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発達障害って何種類あるの?

近年、ニュースや人々の会話の中に「発達障害」という言葉をよく聞くようになりました。

今の子供たちは、1クラスに2人程度の割合で発達障害を持つ子がいるそうで、大人になってから自分の発達障害に気付く人も多くいます。

そのきっかけとなるのが、社会での「生きづらさ」

学校や仕事で、他の人と同じように出来ない、というような苦難と何度もぶつかり、その原因を探ってみると「発達障害だった」ということも多くあるようです。

発達障害ってなに?

では、そもそも発達障害とはなんなのでしょうか?

発達障害は生まれつきの特性で、脳機能の発達の偏りによる障害です。
特徴としては、外見からはわかりにくいことと、抱える症状は十人十色だということ。

外見からは発達障害なのかどうかはわからないので、発達障害の特性を「わがまま」「自分勝手」のように捉えられ、「怠けている」「親の育て方が悪い」など、家族を含めて批判されることも少なくありません。

ですが発達障害は、環境を調整したり特性に合う方法で学ぶことで、特性が軽減されます。

発達障害を持つ人が過ごしやすくするには、何よりも周囲の人の理解や協力が必要なのです。

発達障害の種類はどれくらいあるの?

発達障害は大きく3つの種類に分けることが出来ます。

1つ目は自閉症スペクトラム障害(ASD)
2つ目が注意欠如・多動性障害(ADHD)
3つ目が学習障害(LD)

これらは「生まれつき脳の働きに違いがある」という点が共通していて、いくつかの発達障害を併せ持つこともあります。

それぞれの特性を見ていきましょう。

自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラム障害は診断時期や基準によって、

・アスペルガー症候群
・広汎性発達障害
・高機能自閉症

と言うことがあります。

自閉症スペクトラム障害の特性としては、コミュニケーションや対人関係が困難だったり、行動や興味に強いこだわりを持っていることがあります。

コミュニケーションは言葉、視線、表情、身振りなどでやり取りをしますが、自閉症スペクトラム障害を持つ人は自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ることが苦手です。

また、感覚が過敏さを持ち合わせることもあります。

自閉症スペクトラム障害の症状やサイン

自閉症スペクトラム障害は年齢や程度によって症状が多様にあります。

1~2歳の頃は

目が合わない・言葉が遅い・他の子供に関心を示さない

という症状があり、その後、成長に合わせて

一人遊びが多い・かんしゃくを起こす・名前を呼んでも反応しない・落ち着きがない

などの症状が出てきます。

言葉を話すようになっても、相互で会話をするのが難しかったりしますが、自分の好きなことは喋ったり、電車やミニカーなど、自分が興味があるものに関しては何時間でも熱中することがあります。

学齢期以降になるとコミュニケーションの難しさから

・友達が出来にくい
・友達が嫌がっても一方的に話し続けてしまう

などの傾向が表れてきます。

成人してからも就労や仕事関係でつまづくことが多く、

・仕事に優先順位をつけて行うことが苦手
・現場に合わせて臨機応変に対応できない

という傾向があります。

自閉症スペクトラム障害では、コミュニケーションが上手く取れないことで問題を抱えるケースが多いようです。

自閉症スペクトラム障害の治療について

自閉症スペクトラム障害の場合、幼少期には個別や小さな集団で療育を受けて、対人スキルの発達を促すことが期待されます。

視覚的な手掛かりを使ったり、先をわかりやすく提示することで子供は安心して情緒も安定してくるので、その中で言葉や言葉以外でのコミュニケーションのスキルを学んでいきます。

睡眠や行動の問題が著しい場合やてんかんなどの不調がない限り、自閉症スペクトラム障害用の薬はありません。

また、幼少期から成人期を通して、身近にいる親や配偶者に本人の特性を理解している人の存在が重要になってきます。

学校の先生や職場の同僚の理解も必要で、自閉症スペクトラム障害の当事者にとって支えがあることが何より大切なのです。

自閉症スペクトラム障害への支援

自閉症スペクトラム障害への支援としては、成人を対象にした対人訓練やデイケアなどのリハビリテーションを行っている施設があります。

また、都道府県や政令指定都市ごとに発達障害者支援センターが設置されているので、自閉スペクトラム症の人にグループ活動を提供したり、生活自立、就労等の相談に応じたりもしています。

注意欠如・多動性障害

注意欠如・多動性障害は不注意(集中できない)や多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくと行動してしまう)という症状が見られます。

