見出し画像

チネ・ラヴィータのおもひでぽろぽろ

仙台駅の東口を出て徒歩1分の場所に映画館がある。
ショッピングモールの2階に併設されたその映画館の名前は「チネ・ラヴィータ」。2004年に元々あった「シネアート」を引き継ぐ形で誕生し、2009年に現在の場所に移転。40~100人規模のスクリーンが3つあり、最新の作品から往年の名作まで、ジャンルや公開規模を問わず上映してくれる私がしょっちゅう利用していた映画館です。

この映画館が20年の歴史に幕を閉じ、2024年3月いっぱいで閉館するという。
さみしいなあ。
映画館で映画観るの大好き人間なので、もうこれ以上映画館が無くならないでほしいんだけど。映画館はいいですよ。誰かと観に行ったら楽しさを共有できますし、ひとりで行ったら深く深く作品の世界にひたれます。お目当ての作品を朝一で観に行くのもいいですし、仕事や学校帰りにふらりと立ち寄り適当な作品を選んで観るっていうのもいいですね。予定の時間まで暇だから入ってみるってのもいいですし、観たい作品が無くてもとりあえずポスターやグッズを眺めてるだけで楽しい。
チネ・ラヴィータは館内の休憩スペースがやたらと多いので、ゆっくり本でも読みながら映画が始まるまでの時間を過ごすのにも適してましたし、待ち合わせするときも「奥の赤い椅子あたりにいるねー」って感じで使い勝手がよかったです。
……さみしいなあ。
『ハリー・ポッター 炎のゴブレット』を観たのもこの映画館だったなあ。2005年のことか。もう20年も前の話じゃん、びっくりするよ。『ゆれる』も良い映画だった。香川照之とオダギリジョーを兄弟として配役した人は天才。『トイ・ストーリー3』は泣いたなあ。「あばよ、相棒」の台詞がグッときますよね。『ヒューゴの不思議な発明』は3Dで鑑賞した作品。最近はTOHOシネマズが近くにできたから、こういう大スクリーン向けかつ3Dの映画はあまりやらなくなってたなそういえば。『ちはやふる 上の句』と『ちはやふる 下の句』を続けて観たのもいい思い出。Perfumeの主題歌が激はまりしてる映画だった。友人と「クソ映画を映画館で観たいね」って話をして足を運んだこともありました(作品名は内緒)。
大作もやってくれるけど、いわゆるミニシアター系の映画をやってくれる映画館として、そして名作を再上映してくれる映画館として、好きだったんだけどなあ。
色々あって足が遠のいてた時期もあるし、特に2020年とかはほぼ行けなかったんだけど、コロナ禍があけてからはまたよく行くようになっていた。思い出深い作品がたくさんあるし、この映画館が気に入っていたからこそ、より楽しく安心して鑑賞できていた気もする。おおげさだろうか。

…………。
ええー、ほんとに無くなるの?
いやだよ、いやだ。無くならないでよ。やだやだやだ。いやじゃあーーー!!! 無くならないでくれよお。わしの憩いの場所を奪わんといてくれぇーー!!『カメラを止めるな!』とか『グッバイ、サマー』とか『リバー、流れないでよ』とかこれくらいの大きさの映画館だから良いって作品あるじゃんよぉぉー。あああ……あんまりだあぁぁぁ。
ここが無くなったら仙台市内だと3つくらいしか残ってないよ映画館。TOHOシネマズは巨大スクリーンで観れてそれはそれで嬉しいけど大作ばっかだしよお。一応同系列の映画館「フォーラム仙台」は残ることになるけど……。うう、悲しみがつのる……。

でもまあ、こうやって嘆いてみたところで閉館するのは変わらないわけで。これが時代の流れというものか……。
んで、閉館のニュースを聞いて、そういえばチネ・ラヴィータで観た映画のチケット残してたなあと思い出し、ちょっと引っ張り出して整理してみたら、なんだかいろいろ懐かしい気持ちになったので、今回はその思い出をいくつか振り返ってみようかと思います。


たぶんチネ・ラヴィータで最初に観た映画

『スパイダーマン2』

残ってた映画のチケットを年代順に整理してみたところ、一番古いチネ・ラヴィータの半券はこれだった。2004年公開の『スパイダーマン2』。私にとってはスパイダーマンのイメージってナイーブでナードっぽいトビー・マグワイアが最初に来るんだよなあ。ドクター・オクトパスが機械の触手を使ってガシガシビルを登ってくる映像のかっこよさには痺れたし、いいヒーロー映画だったな。まさかその約20年後に彼らのことを再び劇場で観れるとは思ってなかったけど。


山田洋次の「時代劇三部作」完結作

『武士の一分』

ちなみに私は映画館で席を取るとき真ん中からやや右斜め後ろの席を取ることが多いです。なんとなく見やすい気がするのだ。でもこの2006年の半券には席番号が書いてない。つまり劇場内に入ってから適当に座るシステムだったということか。

本作は山田洋二が2000年代に製作していた「時代劇三部作」に連なる作品。『たそがれ清兵衛』、『隠し剣 鬼の爪』、そして『武士の一分』。お話は、殿様の毒見役という武士にしてはパッとしない仕事に就いてる主人公の武士(キムタク)が、ある日食べた貝毒によって失明してしまい、そのうえ愛する妻(檀れい)を手籠めにされたから復讐してやるー!と怒りに燃えるというもの。修行シーンが良いんだよね、この映画。目が見えなくなってからいかに戦うのかを検討し、必死に対策を練る場面がええんよ。


