見出し画像

コンビニエンスロマンス

チャレンジ応援文化祭で下ろしました「コンビニエンスロマンス」の脚本です。

コンビニ

篠崎(26)

忽那(24)

奥谷(25)

♪コンビニ退店音 

篠崎「ありがとうございましたー」

篠崎裏にある事務所に入る

忽那「お疲れ様です」

篠崎「あれ珍しいね、帰らないの」

忽那「はい、ダメですか?」

篠崎「いいんだけど。いつもすれ違いだからなんか新鮮だわ」

忽那「ですね、毎日のようにあってるけど挨拶しかしないですよね」

篠崎「ね」

忽那「この時間ってホントに人いないんですね」

篠崎「いつも来る人いるんだけど、今日来てないな」

忽那「どんな人ですか?」

篠崎「奥谷さんっていう人なんだけどね」

忽那「へぇ」

篠崎「毎日来てメロンパンと水買ってくんだけど」

忽那「はい」

篠崎「毎回毎回メロンパンと水を買うって決まってるはずなのに店を2周くらいして買ってくんだよね」

忽那「え、決まってるのに?」

篠崎「うん、なんか選んでるフリしてるんだと思う」

忽那「こわ」

篠崎「そう。あといつもね誰にも言わないでって言いながらタバコ買っていく」

忽那「あ!え?へぇ。」

篠崎「誰にもいっちゃダメだよ」

忽那「言わないですけど、仲良いんですか?」

篠崎「まあレジの時にちょろっと」

忽那「深夜人来ないんだったら私も入ろうかな」

篠崎「うーんまあ深夜は深夜でしんどいよ、やることないし。ん?なにそれ、店長からのメモみたいな」

忽那「パンとかチキンとかの割引券あるじゃないですか?」

篠崎「あーうん、あのたまにレシートと一緒に出てくるやつ?」

忽那「そうそう、あれをわざとお客さんにあげずに個人的に使用してる人がバイトの中にいるらしくて」

篠崎「えぇ」

忽那「なんか防犯カメラの映像、私たちも見てよくなったらしいですよ」

篠崎「あ、ダメなんだ」

忽那「なんか下手したら詐欺罪とかの罪に引っかかるらしいです」

篠崎「ええ、そうなんだ」

忽那「ダメなんだ?ってなんですか?」

篠崎「あぁいやいや、しっかり法律的にダメなんだって思って」

忽那「最近出てるのっていろはすの割引券ですよね?個人的に使ってる人はそんなにいろはすが欲しいってことですか?」

篠崎「たしかに、え、たしかに」

忽那「なんか自分まで容疑者みたいでなんか嫌じゃないですか?」

篠崎「ほんとだね」

後ろに置いてた漫画をそっと鞄にしまう。

忽那「何してるんですか?」

篠崎「え、え、何が?」

忽那「篠崎さんって普段何してるんですか?」

篠崎「あぁまあこんな感じだよね」

忽那「いや、そうじゃなくて」

篠崎「え?」

忽那「普段は何してるんですか?」

篠崎「うーんまあこんな感じ」

忽那「え??」

篠崎「特に何にもしてないかな」

忽那「へぇー」

篠崎「おれこのコンビニめちゃくちゃ好きでさ、18からだからもう8年目とかなんだ」

忽那「え、そんな長いこと?」

篠崎「そう、正社員目指してて」

忽那「正社員って目指すものなんですか?」

篠崎「店長から声かかるの待ってるんんだけど中々」

忽那「いや、もう多分言えばなれるでしょ」

篠崎「いやでもなんか自分から言うのおこがましいじゃん」

忽那「店長はしってるんですか?篠崎さんが正社員目指してること」

篠崎「うーんどうだろうね」

忽那「ちょっと面白すぎますって」

