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「明治・大正の輸出陶磁器 技巧から意匠へ」(平塚市美術館)

 横山美術館は名古屋市にある、明治期に多数制作された「輸出陶磁器」を中心に展示されている美術館。
 輸出陶磁器というのは明治期に押し進められた殖産興業・輸出振興政策の中で、ジャポニスムが流行していた欧米からの需要を見込んで制作された陶磁器のこと。花瓶に実際の花鳥を貼り付けたかのようなリアリティ溢れる立体浮彫が特徴の一つで、これらの作品はウィーンやフィラデルフィア、パリなど、1870年代に開催された万国博覧会でも好評を博し、外貨獲得のための主力商品となっていきます。

 しかし、1880年代からはジャポニスムの衰退、技巧主義への飽き、供給過多といった状況を受け、立体浮彫などの装飾性の高い作品は鳴りを潜め実用性の高い商品へとシフト、さらに1900年パリ万博における旧態依然とした東洋的な絵付けが批判されてしまい、アール・ヌーヴォーなど当時の流行を意識した作風へとシフトしていきます。
 このような歴史が作品の形で概観できるようになっているのが本展。作者も初代宮川香山、七代錦光山宗兵衛、オールドノリタケなど、主要な作者を一通り揃えております。

 抽象的な作品も多い陶磁器作品の中でも、わかりやすい、インパクトの強い作品が多かったとは思うのですが、その中でも輸出陶磁器の初期、眞葛焼を制作した初代宮川香山の存在感は飛び抜けていたように感じました。写実彫刻のような立体浮き彫りなど、技巧的にも突出していることはもちろんですが、釉薬の剥がれ、瓶に水が張られた跡など、花瓶としての歴史が残っていたのが意外でした。
こういうのって美術館的には修理・修復案件なのかもしれないですけど、100年以上前、欧米のどこかの家庭で、実際に花を活けて過ごされた花瓶としての「歴史」が目に浮かぶようです。そしてそこに活けられた花が野花にせよ、薔薇の花束にせよ、その場面に佇んでいる花瓶の姿は間違いなく美しいだろうなと思います。
 それは大事に箱やガラスケース、自前の収蔵庫なんかに保管するタイプの愛情とはまた違う、花瓶として活用する、道具本来の役目を果たして上げることへの「愛」を感じました。

 ちなみに鎌倉にある吉兆庵美術館というところでも初代宮川香山の企画展が開催中とのこと。こちらも、時間を見つけて行ってこようと思います。
(画像1-5枚目が初代宮川香山の作品、6-7枚目が輸出陶磁器前期作品、8-10枚目が後期作品)

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