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『みんなが手話で話した島』読書感想。

ノーラ・エレン・グロースのフィールドワーク。
近しい親類で移住したため、聾者の割合が他の地域と比べて群を抜いて多かったマーサズ・ヴィンヤード島が舞台。
一般的に差別されやすい聾者たちが健聴者と何一つ変わることなく生きていた夢のような島が作られた背景が読み解かれている。
結論からいうと、聾者の割合が異常に多かったため、彼らとコミュニケーションする方法が必要であり、聾者だけでなく健聴者も島独自の手話を使いこなすことができるようになっていったということらしい。
幾世代かを経て、赤子が言語を覚えるように手話が生活に浸透していったというのがこのユートピアの築かれた背景となる。

“あの人たちにハンディキャップはなかった“

島人が聾者に対して聞かれたとき放ったこの言葉からも健聴者と聾者の差別化がなされていなかったことがわかる。
突き詰めて考えると、マイノリティの境界線があやふやになったことによりマジョリティに溶け入り融和した奇跡のようなコミュニティだったということだろうか。

繋がれない人と繋がるためのヒントが欲しくてこの本を手に取ったけれど、意外と目新しいことはなかった。

偶然が引き起こした環境により生まれたこのユートピアを生み出すために必要なのは世界規模の洗脳なのかもしれないな。。
なんてディストピアのようなことを考えてみたり。

“ハンディキャップという概念は気まぐれな社会カテゴリーなのだ“
という筆者の言葉が印象的。
隣人をカテゴライズすることで差別は生まれた。
カテゴライズを意識的に消すことにより、いつか差別はなくなるのかもしれない。
私が生きてる間には無理かもしれないけれど、いつかきっと、子供達の生きる未来にはその片鱗くらいは感じられるような世の中になっていれば良いな。

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