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AIのべりすとで書いた小説「少女のカセットテープ」

そのレコード屋は閑静な住宅街の一角にある。
店主はカウンターの中でコーヒーを飲みながら、一枚のコピー用紙に目を通していた。
「買取リスト」と書かれたコピー用紙にはアーティストとその作品の名前が、だれでも知っているものからマニアックなものまで並んでおり、そしてカウンターの裏には、その作品のレコードが一つも欠けることなく段ボールに入って置かれている。
懇意にしていた常連から持ち込まれた大量の買い取り品をまとめたリストで、店主はそれを脳内の査定リストと照らし合わせながら読み込んでいた。
まだ開店して数十分、午前中の静かな空気の中でコーヒーを飲みながらこういった雑務をこなすのが店主の日課である。
しかし今日に限っては、その日課をこなし切る前に客が一人入ってきた。
「いらっしゃいませ」店主が顔を上げて声をかけると、入店してきたのは長い黒髪の少女だった。歳はまだ高校生くらいだろうか。
少女は店内を軽く見回すと、すぐに店主の方へ歩み寄ってきて言った。
「あの…………ここって、音楽関係のものをなんでも買い取ってくれるんですか?」
そう聞かれた店主は一瞬目を丸くすると、「えっ?あぁはい」と少し困惑気味に応えた。
この辺りには音楽に関連するショップが少ないのもあって、レコード屋とはいえ音楽雑誌や楽器などを買い取ることも珍しくない。
「で、どんなものですか。お持ちなのは」
店主がそういうと、少女は小さなポーチの中から白いハンカチに包まれたものを取り出してカウンターに置いた。
そして中身を見てほしいと言い、店主はその包まれていたものが何なのかを知るために広げていった。
中にあったものは、カセットテープだ。
しかもかなり古い型式のもので、表面には年号が書かれていた。
「これはなんのテープでしょうかね」
「多分ですけど、カセットウォークマン用の録音用だと思います」
「中には何の音が?」「それは分かりません」
少女は首を横に振った。
「いつごろのものかも分からないし、メモ書きなんかも何も入ってないみたいだから」
「ふーむ…………一応聞くだけは聞いてみますよ」
店主はカセットデッキを用意し、さっき取り出したカセットテープを入れた。そして再生ボタンを押すと、かすかに何かの音楽らしき音が流れてきた。
「ほう…………なんか、ロックっぽいですね」
その曲はリズムを重視したような感じであり、ドラムやギターなどの楽器が耳に飛び込んでくる。
「でもこれ、結構昔のものじゃないですか」
店主がそのことについて尋ねると、少女はまた小さく首を縦に振った。
「多分90年代くらいじゃないかしら」
「90年代というと、そんな昔でもない気がしますねぇ。まぁいいでしょう。じゃあこれを買い取らせていただきましょうかね」
「お願いします」
「ところであなた、お名前は?」「私は真由といいます。佐藤真由」
「あぁそういえば、佐藤さんの娘さんの――」
店主の口から出た名前に反応して、真由と名乗った少女は驚いたように目を見開いた。
「どうして知ってるんですか?」
「うちのお得意様にそういう方がいましてね、その人から色々聞いていたんですよ」
店主の言葉を聞いて、真由の顔色が急に暗くなっていく。
「それって私のお父さんのことですよね。私の父が亡くなったことを知っているってことは、そうなんですね」
真由の父親は交通事故で亡くなったのだが、それを娘に話すのは辛すぎるだろう。そう考えた店主は別の話に切り替えた。
「ところで佐藤さんは音楽活動とかに興味はなかったんですか? ほら、ミュージシャンを目指していましたよね」
「いえ、もう音楽はやめたんです」
「そうですか…………すみません変なことをお聞きしてしまいました。ではこちらで査定いたします。もしよろしかったら店の奥でゆっくりしていてください。なにかご希望の曲があればリクエストしても構いませんので」
「はい」
そういうと、真由は店の奥へと消えていく。店主はその後ろ姿を見ながら、今度こそ査定リストに目を通し始めた。

その頃、店の奥にある部屋で、真由はカセットテープの入った段ボール箱をじっと見つめていた。「父さんの残した曲、ここに来る前から聴いてきたけれど、やっぱり良い曲ばかりだよ…………」
父の名前は佐藤真一。作曲家を志していた彼は、生前は多くの人に楽曲を提供していた。
そして彼の娘である真由は、父親の作った曲を今でも聴き続けているのだ。
「…………あ、そうだ」
あることを思いついたのか、真由は自分のポーチの中からカセットテープを取り出した。
「これを聴いてみようかな…………」
彼女が取り出したテープは、佐藤真一が作曲した曲をまとめたものであった。
彼女がいつものようにカセットウォークマンの電源を入れる。

