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#私の作品紹介

【詩】青の残像

【詩】青の残像

闇へ溶けるような甘い戦法に敗戦した

飲み忘れた漢方を思い出したときみたいに

喉がひりつき空気が苦い

諦めと快感でふやけた身体が波打って

まるで水中花

どこにもいけない魂が悲鳴をあげる

軒下に咲く勿忘草のような

冷たいブルーの涙をこぼし

ネオンテトラは泳ぎ去った

それ以来私の身体からは

何も生まれない

青い残像だけが

今も網膜に張り付いている

【詩】がらんどう

【詩】がらんどう

がらんどうに意思はなく

がらんどうはただ見ている

遠いあの日の生傷や

近いあの日の言葉の暴力

痛みは深みに吸い込まれ

暗いコールタールの池となる

ごく稀に

無差別殺人犯のお日様が

ナイフ片手に飛び込んでくる日にだけ

暗い内臓が煌めいて

頬がひととき虹色に染まる

この刹那のためだけに

人は毎日命を繋ぐ

【詩】空っぽ

【詩】空っぽ

空箱の角が痛む

現実に触れ合っている端のところから

酸化してふやけていく

思い出は変形して見る影もなく

カスタマイズと言えば

聞こえが良いけれど

魔改造と言ったら

気をてらっていて

リユースのように

優しくはない

自由自在に変幻する

砂粒で作られた祭壇には

空っぽな私が似つかわしい