篠崎「え、なにが?」

忽那「篠崎さん面白い」

篠崎「え、俺なんか面白いこと言った?」

忽那「面白いですよ篠崎さん」

篠崎「そうかな」

忽那「はい、コンビニのどこに魅力を感じるんですか?」

篠崎「えーーむずいな」

忽那「え、でもあるでしょ?正社員目指してるくらいコンビニ好きなんだから」

篠崎「うーん、パッと出てこないな」

忽那「いや、あるはずですよ」

篠崎「なんか恥ずかしいわ」

忽那「いや別に私笑ったりしないですよ」

篠崎「いやそういうことじゃなくて」

忽那「どういうことですか?」

篠崎「コンビニに聞こえちゃうじゃん」

忽那「え?」

篠崎「コンビニの魅力をコンビニに聞こえる所でいうの恥ずかしいって思って」

忽那「……え、もしかして今すっっごい変なこと言ってます?」

篠崎「いやまあ、そうだよなうん、でもずっと明るいところかなあ」

忽那「ずっと明るいとこ?」

篠崎「なんか人ってさ昨日まで機嫌良かった人が、今日ちょっと怒りっぽかったりとかするじゃん」

忽那「そうですね」

篠崎「コンビニは変わんないんだよね。ほらずっとこのまんま」

忽那「変わらない?」

篠崎「コンビニはずっと明るいじゃん。空は真っ暗になるけど、コンビニはずっと明るいから」

忽那「へぇ」

篠崎「かと言って別に俺だけを照らしてくれない寂しさ。これもよりコンビニを考えずにはいられなくなる魅力の一つ」

忽那「もう、恋じゃないですか」

篠崎「かもしれない」

忽那「誰にでも優しくするタイプの彼氏って沼りやすかったりしますもんね」

篠崎「あーまあそれに近いね」

忽那「コンビニでそれなってる人初めて見ました」

篠崎「えーそうか。忽那ちゃんは?彼氏いるの?」

忽那「え、なんですか急に」

篠崎「いや、急ではないでしょ。文脈に沿ってはいるでしょ」

忽那「うーん昨日別れました」

篠崎「えぇ、ああ、ごめん、なんか」

忽那「いや、全然」

篠崎「聞かない方がよかったよね」

忽那「全然大丈夫ですよ」

篠崎「え?なんでとか聞いていいの?」

忽那「聞いても大したことないですよ」

篠崎「え、聞きたい」

忽那「なんか私の彼氏めちゃくちゃ秘密主義で、インスタとか絶対に教えてくれないんですよ」

篠崎「へーー変わってるね」

忽那「変わってますか?別に私もお互いのインスタ見て精神左右されてもしょうがないって思う派なので、その方針に乗っかってたんですよ」   

篠崎「うんうん」 

忽那「そしたら最近気づいたんですけど、裏垢でずっと私のストーリー見てたんですよ」

篠崎「…うわ、え?」

忽那「その時点で怖いでしょ?」

篠崎「うん」

忽那「プロフィールの画像もなにもかも初期設定アカウントで毎回ストーリーを見にきてて」

篠崎「ええ??」

忽那「自分で作ったルールを自分だけこっそり破ってるのが許せなくて」

篠崎「それはそうだね」

忽那「それで、浮気しました」

篠崎「え??話の流れ合ってる?」

忽那「合ってますよ」

篠崎「え?何で浮気?」

忽那「浮気相手とデートしたところとかストーリーにあげまくって」

篠崎「エグいことするね」

忽那「だってムカついたから」

篠崎「え、じゃあしばらく会ってないの?」

忽那「同棲してたんですよ」   

篠崎「え、今も?」

忽那「はい」

篠崎「あーそうなんだ」

忽那「昨日まで一緒に住んでたんですけど独特の空気感なんですよ」

