Plot Scraps『INVOKE』を聴いた。

2020年5月20日にリリースされたPlot Scraps『INVOKE』を聴いた。あまりにも衝撃が大きくて一人では抱えきれなかった。通常運転の私なら、Twitterで「最高」とか「ライブが楽しみ~」といった語彙力の低い感想をタラタラと垂れ流しているだけだけど、今作に関しては140文字じゃ到底足りなかったので、超個人的な感想と曲に対する勝手な解釈をnoteにしたためる事にした。

『疾走感のある3ピースバンド』『澄んだボーカルの声』『キレのあるメロディ』『心に寄り添うような優しい歌詞』。この中に一つでも心惹かれる単語があれば、ぜひ彼らの『INVOKE』というミニアルバムをを聴いてほしい。いや、むしろPlot Scrapsの曲を聴いて。お願いですから。

※普段長文を書く機会が、せいぜい取引先へメールを送る時ぐらいの為拙い文章極まりないのですが、生ぬるい目で温かく見守って&最後までお付き合いいただけると幸いです。

その前に軽く、Plot Scrapsについて紹介させて頂く。Plot Scrapsは、陶山良太さん(Vocal / Guitar)、亀山敦史さん(Bass / Chorus)、もぐさん(Drum/Chorus) の3人で構成されている、3 ピースロックバンドで東京を主な活動拠点としている。ギターボーカルの陶山さんが作詞作曲をされているのだが、この歌詞と音の作り込みが何とも心地が良い。これまでリリースされた曲は比較的疾走感のあるポップなメロディーが多いものの、生きづらさや弱さを抱えた心に寄り添ってくれるような、どこかビターな雰囲気が特徴だ(と、私は思っている)。少し吹いたら崩れそうな、この歌詞とメロディーの絶妙なバランスが個人的にはとても好きだ。

以下、公式サイトからの抜粋からも分かる通り、初の全国流通盤ミニアルバムは約2年前の2018年リリース。そこから1年に約1枚のペースでミニアルバムをリリースしており、本作は3枚目のミニアルバムとなる。

2018 年 6 月に 1st ミニアルバム『Vital Signs』をリリー スし全国的な活動をスタートさせる。2019年4月には2nd ミニアルバム『FLAWLESS YOUTH』をリリー スし、バンド初となる全国ツアー「FLAWLESS YOUTH TOUR 2019」を行った。ロックに囚われず様々 な音楽から吸収した感覚をポップに昇華させ、既存のフォーマットに囚われない音楽性が特徴

ちなみにこの3作品全て、各種サブスクリプションで聴くことができるので、サブスク登録済の方は是非に。You Tubeでは『INVOKE』のトレイラーも公開されている。

今回は、このミニアルバムの中から『一等星』とリード曲の『Teardrop』の2曲について、思いつく限りのありったけの愛を吐き出してみようと思う。

①一等星

この曲は、発売日の2週間ほど前に先行配信された。アルバムの発売がアナウンスされてから発売日を大変心待ちにしていた私は、先行配信日の0:00ピッタリに配信サイトにアクセスしたのだが、『INVOKE』の期待値を爆上げするには十分過ぎるパンチをキメてきた。それも思いもよらぬ威力で。

私の音楽的な知識は、中学校で歌った『少年時代』あたりで時が止まっているので専門的な事が全くわからず、なんと説明したら良いのか分からないのがもどかしいが、初っ端イントロキダーの「ジャーン ジャーン ジャーン ジャーン」でとにかく見事なストレートが入った。ツボを的確に突いてくるギターコードは開始1秒で頭にタライが落ちてきたような衝撃だったし、力強いドラム音のせいで全身に鳥肌がブワワッと広がった。その時私は、携帯のスピーカーでこの曲を再生していたのだが、より良い音質で聴くべきだという事を瞬時に察知し、一旦止めてイヤホンに切り替えさらには一呼吸置いて天を仰いだ事を今でもしっかりと覚えている。なんなら聴き終える事に勿体なさすら感じた。一等星というタイトルさながら、今にでも空へと広がるようなイントロになっているので、まさにアルバム1曲めにふさわしい。この曲を1発目に持ってきてくるだなんて、ずるすぎる。というか、イントロから入るドラム裏拍じゃん、もう好き。

このイントロだけでも軽くご飯3杯イケそうなのだが、この1番Bメロの歌詞や、

画面の向こうから 華やかな声に
言われた気がした「何処へたどり付きたい?」最初の一歩はxかyかzか

2番Bメロの歌詞

画面の向こうから 綺麗な瞳に
言われた気がした「出来が違うんじゃない?」だけど教わったよ
顔も 性格も 生まれも 関係ない

を聴いた瞬間、このバンドに10代で出会える人たちが羨ましくなった。
私は学生の頃、とにかく周りと自分を比べてばかりだった。○○ちゃんは絵がうまい、△△ちゃんは痩せてて可愛い、××ちゃんは頭が良くて勉強ができる、なのに私はってずっと思っていた。多分大多数の人がそうだろうけど、心の中でいつも「なのに私は」って言ってた。

目映い 一等星になりたい 君が迷子でも 導けるように
誰かが 歌ってた様に ずっと願いは そんだけ

社会人になった今は、多少「他所は他所、ウチはウチ」根性が身についてきたが、当時のような思春期真っ只中にこの歌詞に出会っていたらどれだけ救われていたんだろうか。あえて”そんだけ”と崩している表現も、言葉が寄り添ってくれている感じがする。なんか、口下手でうまいこと慰める言葉が出てこないけれど、代わりにずっとそばに居てくれる少女漫画の幼馴染ポジション的な安心感がある。あと、XかYかって染色体の話だよねきっと。

