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ジョン・スコルジー『怪獣保護協会』読書感想+α

作者があとがきに書かれているとおり、この作品はポップソングのような軽快さに包まれている。「怪獣を保護する」というお仕事は中々に大変なことだらけなのだけど、会話のやり取りは常に軽妙で、どんな状況にあってもゆるく楽しい雰囲気に満ちている。そこには「怪獣」が大好きな作者の人間性や、「人を楽しませたい」というサービス精神の高さが感じられてとても良い。読んでてなんだか心地良い気分になる。だって他ならぬ私だって怪獣が好きだから。

怪獣。大怪獣。街を破壊し、好き勝手に大暴れする巨大モンスター。誰しも一度は自分の住んでる街が巨大怪獣によって破壊される妄想をするものですが(私はしたことがある)、この作品はそういった「破壊願望」よりも「生物」としての怪獣に焦点を当てており、どんな生態をしていて、いかに保護するのかという部分を楽しむ作品になっております。物語の設定はシンプルで、主人公の属するチームが地球とよく似た惑星に赴き、怪獣の保護活動を行うというもの。組織の名前は「KAIJU PRERVATION SOCIETY」略して”KPS”。自らを「オタク」と自称する怪獣好き&SFオタクが多く所属しており、みんな朗らかでなんだか楽しそう。その上で化学に精通した者や、天文学を学んできた者、生物学をよく識る者と、各分野のスペシャリストの集まりでもあり、彼らが個々の能力を活かしながら協力して怪獣に立ち向かってゆく様が「チームもの」としての面白さにも繋がっているのです。

間間に挟まれるギャグや小ネタもSF・怪獣好きの作者ならでは。例えば作中に登場する「ホンダ基地」の由来は初代『ゴジラ』の監督本多猪四郎からだし、冒頭の会話にはSF小説『スノウ・クラッシュ』のネタも入れてくる。ちょいちょい下ネタや、わかりづらいバンドギャグもあったりと、とにかく「軽い」雰囲気の作品なのでストレスなくハッピーな気分で読めること請け合いです。とはいえこの「軽さ」は2020年、全世界が新型コロナウィルスによって暗~い状態に沈んでいたことの反動でもあり、作者的には自身の落ち込んだ気持ちをケアするために書くという意味合いもあったようだ。

ところでこの小説、登場人物の性別がわかりづらく、というか意図的に書かないようにしているので、読む際はそこに注意してみるのも一興でしょう。台詞や行動等からある程度は判断できると思いますが、明確にされていないと意外とわからないものなので、叙述トリック的な楽しみ方もできるかと。というか私は終盤まで性別を勘違いしてるキャラが何人かいました。でもこれってどんな意図があって、このような書き方にしたのかな。まあ性別がなんであれ、話に直接関係する場面は無かったはずなので、あまり関係ないことではありますが。でもおそらく翻訳者さんは大変だったろうなあとは思います。

また個人的には、最近の小説にしては珍しいくらい悪役がまっとうに悪役をこなしていてそこにほくほく。こういうクズで小者っぽい悪役をラストまで連れてきて、きちんと成敗される話って意外と少なくなってきてる気がするからなんだか妙に嬉しいぞ。

さて、今回の記事を書く際にやってみたかったのが「個人的な怪獣映画ベスト5」という企画。デザインの好き度でいえば『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』に出てくる怪獣たちが上位にくるんですけど、「怪獣映画」となると案外悩む。んで以下がちょっと考えた末に出したそのベストです。

1.『シン・ゴジラ(2016年)』
2.『ガメラ2 レギオン襲来(1996年)』
3.『ゴジラ(1954年)』
4.『キングコング:髑髏島の巨神(2017年)』
5.『ゴジラ対メカゴジラ(1974年)』

ゴジラ率高し。まあキングオブモンスターですしね。特撮好き・怪獣好きからすると"名作"と言われる作品ばかりなのですが、一応補足しとくと5位にランクインした『ゴジラ対メカゴジラ』はVSシリーズではなく、1974年版の「対」の方です。ハチャメチャな展開と熱血感のある終盤の流れがすごく楽しくて好きな作品。4位の『キングコング』は1930年の初代でも、2005年のピーター・ジャクソン版でもなく、"モンスターバース"に属するやつ。この映画はあれですね、サミュエル・L・ジャクソンのイカれ具合を見るためにある作品です。面白いのでぜひどうぞ。
んー、でもゴジラ以外の怪獣映画ってそれほど観てるわけではないのでもっと観ていきたいな。例えば怪獣映画専門の動画配信サービスってないのかしら。と思い、U-NEXTで探してみたらゴジラをはじめ特撮作品も充実してる模様。こいつぁいいや。

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