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短編小説

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4000字前後の短編。練習中。
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記事一覧

【短編小説】渦

 鈍い音がして顔を上げると、店の奥のカウンター席から誰かが転がり落ちたようだった。ほどよ…

三山 重
3週間前
2

【短編小説】staRtice

 電車の遅延で到着が大幅に遅れてしまった。劇場に辿りついた時には公演の十分前だったという…

三山 重
4週間前
2

【短編小説】お揃いの

 ゆらゆらと立ち上るほんのりツンとした甘い香りが、熱を帯びたまま鼻腔をくすぐる。手を合わ…

三山 重
1か月前
3

【短編小説】うんめいのひと

 ごしゅじんさまは今日もかえってきません。まい日のおそうじとおせんたく、おりょうりはつか…

三山 重
2か月前
4

【短編小説】 隠して

 隣の席の藤森菜々子さんはマスクを外さない。学生証の集団撮影の日はお休みで別日に撮影だっ…

三山 重
8か月前
3

【短編小説】アイソレーション

「僕、人を殺してしまいました」  土の匂いが夜風に舞い上がる。土に汚れてその美しさは隠れ…

三山 重
9か月前
5

【短編小説】インパチェンス

 腕が重くなって手を止めた。気がつけば咲ちゃんの声ももう聞こえない。私を好きならその声を止めないでよ。聞こえるのは私の荒い息と複数の人間が話す声が重なりあった雑音が遠く聞こえるだけ。先ほどまであんなに静かで、彼女の愛の言葉だけが私の頭の中を巡っていたのに、そこに彼女の声はない。  中学生になって初めての夏休み。隣の家のチャイムを鳴らして咲ちゃんを呼びだした。昼過ぎだったが、眠そうな顔をして彼女は扉を開けた。その頭には寝癖がついたままだ。 「×△神社の夏祭りに行こう」  

【短編小説】私のオトモダチ

 気がつけばみいこはひとりぼっちだった。  幼稚園の頃から結月とは親友で何をするにもどこ…

三山 重
9か月前
6

【短編小説】保護

 連絡もなく佐知香が我が家にやってくるのは、今に始まったことではない。いつも決まって身体…

三山 重
11か月前
3

【短編小説】 口実

 アルコールと揚げ物の匂いが充満した空間に誰かが連れてきた煙草の残り香が入り混じっている…

三山 重
1年前
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