曲調としては全体的にテンポ早めで疾走感のある構成になっていて、低音達が自分の存在感をこれでもかとばかりにゴリゴリ押してくる。サビに至ってはコーラスも加わり、Cメロ後にまた冒頭の「ジャーン ジャーン ジャーン ジャーン」。いやいや、この組み合わせは流石にやりすぎでしょ。死んだら木魚ではなくベーススラップに合わせてお経を唱えてほしいと遺書に書き残したい位にベース音に生かされている私にとって、ここまで誂えられれば、か細い声でひたすら「もうやめて…」と唱えるしか出来ない。蛇に睨まれた蛙ならぬ、一等星を聴いた私の状態だ。ちょっと言っている意味が分からないですね。それくらい最高の曲なんです。

この曲に限らず、このPlot Scrapsの曲は全体的に低音がゴリッゴリに効いている。そもそも私がPlotに心奪われたのも、初めてライブで聴いた曲(※水銀灯ウォッチャーという曲で、こちらについてもいつかnoteを書きたい)の亀山さんのベースに心奪われてしまったからだった。そして、ギターは基本的にピロピロしているので(陶山さんがよくライブやTwitterでピロピロギターと呼んでいた)、重めゴリゴリのドラム&ベースとバランスがいいな、といつも思う。イヤホンで聴くと脳汁がドバドバ溢れてきちゃう~。

ちなみに、この曲のラストの終わりの方はどことなくMercury Lamps版の水銀灯ウォッチャー(※残念ながら今は廃盤しているらしい)とか、FLAWLESS YOUTH等、他の曲と似ている。私は勝手にこの終わり方をPlot節が効いているとほざくのだが、このPlot節のおかげで”Plot Scrapsのアルバムがこの曲から始まるんだ”と、とてもワクワクしてしまった。

本当に、本当に、一等星という曲をこの世に生み出してくれてありがとうございます。どれだけ感謝しても感謝したりない。

②Teardrop

まず、公式からリリースされているMVで曲を聴いてほしい。一等星に続いて耳障りがとても良く爽やかで疾走感のある曲だが、歌詞をよくみるとこちらは失恋ソングになっている。

二つの雨傘 偶然 ぶつかって 間違いあった あの 恋
運命じゃなくって すれ違い様 近づきすぎた だけだ

すれ違いが元で彼氏と別れた彼女視点で書かれた『Teardrop』だが、別れを悲しむ悲しいものではなく、どちらかというと前向きな歌詞になっている。別に恋人同士だけでなく友達に対しても、人と関わる時は少なからず相手に何かしらを求めてしまうのかもしれない。この2人も相手に求めすぎた結果、それが徐々にとすれ違いとなり最終的に別れるという運命を辿ってしまった。

繋いだ この両の手が 離した あの人の手が
たとえ嵐の中でも 見える 虹になる

でもそれは消したい過去ではなくて、自分自身を構成する経験の一つとして大切に抱えて生きていく。初めは少し痛む傷でも、大切に心のなかに留めておく。そうする事で、ずっとずっと辛い事や悲しいことがあっても立ち直るための道標になる…何とも清々しい彼女の想いを私はこの歌詞に感じてしまった。そしてその前向きな想いは、Teardropの爽やかなメロディーにぴったりだ、というのが第一印象だった。

そんな中、私が衝撃を受けた歌詞がラスサビのこちらである。

私の物語に 貴方がくれた雨粒よ
一生 隣で滲んでて どうか乾かないでね

悲しい思い出は無理に美化する必要も忘れ去る必要も無い。ただ自分の中にポツンと置いておくだけで、それはきっと自身の強さにもなるという彼女の意思だと解釈してしまったのだが、注目してほしいのはこの表現力。何なんだ、バケモノか?思い出を雨粒に例えるセンスは、何を食べて生まれるんですか?「一生”隣で”滲んていて」大好きだった貴方と過ごす事を夢見ていた未来が、今は悲しい思い出として心に染み付いているけど、大切な日々であった事を「滲んでて」「どうか乾かないでね」と表現してしまうだなんて………思わず頭を抱えてしまう。というか、どんな生活を送っていたらこんな表現ができるのか教えてほしい。あまりにも綺麗な歌詞過ぎて、この文章書いている今でも椅子から転げ落ちそう。あと、ラスサビだけ若干の転調?が入っているので、これまでとは違う、新たな決意も感じられるような気がして……もう………そんな事ってある…?ここまで細かく作り込んでいるなんて、完膚なきまでに、そりゃもう見事にやられましたよ。拙者歌詞のオタク侍と申すが、ここまででメッタメタに打ちのめされ、既に瀕死まであと一歩という所でござる……しかし、忘れることなかれこのミニアルバムにはあと4曲も控えているという事を…………なんて恐ろしいバンドなんだ、Plot Scraps。

もちろん今回愛を語った2曲以外の4曲も、雰囲気がガラリと変わった少し大人な雰囲気の『OZ』や、前回のFLAWLESS YOUTHツアーで初お披露目された際に大号泣してしまった『pinky』、2拍子リズムがめちゃくちゃかっこいい『CHOCOLATE PUNK』、サビ後のエモーショナルなメロディーラインと、邦ロック好きが遺伝子レベルで体に刻み込まれている4つ打ちが特徴的な『オーダーメイド』等、早くライブで聴きたい曲がたくさん詰まっている。このコロナ禍で残念ながらツアーライブは延期になってしまったが、この騒ぎが落ち着いた頃、きっとステージ上で掻き立てられであろうPlot Scrapsの音楽を、今から心待ちにしている。

この記事が参加している募集

#私のイチオシ

50,893件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?