おるすばん

うちの子どもが小学生の頃、帰ってくる時間にはなるべく家にいるようにしていた。おかえりなさい、と言えるようにしていた。私の仕事が在宅のパート仕事だから可能だったのだけれど。私自身が子どもの頃に母がいつも家にいたかというと、そうではなかった。

いわゆる鍵っ子だった。毎日ではなかったけれど。私の母は幼稚園教諭で、週に何回かは仕事に出ていた。私は小学生になると鍵を渡されて、学校から帰ったら一人で留守番しているように言われた。妹はもっと小さかったので、職場の託児施設に預けていたようだ。それで小学生の低学年の頃、学校から帰ると家で1人で何時間か過ごすことがあった。

この時間が大好きだった。嬉しかった。誰にも邪魔されない時間だった。そういう日は、誰かに学校帰りに遊ぼうと誘われても断っていた。家に帰ると、おやつが置いてある。それを食べながら本を読むのが楽しみだった。そして、こっそりテレビを見るのだ。

うちの両親はわりとしつけに厳しい方だったと思う。特にテレビは、時間も見る番組も親がコントロールしていた。こっそり好きな番組を見るのは、この時しかない。しかし昼間の時間帯はワイドショーかドラマの再放送ぐらいしかない。最初はなんてつまらないんだ、と思っていた。が、そこで当時にしてもたぶん古めのドラマの再放送にはまった。おもしろかった。一度見始めると、次の回が楽しみになった。水前寺清子主演の「ありがとう」シリーズ、野々村病院物語、京塚昌子がやたら出てくるタイトルがわからないドラマ。花登筺原作ものもちらっと見たと思うが重くて嫌だな、と子ども心に思った印象がある。

これらをこっそりと見ていた。親が帰ってきたどうしよう。テレビつけてるってバレたらどうしよう。すごくドキドキしながら、悪いことをしているのだな今の私は、と思いながら見ていた。玄関の辺りで音がするとあわててテレビを消していた。

大人になってから、そういえば留守番してる時テレビをこっそり見てたわ、と母に言った。ああそうだったみたいねー、ぐらいの返事が返ってきた。バレていた。でしょうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?