篠崎「どっちも言いたいこと言えないみたいな?」

忽那「向こうが私の謝り待ちみたいなスタンスとってて、冷戦です」

篠崎「うわぁまじか」

忽那「で、私がそれに耐えれなくなって今日は朝まで帰らないでおこーって思って」

篠崎「あ、だからか今日帰らないの」

忽那「あ、はい」

篠崎「そうなんだ」

忽那「なんか男として情けなくないですか?こっそり見て、こっそり見たこと謝れないって」

篠崎「まあ、たしかにな」

忽那「まあこれはきっかけに過ぎないんですよ。どっちみちこうなってました。」

篠崎「え、別れたばっかりでつらくないの?」

忽那「私には篠崎さんがいるんで」

篠崎「え?」

忽那「…あの、今日シフトあがったら泊めてくれませんか?」

篠崎「え?なんで??え、なんで??え、うち??」

忽那「はい、だからここで待ってようと思って」

篠崎「え??なんでウチ!?」

忽那「ダメですか??」

篠崎「いや、、ダメじゃないけど、え?他にいないの?」

忽那「いや、篠崎さんがよくて」

♪入店音

篠崎「うわ、え??ちょっと待ってねお客さん来たわ」

篠崎は事務所の外に出る

忽那「待ちます」

強盗が入ってくる

篠崎「……!?」

強盗は店内をウロウロする

強盗「……」

篠崎「……」

強盗は店内をウロウロする

強盗「……」

篠崎「……」

強盗「……」

篠崎「…あの」

強盗「……」

篠崎「えっと、何かお探しですか?」

強盗はゆっくりとピストルを向ける

篠崎「ですよね」

忽那は事務所で怯えて見ている

強盗「金出せよ」

篠崎「すいません!」

強盗「金出せよ」

篠崎「ちょっと待ってください」

強盗「なんだよ、さっさと出せよ」

篠崎「出せ、ないです!」

強盗「出さないとヤるぞ?」

篠崎「いや、僕今年で8年目なんですよ」

強盗「は?」

篠崎「僕正社員目指してるんですけど、ここでお金出しちゃうと、なんかあの正社員になれないじゃないですか、多分」

強盗「何をふざけたこと言ってんだよ。出せよ」

篠崎「出しません」

強盗はピストルを額につける

強盗「金出せよ!!殺すぞ!」

篠崎「死んでも良いかもな」

強盗「は??」

篠崎「いや、すいません。もし死んだら正社員以上のものを得られるかもしれないと思って」

強盗「お前マジ何言ってんだよ」

篠崎「コンビニの外に銅像建つんじゃないですか?」

強盗「建たねえよ、見たことないよ!そんなコンビニ」

篠崎「一号店ですよ」

強盗「何言ってるんだよ!お前ふざけんなマジでやるぞ」

篠崎「殺してください」

強盗「いや、金出せば殺さないでやるっていってんだよ」

篠崎「あ、じゃあ金出さないんで殺してください」

強盗「お前、気持ちわりぃよ」

篠崎「あの、電話なってますけど、出なくて大丈夫ですか??」

強盗「は??」

篠崎「いや仲間からの電話とかじゃないんですか?」

強盗が、ポケットから携帯出す

篠崎「ぴーちゃんって、誰ですか?」

忽那が事務所から出てくる

忽那「……」

篠崎「忽那ちゃん。何で出てきたの?俺さあ、時間稼いでたんだよ!!時間!」

忽那「……」

携帯を持って立ってる

強盗「は??なんでここに?」

忽那「こっちのセリフなんだけど。ちょっと篠崎さん死んじゃったら今日泊まるとこ無くなるでしょ」

忽那「強盗さんなんか用?」

忽那は強盗のマスクを外す

