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ななつの森をどうぞ

こんにちは、水源純です。

ブクハンターセンダイのイベント向けに編まれたアンソロジー
『ななつの森からとどいた小箱』
こちらに参加するまでの経緯などつらつらと、そしてこの本の紹介をしたいと思います。

とりあえず申し込む!

今年6月ごろ、ツイッター上で、もりとハントをテーマにしたお話の書き手を募っているのを見つけて、なんだか素敵な企画だなぁと思ったのがはじまりです。

necoen.さんという宮城のアート作家さんの絵と、7名の書き手さんのお話で編むコラボ作品とのこと。もりとハントと、書き手一人に一つずつの動植物のテーマが与えられると言います。

抽選だし、当たったら考えようと思い、とりあえず申し込むことに。これまで私は五行歌しか書いてこなかったので、もし当選(?)してしまったら、お話を書くという未知の体験がはじまるのです。ドキドキしていました。

そして6月下旬ごろ、当選のお知らせが。
そのメールに添付されていたのが、オオカミの絵でした。
それから数ヶ月、このオオカミとの暮らしが始まります。
いずれにしても、歌物語的に、文章と五行歌で仕上げるというざっくりしとした構想だけはありました。ほかの作家さんも発表されて、すでにTwitter上やイベントなどで知っている作家さんもいて、ああ一緒にできると喜んだり、こういう出会い方もあるんだなとうれしい気持ちでした。

はじめてお話を書く

私の場合、五行歌を書くときの主語はいつも「私」であって、私以外になることが殆どありません。ゼロではないのですが、主語が別人になると歌を仕上げるのが難しいと感じています。

「おまえらデキてんの?
昨日も一緒に寝てたじゃん」
授業中の隣同士の居眠りを
思春期(やつら)は
羨む

息子が中学生のころ、夕飯時に聞いた学校でのあれこれ話の中のおもしろエピソードを書いたものですが、これは比較的、主語の私が消えているもの。

読み手は、羨ましがられているのは作者と読みそうになるので、たぶん一瞬の解釈の迷いが生じるのではないでしょうか。作者の水源純に、当時中学生の息子がいるという情報まで入っていれば、解釈に迷いはなくなりますが、歌一首にそこまでの情報は盛り込めません。かといってイチイチ説明をつけるわけにもいかない。

なので歌人は、ある程度投げる気持ちで歌を書くのかなと思います。そして投げすぎると「わからない歌」と言われます。私はこれ、常習犯です。

話がそれましたが、そんなわけで、主語の遷移のしかたというか、別のものを一つ、自分の中に入れるみたいなことが、ちょっと不慣れだなと自分でも思っています。それでもオオカミが「イチ」という名を持ってからは、その世界観ができるまであっという間でした。

アンソロジー「ななつの森からとどいた小箱」

完成した本を手にして、ほかの六人の作家さんのお話を読んで、身の縮む思いがないわけではありません。でもお話を書くまでの時間、本が出来上がってとどいたときの感動、この本の温かさにふれて、いい経験を得たなという思いがつよいです。

六人の作家さんたちのお話、とてもいいです。
伊藤裕美さんの行って見たいようなちょっと怖いような銀の森。
ナカノヒトリさんのオカピのいる森は、きっと読んだ人のある日の教室とうっすら重なるふしぎな森。
かくらこうさんのお話は、読み進むほどに転回していって、目くらましに遭ったような心地がおもしろくて。
古賀千冬さんのその文体に伴ってぐんぐん導かれてしまう森も魅力的で、こういう文章を読むと、ああ文章ってすごいなぁって思う。
やないふじさんのカワウソのお話は、私の童心をくすぐってきて、お話の中に入りたくてたまらなかった。
ななさんの詩情あふれる文体で描かれる森は、私の記憶にあらたな森を植え付けるし。

手製本ならでは温かさ、もし手にされたら、綴じ糸や紙の手触りまで存分にたのしんでくださいね。ブクハンさんのサイトに使った紙の名前もあります。紙の色の名前がかわいい。

ブクハンのイベントは明日12月3日まで。
その後オンラインストアで発売されるかと思います。私の歌集や、栢瑚も一緒に置いていただいてます。よろしければのぞいてください。

ブックハンターセンダイ オンラインストア↓

最後までお読みいただきありがとうございました。

もしお気が向かれましたらサポートをよろしくお願いいたします。栢瑚五行歌部(仮)の活動資金としてたいせつに使わせていただきます。