2023年に観た中で好きだったアニメ作品ベスト5
もう年末ですね。
今年観た中で好きなアニメ作品を記録として残しておきます。
映画かTVシリーズか、日本の作品か海外の作品か、短編か長編か、についてはあまり気にしてなくて、「アニメーション」として、そして映像作品として気に入ったもの、心に残ったものを選んでます。
1位.『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
いくらなんでも凄すぎる。カットごと、どころかコンマ単位で絵のトーンやビジュアルデザインが変化し、それによってこれまでになかった心情の表現やアクション性を獲得している。一枚ごとに施された創意工夫とその美しさはまさに異次元レベルであり、アニメーションの語源「命を吹き込む」の意味を拡張するかの如く、瞬間瞬間のレベルで絵柄は変化。それは人の心がグラデーションによって出来ていることをアニメで表現しているわけで、これを作り上げた労力を想像すると頭がクラクラしてしまう。脚本、音楽、キャラクターは前作を上回る質の高さで、そこら中に配置された遊び心に関しても見応えたっぷり。マイルスはもちろんすばらしい主人公だけど、グウェンもやっぱり最高で、マルチバースを突破して再会した二人がタワーの最上部から上下逆さまになってマンハッタンを眺めるシーンはほんと良すぎた。続編にあたる『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』は日本では来年6月に公開予定。早く観たーい。
2位.『君たちはどう生きるか』
黒澤明が晩年に『夢』を製作したのと同様に、この作品もまた監督の心象風景や、言葉に置き換えることが出来ないイマジネーションをアニメという形に置き換えた作品なのだろう。そのためかつての作品、例えば『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』ほど強度の高いファンタジー世界とはなっておらず、イメージの断片を寄せ集めたような「夢の残骸」としての世界ができあがっている。
まあ長い感想は別記事で書いたので割愛するとして、12月にNHKで放送された『プロフェッショナル ジブリと宮﨑駿の2399日』では、今作の製作過程ともに、宮崎駿から高畑勲への、敬愛を超えた強い情愛を見せられ、監督にとって"パクさん"という人物がいかに大きな存在だったかを感じさせられた。『君たちはどう生きるか』は、宮崎駿が自身のこれまでのキャリアを振り返るように、キャラクター、シチュエーション、カット、音楽、演出と、様々なシーンで過去作を彷彿とさせるように作られている。そこにはスタジオジブリでアニメを作り続けたことや、関わってきた人たちへの思いも感じられる。つまりはファンタジー作家である宮崎駿にとって心のうちにある「望郷」の映画。そして、それらを全て捨て去ることを厭わない姿勢をみせた作品と言えるだろう。解釈は色々あるし、全てをわかる必要など無い。というか完璧にわかることなど不可能だ。ただ、いくつもの素晴らしい作品を作ってきた監督が、最新作として提示するにはあまりにかっこ良すぎる”始まりの物語”。私にとってこの『君たちはどう生きるか』はそんな印象の映画だ。あと、どうせまた何か作ろうとしてるんでしょうから、引退詐欺には引っかからないぞ!
3位.『天獄大魔境』
荒廃した世界で人外と戦いながら進んでいく少人数の旅、塀に囲まれた箱庭的空間での不穏な日常。昨今の流行り要素が多く見られる作品だけど、決して軽薄に流行に乗ろうとした訳ではなく、それらを解体・再構築した上で、原作者である石黒正数のユーモアや性癖、”抜け感”を取り入れ、オリジナリティを追求したSF作品である。
つうか好きな要素だらけなんだよなあ、この作品。石黒正数さんは藤子・F・不二雄先生のフォロワーなのでギャグとかブラックな部分とかネーミングセンスとか好みな点が多いし、強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ。連載中の漫画をアニメ化した作品だから、かなり中途半端なところで終わるけど。
4位.『北極百貨店のコンシェルジュさん』
70分と短い作品で、秋ごろ仕事終わりに映画館に立ち寄って観た映画。いろんな動物たちが集まる人気百貨店で新人コンシェルジュとして働き始めた主人公の成長を描いており、お仕事アニメとしてコンパクトにまとまっています。コミカルで明るい色調、ころころ変わる主人公の表情、アニメーションとしての楽しさがいっぱい詰まった作品で、中心となる「動物たち」も生態を捉えた動きやデザインが観ていて楽しい。人類がこれまで自然に対して行ってきた行為について考える内容にもなっていて非常に良質。な~んで~もそーろーうー♪ほっきょくひゃっかてん~♪
5位.『スキップとローファー』
通称「スキロー」。主人公のみつみがとっても良い子。ハッピーインフルエンサー。真面目でまっすぐなんだけど、ちょっと抜けてて、それに対して周りのみんなも良い形で影響を受けていって……。「スキロー」は、そんなそれぞれの関係性から浮かび上がる心の機微を丁寧に捉えながら、日常の何気ない一コマを描写した青春コメディなわけです。原作の持つのびやかな空気をしっかり出した作品でした。
次点.『進撃の巨人』The Final Season 完結編まで
2013年にアニメ化がスタートし、制作会社の変更や放送延期などを経て、ようやく今年放映された最終回。”対巨人”という設定を使い、「戦争の罪」「社会の分断」「人種差別」といった人類の負の歴史を描いたダークファンタジーです。
完結編の最後はアニメならではの補足も入っており、漫画版以上に作者の伝えたかった意図が伝わってきて満足度の高い出来となっていました。
巨人については3DCGベースで製作されたものを手描きで表現する手法が用いられており、アニメーション作品として観るならば、巨人や立体機動を使った戦闘シーンは迫力満点。やはり空中をブンブン飛び回るアクションシーンは爽快感があって良いですね。
自由と意思についての物語。諫山創先生の原作にあった"熱"をしっかり受け継いだアニメ作品だったと思います。10年間お疲れさまでした。
※
というわけで2023年に観たアニメ作品ベスト5でした。『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』とか『スコット・ピルグリム テイクス・オフ』とか他にも良い作品が多く、良質な作品にたくさん出会えた年だったなあと思います。ちなみに一番驚いた作品は、バキバキのディストピアものをやってのけた『ドラえもん のび太と空の理想郷』だったりする。
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