篠崎「…え??奥谷さんじゃんあ、だから最初なんかウロウロしてたのか。え?」

忽那「元カレ」

篠崎「え?忽那ちゃんの彼氏って奥谷さんだったの!?」

忽那「元カレ、ね?」

奥谷「いやまだ別れてないだろ」

忽那「別れたし」

奥谷「大体今日バイト終わったら女友達の家に泊まるって言ってたじゃん」

忽那「コンビニにいて何が悪いの?」

篠崎「あーよかったあ、奥谷さんだったのか、本物の強盗かと思いましたよ!」

奥谷「……」

篠崎「え?マジの強盗?なんで?」

忽那「どうせ私に不満ぶつけられないから全部の鬱憤を篠崎さんで晴そうとしたんでしょ?」

奥谷「よく分かってんじゃん、そうだよ。篠崎さんって分かったから、篠崎さんの大好きなコンビニを篠崎さん諸共ぶっ壊してやろうと思ったんだよ」

忽那「ぶっ壊れてるのはあなただよ」

篠崎「え、なんで俺で鬱憤を晴らそうとしてるんですか?」

奥谷「とぼけんなよ。忽那を奪ったくせに」

篠崎「待って人違いですよ」

忽那「篠崎さんは私の浮気相手なんですよ」

篠崎「え??」

奥谷「映画行ったり、カフェ行ったりしてるじゃねえかよ」

篠崎「いや、1人で行きますけど。え、どいうこと?」

奥谷「一緒にだよ!!」

篠崎「え、一緒に行ったことないです!ホントに!忽那ちゃん、どいうこと!?」

忽那「……私最近篠崎さんのストーカーにハマってて」

篠崎「え??」

忽那「勝手に色んなとこでツーショット撮らしてもらってました。こんなことになってすいません」

篠崎「死ぬかと思ったよ」

奥谷「は?!じゃあ嘘ってこと??」

忽那「嘘だよ?インスタずっと見てたっていつ謝ってくるかなあって思って、ずっとストーカーしてはストーリー、ストーカーしてはストーリーっ感じで」

篠崎「ストーカーってこんな簡単にされていいものなの?」

忽那「普通気づきますよ?篠崎さん鈍感すぎます」

奥谷「ちょっと待って、なんでそんな事したの!?」

忽那「自分で作ったルール自分で破ったもんね。毎日、言えずにいたもんね」

奥谷「俺は友達からインスタで違う男写ってるせど別れたの?って連絡来たから見ただけだよ」

忽那「ずっっと裏垢で見てたじゃん」

奥谷「裏垢??は??何のこと?裏垢なんか知らないよ!」

忽那「いや見てきてたじゃん」

奥谷「いや、知らないって」

忽那「とぼけないでよ。じゃあ誰が見るのよ。未設定の怪しいアカウントで」

奥谷「ホントに知らない。俺は忽那がこんな変なことするまで一切見てないよ。忽那のインスタ」

忽那「ホントに言ってんの??」

奥谷「いや、ホントだよ。ルール作ってるし、そもそも彼女のインスタ見たくないもん」

忽那「…裏垢、ちがうの?」

奥谷「ちがうって!」

篠崎「……え??裏垢違うんですか?」

奥谷「違います」

篠崎「え、ちょっと待って、裏垢でこっそり見てると思い込んで、ホントに浮気してると思い込んで俺ピストル向けられてるよ?忽那ちゃん」

忽那「すいません」

篠崎「……まあまあ、勘違いだったならいいじゃないですか?ほら全部リセット元通り」

奥谷「帰って話そ?」

忽那「やだ」

奥谷「なんで?」

篠崎「ちょっと忽那ちゃん」

忽那「デートしてたのは嘘だけど、篠崎さんのこと好きなのはホントです。ストーカーは何も篠崎さんを利用して奥谷君にダメージを与えようという意図ではなくて、誠心誠意やらせていただいてました」

