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タイトルをここに入力。

『すすすすすんげえぇぇぇ!◯◯の新作が激うまバズり中「こりゃ堪らん」「すごい食べ応え」』

 今朝、Googleのおすすめに出てきた記事のタイトルである。記事は某レストランチェーンの新作メニューが好評だという、それだけのことであるが、ここまで振り切ったタイトルだと一周回って面白く見えてしまう。私は反射的にリンクをクリックしてしまった。

 そういう、私のような輩がいるからか、(上品ではない私から見ても)品性を感じないタイトルというのは増えたと思う(増えてしまったというべきか)。GAFAの本で読んだのだが、顧客のもっと形而下の「欲望」に働きかける、そういうマーケティングの手法を聞いたこともある。そういう手法がタイトルの付け方にも伝播してきているのだろうか。
 冒頭の記事にしても、たとえば「◯◯、クリームパフェの新作を発表」あたりが無難なんだろうけど、おそらくそれでは関係者やスイーツマニアぐらいしか読んでくれない。そこで、一般の人にも読んでもらえるようにと試行錯誤しているうちに、タイトルで叫びだしたんだろうと思ったりもする。

 こういう手法は過剰広告やミスリード・事実の歪曲にもつながることがある。もちろん好ましいことではないが、せっかく頑張って書いても、読まれないというのは寂しい… という気持ち自体はわからないでもない。少しでも興味をもってもらいたくて、ある程度わかりやすいタイトルを考えることは私レベルでもある。

 それと同時に、「ピッタリくるタイトルをつけたい」という感情もある。ここに書いているのはほぼ雑文とはいえ、いちおう私の書いた「作品」とは言える。作者という、作品の「親」に近い立場としては、なるべくなら一番ふさわしい「名前」をつけて送り出してあげたい。
 ちなみに今回に関して言えば「タイトルをここに入力。」という、ちょっと紛らわしいタイトルにしている。深い理由はなく、基本的には直感だ。ただし、いくらシンプルなのが好きだからと言って、毎回「◯◯について」「◯◯雑感」ではいかにも味気ない。「PV爆増!タイトルのつけ方のコツ3選」というようなSEO対策丸出しのタイトルもなんだか商売っ気が強すぎていやらしい。いちおう文章のタイトルにまつわる文章ということで、私の好みとして若干チョケたタイトル選びをする、ということになる。

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 ちなみに、この記事の下書きを書いていたのはこの展覧会への移動中だった。

「茶の湯以前」(神奈川県立金沢文庫)

 この展覧会の存在を知ったのは「すすすすすんげえぇぇぇ!」の記事を見た1時間ほど前。茶の湯以前、という、「以前」の響きに一目惚れしてしまった。おそらく知識も必要だろうなと思いつつ、予習もそこそこに私は金沢文庫へと向かう列車に乗っていた。
 案の定専門性が高く、展示室内のソファでコトバンクを調べることにはなったものの、良い勉強をさせてもらった展覧会だった(レポートは後ほど書きます)。

 良いタイトルが時々、良いコンテンツとの出会いを与えてくれることがある。というより、良い作品には多くの場合、作品を邪魔しないような理想のタイトルがついている、そんな気がしている。
 「名は体を表す」というのは確かにあるのかも知れない。

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