湾旅行で食べたのが懐かしくなり、その店に入った。
カウンターに座って店の人と話すと、その女性は台湾出身だということが分かった。
日本語が堪能だったので、
「お上手ですね」
と話しかけた。

すると、嬉しそうな表情は全く浮かべず

「長く住んでいるから」
とひと言だけおっしゃった。
会話が途切れ、台湾かき氷を黙々と食べた。そこへ口元に髭をたくわえた男性が現れた。その男性は旦那様で店主だった。

店主は笑顔で
「どこから来たの?」
と尋ねてくれた。
その声はこちらの心を緩ませた。 
言葉こそ出身地を尋ねる意味であったが、前から知り合いかのように親しげだったのだ。

「三重から来ました。」と答えると、
店主は「三重かぁ」と言って、次々と私の知らない三重の地名をあげた。聞けば、全国各地、世界中を旅したそうだ。そして、店に来るお客さんに「あんたの国に行ったことあるよ」と言っているという。
初対面の人に“あんた”なんて言える人は相当つわものだ。
しかも嫌な感じはしない。
世界中、日本中を旅した人だからこんなに容易に人の懐に入れるのだろうか。

ふとnoteでも有名な旅好きの岡田悠さん著書『0メートルの旅』ことが浮かんでくる。

この本には岡田悠さんが16の地域と国で遭遇した出来事が書かれている。

読んでみると、知らなかったことだらけで、ワクワクした。

例えば、南極のペンギンがくさい!とか

敵対するインドとパキスタンの国境では、
国旗を夕刻に降ろす「降納式」スタジアムで行われていて、
両国の国民が観客として熱狂しているとか。

世界ってひろーーい。
まだ何にも知らない子どもの頃のような気持ちになった。

そしてもちろんバックパッカーの旅では、いろんなことが起きる。

モロッコでは初日にバックパックを盗まれ、そうかと思えば何日も家に泊めてもらう親切を受ける。

「わからないし、うまくいかない。世界ってそういうものだ」

こう岡田さんが言うのも納得だ。

どこの国にも良い人も悪い人もいて、結局のところ分からないのだ。

髭の店主も旅をして、騙されたり助けられたりしたのだろう。結局分からないのだから、予想をしたって無駄であり、返って先入観なく人に接するようになったのではないだろうか。

私も先入観を捨てることができたら、きっと新しい世界が待っているだろうなーと思う。


カフェで奥さんとの話を盛り上げる為に台湾旅行のことを話題にした。
「台湾の方って本当に親切ですよねぇ」
奥さんは
「旅行客にはね」
と答えた。

私が型通りの“台湾人”にはめようとしていると感じたのかもしれない。奥さんがあの店主を選んだ理由が、分かった気がした。

もっと、もっと旅をしよう。
先入観なんて意味がないと思い知り、世界を広げる為に。

そして、この本は何百キロも遠くに行くことが旅の本質ではないことを教えてくれる。

どこへ行こうとも、予定も目的も固定概念もすべて吹っ飛ばして、いまの目の前にある0メートルを愛すること。

『0メートルの旅』

読んでいただきありがとうございます!一緒に様々なことを考えていきましょう!