奥谷「誠心誠意のストーカー」

篠崎「ぴーちゃん」

奥谷「おい、ぴーちゃんって気安く呼ぶなよ」

忽那「どっちみちもう奥谷君を好きでいることは辞めたの」

奥谷「ちょっと待ってよ、それじゃあまた振り出しじゃんか」

忽那「篠崎さん、私と付き合ってください」

奥谷「忽那、お願いだから考え直して」

篠崎「…いや待って」

忽那「篠崎さん私と付き合ってください」

篠崎「いや待ってね」

奥谷「忽那、考え直して!」

忽那「ちょっと邪魔しないでよ」

忽那「付き合ってください!」

ほぼ同時に

奥谷「考え直して」

篠崎「ちょっと待って忽那ちゃんまずそっち解決しないと始まらないから、俺一旦あっち行っとくから、ね?」

奥谷「なに、他に別れたい理由あるなら教えてよ」

忽那「もう関係ないじゃん、強盗したいならさっさと強盗して帰れば?」

篠崎「僕は全然殺されても大丈夫ですよ」

忽那「死のうとしないで、付き合おうとしてんのに」

篠崎「すいません」

奥谷「何がダメだったか教えてくれよ。納得できる理由が欲しいよ!!」

忽那「私にもわからない」

奥谷「じゃあ嫌だよ」

忽那「私、奥谷君のインスタ見ちゃった時があって」

奥谷「え?」

忽那「見たことないくらい笑ってる動画とか楽しそうな画像いっぱいあって、あぁ奥谷君が私に見せたくないものってこれだったんだって思ったの。それだけ」

奥谷「……ごめん。だけど俺はそんなつもりで見て欲しくないって言ったわけじゃなくて」

忽那「でも実際私はそう感じたから。綺麗なものだけ見せてくれてありがとう」

奥谷「ちがうよ、ちがうって」

忽那「奥谷君の人生に私いなくてもいいでしょ。」

奥谷「そんな事ないよ」

忽那「無理に私を好きで居続けなくてもいいよ。息苦しそうで見てられないから」

奥谷「お願いだから考え直してくれ」

忽那「…ごめん」

奥谷は強盗のマスクを被り咽び泣く

忽那は篠崎に近づく

篠崎「奥谷さんは、いいんですか?まだ解決してませんよね?」

奥谷「仕方ないよ。正直、ストーリー見た時俺篠崎さんの方がお似合いだって思っちゃって」

篠崎「そうなんですか?僕知らないです」

奥谷「こんなに好きなのにその事実が悔しくて、だからむちゃくちゃにしてやろうって思って」

篠崎「……いいんですか?」

奥谷は頷く

忽那はもう一度篠崎にお辞儀する

篠崎「めちゃくちゃ嬉しい。嬉しいけど、正直まだ、よく分かってなくて」

忽那「なんで、奥谷君に申し訳ないから?」

奥谷「俺のことはもう気にしないでいいですから」

篠崎「いや、そうじゃなくて。一旦一緒に泊まりたいっていうか。コンビニの外で会いたいっていうか」

奥谷「そういう目的だったらホントに嫌です俺」

篠崎「いや、その、今おきてる心のざわめきがもしかしたら恋みたいなものとは違うんじゃないかって思って。その背徳感的な」

奥谷「何、略奪愛的なことですか?そんな感じだったら俺やだよ」

篠崎「いや、違います」

忽那「別にそれでもいいよ。ガラスみたいに扱われるのはもう疲れたし」

篠崎「じゃあこれでもですか!?」

忽那「…え?」

篠崎「僕の今のこのドキドキ、背徳感的なやつは奥谷さんに対してではなくて」

忽那「え?」

篠崎「僕、中学生くらいの時から人を好きになるって感情と同じくらい、学習机とかナイフとかフォークとかそういう無機物に性的魅力を感じて」

篠崎「だからその流れで8年前にこのコンビニに」

奥谷「コンビニに恋をしたってこと??」

篠崎「まあ、そうですね」

奥谷「ミラクル・マイノリティじゃん」

篠崎「はい、無機物と有機物のバイセクシャルです」

篠崎「まあでもみんなそうだと思いますけどね。奥谷さんは忽那ちゃんのこと女性だから好きになったんですか?忽那ちゃんだから好きになったんですか?」

奥谷「……」

篠崎「忽那ちゃんだから好きになったんですよね?じゃあもし忽那ちゃんが学習机だったらその学習机のこと好きになりますよね!?」

奥谷「ならないですね」

篠崎「はい。そうですね!変なこと言ってますもんね。忽那ちゃん、この話聞いたらどう?奥谷さんの家戻りたくなったでしょ?」

忽那「…知ってたんで」

奥谷「え??」

篠崎「え??」

忽那「私篠崎さんが割引券を個人的に使ってるんじゃないかって思って、調べたんですよ。防犯カメラ、誰でも操作して良くなったじゃないですか?」

