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「マティス 自由なフォルム」(国立新美術館)

2023年春にも東京都美術館で開催されたマティス展。コロナ禍による延期の影響で、ちょっと珍しい2年連続開催となりました。なお、前回はポンピドゥー・センター、今回はマティス美術館のコレクションが中心となっており、主催も異なる別個の展覧会です。
 
前回も前回で面白かったんですが、マティスの集大成と言える《ロザリオ礼拝堂》が映像展示で、レプリカ等による再現が無かったことに「無いのか…」と思ってしまったことも事実。もちろん展示として思いついたとしても、敷地スペースや美術館としての設営ノウハウ、予算なども勘案しなければならないのですが… かつて庭に教会(安藤忠雄《光の教会》)を建てたこともある国立新美術館が、礼拝堂内部の再現展示をやってくれました。
白い壁面に黒い線でシンプルに描かれた聖母子像と聖ドミニクス像。内部は太陽に見立てた光がついたり消えたりするようになっていて、やはり白い床面に差し込む、青・緑・黄色のステンドグラスのカラフルな光が美しい。それは従来的な教会の、装飾的なイメージとは異なりますが、よりポップに、親しみやすくアップデートされた感じもあります。より教会の雰囲気を感じたくて、イベントで神父様を呼んできて、礼拝や賛美歌合唱の一つでもできないかなぁとか思っていたり。

ロザリオ礼拝堂内観(再現)
右、聖ドミニクス(再現)
ロザリオ礼拝堂内観(再現)
ロザリオ礼拝堂内観(再現)


 
展覧会のキービジュアルに使われている《花と果実》(1952-53)は縦4.1m×横8.7mという、一瞬切り絵には見えないほどの文字通りの大作。デザインっぽい感じもしますが、花の不規則な描き方にはデザインには無い魅力を感じます。

花と果実(1952−53)

マティスの作品は同時代のキュビスム等に比べ堅牢な理論は感じられず、色彩も描線も遥かに単純。デフォルメされたタッチは童画・漫画のような雰囲気さえあります。しかし、そんな単純にも見える線や色の一つ一つの主張が強く、まるでトリオバンドの演奏を見ているかのよう。作品の不規則性は従来の交響楽とは違う、まさしく「ジャズ」のような人間味、肉体に由来するリズムにも見えてきます。
マティスの絵に潜むこの「リズム」さえ掴めれば、あとはカンバス上の「動き」をひたすら楽しむだけの時間でした。花や葉は揺れ、色彩は点滅し、青い人は白い余白を活用しつつ踊っていく… 目に馴染めば馴染むほどにきっともっと面白くなる、凄い芸術です。
 
強い理論を持たない(少なくとも見せていない)からこその、マティスの軽やかな自由さを今まで以上に感じた展覧会でした。そしてもう一度お伝えしたいです、「再現展示最高!」と。

画像はこちらよりどうぞ↓
https://www.instagram.com/p/C42639CSMyR/

ブルー・ヌードⅣ(1952)
陶の習作(1953、シャルル・コックス制作)
木(プラタナス)(1951)
大きなアクロバット(1952)
大きな顔、仮面(1951)
顔(1951)
顔(1951)
ヴァンス礼拝堂の外観のマケット(1/20)(1948.11)
告解室の扉のための習作(1950)
ステンドグラス、「生命の木」のための習作(1950)
ステンドグラス、「生命の木」のための習作(1950)
蜜蜂(1948)
十字架降下(1950)
聖ドミニクス(1949頃)
聖ドミニクス(1949)
黒色のストラ(頚垂帯)のためのマケット(1950-52)
上、紫色のストラ(頚垂帯)のためのマケット(1950-52)
下、緑色のストラ(頚垂帯)のためのマケット(1950-52)

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