イーストウッドの渋さを堪能する映画

『グラン・トリノ』

イーストウッドが俳優を引退するつもりで撮った作品。まあその後最新作にいたるまで普通に彼は出演してるので、宮崎駿の「引退する」って言葉と並んで、この御大の「最後」って言葉はぜんぜん信用してませんが。
この映画は2009年当時、映画館で観てめちゃくちゃ感動したなあ。イーストウッドかっけえ!ってのと、暴力の連鎖を止めるために自身がこれまで行ってきたことを贖罪し、その生きざまを見せつけることで、タオに、そして観ている私たちに”思いを託す物語”として心打たれました。しばらく友人とこの映画の話ばかりしてる時期があったな。


ロボット×ボクシング×親子愛な映画

『リアル・スティール』

2011年公開作品。これめっちゃ好きな映画です。お父ちゃんがロボットを使ってボクシングするってお話で、すっごい王道のエンタメ映画に仕上がってます。なんか知名度低い気がするんですがほんと良いのでみんなに観てほしい。


おおかみこどもとライジング

『おおかみこどもの雨と雪』『ダークナイト ライジング』

2012年の夏に一日で2本観た日の半券。友人と3人で『おおかみこどもの雨と雪』を観に行ったのですが、なんかいろいろ気に入らない部分があり、「口直しに観よーぜ」ってことで、『ダークナイト  ライジング』も観ることに。
『ダークナイト  ライジング』を見終わったあとは、ジョセフ・ゴードン=レヴィットが良かったよねとか、ベインが思ったより弱っちい上になんか情けなかったよね、なんて話しながらこの日もファミレスに向かった気がする。


ひとりぼっちの宇宙漂流

『ゼロ・グラビティ』

ポップコーンを買うことはあるけど、飲み物を買うことはあまりない。飲み物あんまり要らない派。チネ・ラヴィータではキャラメルポップコーンを買うことが多かったな。
この映画は2013年に観に行った作品で、宇宙にひとり放り出されるという内容。怖いやら感動するやらで、泣いた泣いた。


猛男たけおすぎる鈴木亮平を見られる映画

『俺物語‼︎』

なお、チネ・ラヴィータの館内はやさしい照明と、観葉植物が配置されており、ゲームセンターと隣接しているけれど中はとても静か。奥まった場所にはテーブルと赤い椅子が置かれていて、そこで映画が始まるのを待ったり、誰かと待ち合わせたりをよくしていました。

この『俺物語!!』は『別冊マーガレット』で連載されていた漫画作品を原作とした映画で、仙台でロケして作られたんですよね。鈴木亮平の役作りがぱないっす。永野芽郁の輝く笑顔にやられます。ちょっとBL入ってます。舞台として使われた八木山ベニーランドは仙台市民には有名な遊園地です。
ヤンヤンヤヤー 八木山の ベニーランドで でっかい夢が  はずむよ はねるよ ころがるよ♪(ローカルネタなのでスルー推奨)


火星でジャガイモ栽培

『オデッセイ』

何故か金額が書き直されてる。半額で鑑賞できる日だったのだろうか。
こちらは2016年に公開された作品。原作からいい具合にリドスコが映像化してくれていて、なんじゃこりゃ~最高~、となりながら観た思い出。『プロジェクト・ヘイル・メアリー』もはやく観たいぞ。


「あーあ、たまげるくらい普通じゃのお」

『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』

元の版には無かったシーンを大量に加え、2019年に公開された作品。すずさんとりんさんの関係性を深掘りすることで、より原作に忠実な作りとなっている。他にも日常生活を丁寧に丁寧に描いており、ほんといい映画だな〜と感動しながら観た。この映画のDVD版の特典映像には、当時の気象データもしっかり調べて作った過程が映されており、こうの史代と片渕須直ふたりがどれだけ丹念にこの作品を手がけたのかがわかる。
次回作も期待してますよ、ねえ、監督。


すばらしくてNICE CHOICEな映画

『映画:フィッシュマンズ』

音楽好きの友人たちと一緒に観に行った作品。フィッシュマンズのドキュメンタリー映画です。これも好き。フィッシュマンズ好きにおすすめの映画ですよー。あれ?ってかこの映画他の作品に比べると割高だな。なんでだろ。


汚物は消毒だ~

『逆転のトライアングル』

前半部で結構、いやかなりきちゃないシーンがあります。そんで汚物は消毒だ〜〜とばかりにそれらが一層されます。なに言ってるのかわからないと思いますがそういう映画なんです、ほんとに。去年のベストからギリギリ選外になったけどこの映画も大好き。
あと何故かこの映画の半券だけタイトルの文字が白抜きになってる。きっとレアなやつだ。いいだろー。


ポール・ダノが"殴られない"映画

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』

2023年6月あたりからチケットの形態が変わり、すべてQRコード対応に。それに伴って上の画像のようにインターネット上で確認できるようになった。便利だ。でもなんか味気ないよー。
ちなみにこの映画は一番最近チネ・ラヴィータで観た映画。”ボコられ俳優”であるポール・ダノが主演なのですが、この映画では無事です。良かったね、殴られなくて。

というわけで適当にピックアップしてお気に入りの作品とチネ・ラヴィータについて振り返ってみました。
好きな映画館が無くなるのはさみしいもんですね。今月はビクトリ・エリセ監督の31年ぶりの最新作『瞳をとじて』の公開にあわせて、ビクトリ・エリセ特集上映をやる模様。また来ます。閉館するまでまた何度でも。



この記事が参加している募集

映画館の思い出

おすすめ名作映画

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?