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お坊さんの決り事。第3条「殺人したらあかん!」

「律」のエピソードを小説にしてみました。第3条は不浄観殺人事件・・・佛が教えた瞑想「不浄観」が次々と人を殺していきます・・・。
話の筋はそのままですが、大幅に脚色したり省略したりした超訳『根本説一切有部毘奈耶』です。漢訳・国訳・チベット訳を参照しました。
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インドはヴァイシャーリーのヴァッグムダー河側サーラ樹林に、佛がおわしたときのことでございます。

佛「おーい、ええ話聞かしたるから、集まれー」
弟子たち「へーい」
佛「実はな、イケてる瞑想法を見つけてん」
弟子たち「マジっすか」
佛「不浄観って言うんやけどな、自分の肉体への執着を断つことができるねん」
弟子たち「おぉー、不浄観!どうしたらいいんですか?」
佛「汚いもんって嫌やろ?汚いもんに執着せんやろ?せやからな、自分の体はめちゃめちゃ汚いって、瞑想でイメージするねん」
弟子たち「なるほどー」
佛「うんこもおしっこも出すし、死んだら腐ってめっちゃ悪臭放つし、自分の体ってよくよく考えたら汚いねん」
弟子たち「確かに」
佛「そうやって不浄観やっていったら、自分の肉体への執着を断てるっちゅうわけよ」
弟子たち「おぉー」
佛「さぁ、みんなでやってみよー!」
弟子たち「へーい」

こうして弟子たちは不浄観に励み、自分の肉体への執着を断つことができました。
しかし、なかにはこんな弟子もいました。

弟子1「・・・ぅわぁ・・・俺の身体すごく汚いなぁ・・・こんな身体もう要らないよ・・・どうしよ・・・。あ、刀持ってるし、死んじゃお」

こうして弟子1は死にました。

弟子2「・・・ぁあ、弟子1死んだんだ・・・俺もこんな身体要らないしな・・・あ、毒持ってるし、それ飲んで死んじゃお」

こうして弟子2も死にました。
同じようにして、他の弟子たちも、首を吊ったり、崖から身を投げたり、他の弟子に殺してもらったりして、次々と死んでいきました。
そんななかこんな弟子もいました。

弟子3「・・・私もこんな汚い身体嫌だから死にたいわ・・・でも自殺するのは嫌だしな・・・あ、そうだ!ちょっとそこのバラモンさん!」
とあるバラモン「ん?僕?」
弟子3「そうそう。ちょっとお願いがあるんだけどさ。私を殺してくれない?」
とあるバラモン「え!?何言ってんの!?」
弟子3「私の衣と鉢をあげるからさぁ。思い切って殺っちゃってよ」
とあるバラモン「しかたないなぁ。じゃぁ、いくよ?」

こうして、とあるバラモンは弟子3を刀で殺して、衣と鉢を獲得しました。
そこに悪魔がやって来て言いました。

悪魔「けけ。お前、善い事やったじゃないか」
とあるバラモン「そうっすか?」
悪魔「そうだよ。そいつを涅槃に至らせてやったんだから、お前、すんごい功徳を得たんだよ。その衣と鉢はお前のものだよ。お前、他にも同じように死にたがってるやつがいるだろうから、そいつらを涅槃に至らせてやったらいいんだよ」
とあるバラモン「あ、僕、善いことしたんだ。じゃぁ、そうします」
悪魔「がんばりなよ」

こうして、とあるバラモンは、同じように自分の身体を嫌悪している弟子たちを次々と殺していきました。

満月の日、佛が弟子たちの所にやってきました。

佛「あれ?なんか、前より弟子の数減ってへん?アーナンダくん、弟子減ってるよね?」
アーナンダ「はい。先日師匠が不浄観を勧められましたので、弟子たちは皆、不浄観に励んだんですが・・・」
佛「おぉ、さすが我が弟子たちやなぁ。えぇことやないか」
アーナンダ「いや・・・それがですね・・・その中には自分の身体を嫌悪しすぎて、自殺したり他の弟子に殺してもらったりした者がいて、こんなにたくさん弟子が死んでいなくなったのです・・・」
佛「ぅえぇえぇぇ!!!マジで!?」
アーナンダ「マジっす・・・」
佛「あかん!人を殺めたらあかん!!!」
アーナンダ「ですよね・・・」
佛「人はもちろん胎児も殺したらあかんで!自殺幇助したり、殺人教唆・自殺教唆もしたらあかん!!!そんなことしたら追放や!」

こうして、人を殺めてはいけない、というお坊さんの決り事ができました。

--------------------------------------------------------------------------------------お坊さんの決り事は約250条あります。更新頻度は激低なので、ゴールできるか微妙ですが、よろしくお付き合いくださいませ。

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