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短編小説

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4000字前後の短編。練習中。
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#小説

【短編小説】うんめいのひと

 ごしゅじんさまは今日もかえってきません。まい日のおそうじとおせんたく、おりょうりはつか…

三山 重
3か月前
4

【短編小説】 隠して

 隣の席の藤森菜々子さんはマスクを外さない。学生証の集団撮影の日はお休みで別日に撮影だっ…

三山 重
9か月前
3

【短編小説】アイソレーション

「僕、人を殺してしまいました」  土の匂いが夜風に舞い上がる。土に汚れてその美しさは隠れ…

三山 重
10か月前
5

【短編小説】インパチェンス

 腕が重くなって手を止めた。気がつけば咲ちゃんの声ももう聞こえない。私を好きならその声を…

三山 重
10か月前
5

【短編小説】私のオトモダチ

 気がつけばみいこはひとりぼっちだった。  幼稚園の頃から結月とは親友で何をするにもどこ…

三山 重
10か月前
6

【短編小説】保護

 連絡もなく佐知香が我が家にやってくるのは、今に始まったことではない。いつも決まって身体…

三山 重
1年前
3

【短編小説】 口実

 アルコールと揚げ物の匂いが充満した空間に誰かが連れてきた煙草の残り香が入り混じっている。意図して浅くした呼吸のせいで身体が重くなった。時計を見れば間もなく十時半前。遠くで同期の坂下が上田部長たちと二次会の計画を立てているのを聞く。左隣に座る中田さんの香水に食欲を奪われ、私の分と皿に盛られたもののすっかり冷めてしまった牛のモツ煮にうっすらと白い膜が張り始めていた。 「百瀬は二次会どうする?」  ビールのジョッキを構えながら、華村先輩が私の右隣に座った。半分も入っていない黄