真由の瞼の裏にはある光景が思い出されていた。
「あの、真由ちゃん。ちょっといいかしら」
彼女の母の声である。彼女はドアの方へ歩いていき、開けるとそこには買い物袋を持った母の姿が。
「あっ、お母さん」
「どう? 気に入った曲はあった?」
「うん! これなんか凄く良かったよ!」
彼女にはお気に入りのアーティストがいるのだが、その人は活動していないし、それに人気もありすぎて入手が困難なため、こうして佐藤真由がカセットテープにして集めているのだった。
「そう、よかったわね。それじゃあ次は…………」

そこまで思い出したところで、店主の男性がやってきて話しかけてきた。
「失礼します。査定が終わりましたんで、お持ちしました」
「わかりました」
「それでですね…………このカセットテープなんですが、申し訳ないんですけど買い取れません」「えっ?」
店主の切り出した内容に真由が驚いた顔を見せる。
「いや、どうしても買い取って欲しいというなら止めませんが……これはあなたが持っていた方が良いと思いますよ」「どうしてですか」
「そりゃあ、こういうものは持っておくべきだからです。どんなものにも価値があるんです。ましてやあなたのお父さんが作った曲ともなれば、なおさらですよ」
店主ははじめから分かっていたのだ。このカセットに入っている曲が真由の父親の作った曲だと。
「でも、これを聴いた人もいないのに?」
「今はそうかもしれません。でも、いつかきっと聴く人が現れるはずです。その時のためにあなたが持っていた方がいいんじゃありませんか?」
「そうですか…………分かりました。そうします」
そういうと真由はカセットテープを持って立ち上がった。
「ありがとうございました。また来ます」
「はい、お待ちしております」
そういうと彼女は店を出て行った。

数日後、店主の元に届いた物は段ボール箱であった。箱を開けると中に入っていたのは一枚の写真。そこに写っているのは、一人の少女と背の高い男性。
彼女はギターケースを背負っていた。そこには、真由とその父親の真一の在りし日の姿が写し出されていた。
その写真を裏返しにする。するとそこにはメモ用紙に文字が書かれていた。
『私の宝物です』その言葉を見た店主は微笑むと、写真立てに入れて自分のデスクに置いた。



あとがき

この小説はAIを使って小説を執筆するというサービス「AIのべりすと」を使って書いたものだ。

最初の300文字程度を適当に書いた以外は全体の2~3割くらいは人間が入力して補助したり矛盾した部分を修正したりしているが、だいたいはボタンを押すだけでAIが執筆した文章になっている。

AIのべりすとの存在を知ったのはダ・ヴィンチ・恐山氏の生配信である。

この配信内では「AIと一緒にサザエさんの二次創作を書く」というテーマで、まあ見ればわかるのだが結構ムチャクチャな展開をしている。

ネット上でもまともな小説を書くというよりは、AIによる文脈の欠けた脱線具合を楽しむのがメインのようだ。

実際この文章もこの形に落ち着くまでに、真由がお金欲しさに古ぼけたカセットテープを買い取ってもらいに来たセコい人になったり、真由が店内で店主を人質にとった男と格闘したり、ディスクユニオン下北沢店が店を乗っ取りに来たりと、いろいろ脱線している。まあ、そんなトンチキ展開に急に変わるのも面白いのだけれど、まともっぽい小説って書けないのだろうか、と試して書きあがったのがこの作品である。

まあ、あくまでまとも「っぽい」だけで、なんとなく意味ありげで実は何の意味もない部分も結構あるが、それなりに立派な文章にはなっているのではないだろうか。

しかし日常の一コマからバトルものラノベになったり、レコード屋、買取、カセットテープといった語彙からAIが「ディスクユニオン下北沢店」を導きだしたりしているのはやはり驚異的で、中でも驚いたのは「真由がかつてミュージシャンを目指していた」という部分から、最後にギターケースを持った真由の写真が送られてくるという展開をAIが勝手に書いたという所だ。このように丸ごと一本小説を書くとまでは行かなくとも、すでにある文章から新たな展開を生み出すヒントを得るには十分実用範囲内のように思う。

今回はフリー会員で使える機能の範囲内で執筆したが、課金するとAIがより多くの文章を認識するなど、さらに高機能になっていくようだ。現在、新AI開発のためのクラウドファンディングなども行っているようなので、興味のある方は是非サービスを試してみて、よければこういった支援も検討してほしいと思う。

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