マガジンのカバー画像

149
運営しているクリエイター

#詩

【詩】狂い羽化

【詩】狂い羽化

デザートカップで育てた蝿は 
蛹のときの3倍は大きく
どうやって身体を折りたたんでいたのだろうと
えらく不思議に思ったのをよく覚えている

狂い羽化したギンヤンマに食べさせるため
羽化させた蝿は結局のところ
骨折り損のくたびれもうけに終わった

真冬に羽化したギンヤンマは
室内でしか生きられない
生まれてすぐさま羽を負傷し
その羽は再び返ってくるような
シロモノではなかったから

飛べない彼、もし

もっとみる
【詩】虫歯

【詩】虫歯

虫歯を削るとそこから夢が出てきた

譲れない思いはない

変えられない未来も

望んだ結末もそこにはなかった

それなのに

哀しくて

寂しくて

腹膜の下、空洞が吹き荒んで音を立てる

夜しんしんと積もる雪は

窓越しにしか見ることはできない

直に受けていたら

痛くて寒くて死んでしまうから

鉄格子越しに見る

クジャクやインコと同じ理屈だ

そう

要するに勇気がないのだ

だから私は夢

もっとみる
【詩】Utopia

【詩】Utopia

クタクタシャツの夜明け

濡れた頬して高らかに笑え

どんでん返しの始まりだ、いざ

正義の明けの鐘は鳴らなかった

それでも未来は開かれる

大地の力を吸い上げて

歌え踊れ子供達

未だ見ぬUtopiaに向かって

【詩】try

【詩】try

コンプレックスに乗じて未来を変えようとする馬鹿者がいた

その名はtry

試すもの試されるもの試されて捨てられるもの

意志は予約され更新されるもの

義務教育、進学、就職がこれに然り

予約キャンセルも可能

あなたが本当の意志を見つけたなら何よりです

tryはdry

渇いた大地に導かれしもの

海に見捨てられ大地に育てられ

優しさに満たされながら

優しさに飢えているもの

逞しく誇り

もっとみる
【詩】夕焼け

【詩】夕焼け

夕焼けは嘘をつく

何万回も嘘をつく

明日があるさと嘘をつく

今日を必死に生きれない者には

一生来ない明日という日なのに

また期待してしまう

明日があるさと

前向きになってしまう

惰性で生きた1日を

何か素晴らしいことを成し遂げたように

勘違いしてしまう

夕焼けは嘘をつく

今日報われなかった人のため

泣いて帰ったあの子のため

そして諦めが日常化した私のために

【詩】私とあなた

【詩】私とあなた

やさしさと申し訳なさはよく似た親友で

やるせなさとやり切れなさは兄弟です

瓜二つなのに軽蔑し合う

私とあなたのようなものです

【詩】宙ぶらりん

【詩】宙ぶらりん

昨日という日が閉じたのに

今日という日が開かない

そんなときは

そんなときには

あなたを思う

甘い雨のにおい

土で汚れたつま先に

少しカサついた

少年の手のひら

行かないで

と言ったら嘘になる

行っておしまい

と言っても嘘になる

宙ぶらりん

私の心よ

いつも

揺らぎ

震え

まだ

未だ

解を求めて旅を続ける

【詩】目暗よう

【詩】目暗よう

息を潜め

夕暮れの中

沈みゆく

太もも

しずる痛み

密やかに滑り

床汚す

昼下がりの

胸元

寒さにかまけ

漆黒に飲まれ

目くらようの

うわ言

偏屈な

痛みに負け

寂しげに陰る

ストロボ

引きずり右足

神頼み

船底に沈む

宝より薄い

望みにかけ

またいつかの

目暗よう

何も見えず

どこにも行けず

真っ暗よ

目暗よう

めくらよう

【詩】ささやかな祈り

【詩】ささやかな祈り

物理的に震える胸が

ただただ心地よく

ゆりかごの中のごとく

落ちてゆきます

潮風と波音が迎えにきたpm:5:00

不能な女神の微笑む口元だけが空に残り

次第に帳が下りてゆきます

“おやすみ“と鳴くかもめに向けて

両目のウインク

“明日は日がな蟹を捕まえることとなるでしょう“

瞼の裏側に映される星座占いは精確です

“今日も楽しかったね“

“日が昇るまでさようなら“

明日も良

もっとみる
【詩】cube

【詩】cube

折り合いが付かない

心と身体

他人の目 

自分の目

開いた正方形

内側にいる私と

外側のあの人

同じものを見ることはこの先ない

わかっているのに

それでも

あの人と一つになりたくて

重なる言葉を探してしまう

【詩】よるべなく生きる

【詩】よるべなく生きる

よるべなく生きる

魂の旋律

歯形の指環

恨めしい休日

会いたいのに

会いたくないは

恋してる

サインです

当然のごとく

歪んだ思想と

壊れた慕情は

はとこというより

双子です

鳩をたくさん飼っている

幼稚園に通っていた

あの子の名前は

四郎です

書きかけの日記

目を閉じて

浮かんだことのみが

真実です

手のひらを

透かしみえる

血液のみが

今なのです

【詩】steam engine

【詩】steam engine

パタン コトン カラン ピタン

折り畳まれた肉塊から

明るい汽笛が鳴り響く

立ち昇る煙

熱をおびた蒸気機関の

たぎる血潮に目がくらむ

虐げられた魂の

テラテラ サワサワ

やましい視線に怯むことなく

生きゆくことを

満喫する彼の魂に

祝福あれ

【詩】わたしのカラダ

【詩】わたしのカラダ

本日

わたしのカラダは

キャベツとにんじんで

できています

節約節制

息子の成長が第一ですから

昔はいわしとプチトマト

さくらんぼだったときもあります

その前は甘いミルク

マリームだったような気もします

おさとうとマリーム、お湯でつくった

飲み物が大好きでしたから

これからの私のカラダは

再びいわしとトマトで

つくられるようになると思います

年を取るとカルシウムが

もっとみる
【詩】空色ネイル

【詩】空色ネイル

満たされたくて

注ぎ込んだ

空色のネイルは

荒野には溶け入らず

美しい湖を作っただけだった

欲張りな太陽を

足し引きして

具合を探ってみるけれど

黄ばんだ日差しが

砂漠の陰影を濃くしただけだった

試しに混ぜてみた空と太陽

出来上がりはゴッホのマーブル

そりゃそうだろうと

鼻で笑った

あなたが憎らしく

ムキになって混ぜ続け

出来上がったグリーン

得意げに頬に塗りつけ

もっとみる