篠崎「うわぁマジか最悪だ」

忽那「コンビニにキスしてました。深めのやつ」

篠崎「ちょっと待って。そんな所除くとか変態じゃん」

奥谷「変態だ!え?その変態ぶり知った上で?なんで?」

篠崎「……たしかにこの変態ぶり知った上で??」

忽那「寂しそうだったんですよ。すごく、なんかこの好きだけど、空振りしてる感じというか。それがすごい美しかったんです。」

篠崎「……恥ずかしい」

忽那「冷たいものを好きでいることの辛さにすごい共感して」

奥谷「俺って冷たいものなの?」

忽那「無機物」

奥谷「俺無機物じゃないよ」

忽那「言ったじゃん。私の前で綺麗すぎたの。触った心地がしなかったんだよ。」

奥谷「でも俺、忽那に精一杯優しくしてたよ」

忽那「それがつらいからこうなってんじゃん
全部何もかも嘘なんでしょ。タバコだってさ、私に隠れてやってたんでしょ」

奥谷「言ったの?」

篠崎「すみません1番言っちゃいけない人に言っちゃいました」

奥谷「変態」

篠崎「変態関係ないでしょ」

忽那「ねえお願い付き合って。篠崎さんもお互い傷つけあえる関係を望んでるんじゃないの?」

篠崎はレジのタバコを取る

篠崎「やっぱりおれと忽那ちゃんは違うよ」

忽那「なんでおんなじじゃん。寂しいもの同士お互い分かり合えるよ」

篠崎「ちがうよ…確かに俺は寂しかったよ。だけど俺がどんなに寂しくてもこのコンビニはずっと変わらない。だけど忽那ちゃんの寂しさが回り回って奥谷さんを強盗にまで変えたんだよ?羨ましいわ」

忽那「だったら私とお互い傷つけ合える関係になれるじゃん!」

篠崎「そこが好きだったから。コンビニのずっと変わらない所が好きだったから。2人見てたら気づいた。寂しいの裏側に好きがあったんだってこと。勝手に変わっちゃったのは俺なんだよ」

忽那「意味わからないよ」

篠崎「奥谷さんのどこが好き?」

忽那「は?もう好きじゃないし」

篠崎「どこが好きだった??」

忽那「…優しいところ」

篠崎「じゃあ今何が苦しいの?」

忽那「……」

篠崎「奥谷さんの優しさも完璧さも最初からそこにあったんじゃない?最初はそこが好きだったんじゃないの?勝手に変わっちゃったの忽那ちゃんじゃん。奥谷さんのせいにするのはおかしいんじゃない?」

忽那「……」

篠崎「(タバコとって)タバコさ、そういえば続きがあってね、これ誰にも言わないでねって言った後にね、ほんとうは言いたいんだけどねっていうんだよ。奥谷さんだって、寂しかったんじゃない?忽那ちゃんの優しい彼氏でいなきゃいけないの寂しかったんじゃない?お互い寂しい同士ならそれは両思いってことだよ。しっかり話し合いなよ。」

奥谷「ごめん、俺、嫌われたくなかったから。たくさん隠してて、でもそれが忽那を寂しくさせてたなら、本当それはごめん」

忽那「…もういいよもういい」

篠崎「やっぱり俺はコンビニ好きでいるよ。めちゃくちゃ嬉しかったし。俺も辛かったから正直揺らいだけど。やっぱり忽那ちゃんとは付き合えないお互い愛すべきもの愛そう」

(タバコ持って出てく)

奥谷「え!?」

奥谷後を追おうとする

奥谷「待って!え?今万引きしたよね」

篠崎「大丈夫です。割引券で奢ります」

奥谷「あ、俺があげたやつ」

篠崎「これなんか普通に詐欺罪とかで捕まっちゃうらしくて、もう今後はいらないんでやめて下さい」

奥谷「ありがとう」

篠崎「奥谷さん」

奥谷「ん?」

篠崎「完璧でいることは辛くないですか?」

奥谷「まあ、でも好きだから」

篠崎「じゃあお互いもっと好きでいられるように話し合って見てください」

奥谷「篠崎さんも」

篠崎「いや、僕はコンビニとは話せないんで」

奥谷「あぁ、そっか」

篠崎「頑張って下さい」

奥谷「ありがとう」

奥谷はける

篠崎「ありがとうございましたー」

寺井さん入ってくる

篠崎「いらっしゃいませ」

寺井さんと篠崎さん雑談

寺井「そういえばさ、あの狙ってる女の子とどうなったの?」

篠崎「え?」

寺井「あの、裏垢で覗いてるって言ってた。今度ご飯誘うって言ってたじゃん」

篠崎「諦めました。やっぱりコンビニが良くて」

寺井「あ、恋愛じゃなくて仕事取ったんだ」

篠崎「…あなたに言われたくないですよ」


(完)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?