これらの症状が出るときは「不注意が優勢」「多動・衝動が優勢」「混合して存在」など人によって異なる特徴があります。

注意欠如・多動性障害の症状やサイン

注意欠如・多動性障害は幼少期の症状としては

落ち着きがない・かんしゃくを起こす

などがありますが、それは健常の子でも見られることなので、見分けるのが難しいところがあります。

そのため、就学してから

・授業に集中できない
・忘れ物が多い
・時間をうまく管理できない

などの症状が出てくることで、注意欠如・多動性障害ではないか、という疑いが出てきます。

成人期になると落ち着きのなさ(多動性)は軽減することが多いですが、気分が落ち込んだり戻ったりという気分の波など、精神的な不調を伴うこともあります。

大人になってからも、会社で

・計画的に仕事を進められない
・ケアレスミスが多い
・〆切が守れない

という傾向があります。

また、自宅での生活でも

・片付けが出来ない
・途中で作業を中断した物事がたくさんある

という特徴が見られます。

注意欠如・多動性障害の治療について

注意欠如・多動性障害の場合、幼児期や学童期に集中しやすい環境を整え、ほめ方を工夫したりして増やしたい行動を増やすのが基本です。

例えば、勉強をしないといけない時間は本人の好きな遊び道具などは片付け、テレビを消したりして集中しやすくします。

そして集中する時間は短めにして一度にこなす課題は少なめに。
休憩するタイミングを事前に決めておき、やらないといけないことはTodoリストなどに書いてわかりやすく伝えることも大切です。

注意欠如・多動性障害の子供たちは物事の切り替えが苦手だったり、嫌な事にはかんしゃくを起こしがちですが、養育者側が「どうして」「ダメでしょ」など否定的な言葉を使うことは禁物です。

上手く褒めながら増やしたい行動、減らしたい行動を整理して、より良い行動に導くことが重要なので、養育者のスキルを伸ばしたり、同じADHDの子供を持つ親同士のつながりや心の支えが大事になってきます。

これらの環境調整や行動での取り組みをやっても日常生活に困難が続く場合は薬物療法を併用します。

ですが薬物療法は症状を緩和するもので、根本的な治療にはなりませんので、効果と副作用のバランスに注意しながら選んでいきます。

大人になっても

・作業にミスが多い
・計画を立てて行動することができない
・いつも落ち着かなくて感情がコントロールできない

という症状が出ることもあります。

その場合は子供と同様に、環境の調整や行動療法、薬物療法を実施し、精神的な不調を伴っている場合は、その治療も併せて行われます。

学習障害

学習障害は全般的な知的発達には問題がないのに、

読む(読字障害)
書く(書字表出障害)
計算する(算数障害)

など、特定の学習のみに困難が出ている状態を言います。

学習障害の症状やサイン

学習障害の子供は読む、書く、計算するなど特定の学習が難しい状態なので、それによって学業成績や日常生活に困難が生じます。

学習障害の治療について

学習障害の子供には、教育的な支援が重要になります。

読むのが難しい場合は文字を大きくしたり、大きい文字で書かれた文章をなぞりながら読んだりすることが有効です。
音声教材を使うのも可能になります。

書くのが難しい場合は大きなマス目のノートを使ったり、パッドなどの機器を利用することも可能です。

計算が難しい場合は数字に絵を合わせて視覚化したりする工夫が必要になってきます。

学習障害はただ勉強が苦手なだけとだと思われ、気付かれにくい障害でもあります。

子供が感じている困難を正確に把握し、子供のせいにはしないで適切な支援をしてあげて、それを周りの人で共有することが何より大切です。

他に併発しやすい障害

発達障害は「自閉症スペクトラム障害」「注意欠如・多動性障害」「学習障害」の3つに分けられますが、それとは別の障害もいくつかあります。

上記の3種と併発しやすい症状に、「チック症」「吃音」があります。

チック症とは

チックは自分の意思とは関係なく、思わず素早く体が動いてしまったり声が出てしまう障害です。

瞬きや咳払いなどの行動で出るチックや音声チックは、多くの子供に現れるので、そっと経過を見守っておいてもよいものです。

ですが運動チックや音声チックが1年以上続いて、日常生活に支障が出るようになるケースもあります。
その場合にはトゥレット症とよばれます。

チック症の治療について

チック症ではまばたきや顔をしかめることなどが運動チックで、咳払いや舌打ちなどが音声チックになります。

チックが一時的に出ることはよくあるので、最初は何も指摘せずに経過をみます。

ですが、チックがひどくなると

飛び上がる
自分の体や足を叩く
しゃがむ
単語を言う

など、日常生活に支障が出るようになってしまうことがあります。

この症状は10歳から15歳の間に一番強くなると言われていますが、成人しても強い症状が継続することもあります。

この状態がトゥレット症ですが、トゥレット症の体質的なチックは制御することが難しく、ごく短時間しか抑えられません。

そのため、チックの症状を周りの人が理解してあげることが必要です。

治療としては、チックが出そうになった時にチックと拮抗する動きをする「ハビットリハーサル」や、薬物療法を実施していきます。

ですがチック症に有効性が認められた薬は日本には無く、チック症には統合失調症の薬などが有効だと知られています。

吃音とは

吃音とは滑らかに言葉を話せない状態を言います。
具体的には、

同じ音を繰り返す
1つの音が伸びる
なかなか話し出せない

など様々な症状があります。

吃音の治療について

吃音は本人の精神的な弱さや、親の育て方が悪いと思われがちですが、これは完全な誤解です。

吃音は体質的な要素が強いことが知られていて、就学前に見られる吃音は数年の間に軽減することが多いです。

ですが長期的に吃音が続いてしまう子供もいるので、子供同士の中でからかいやいじめの対象になっていないか、学校での授業で本人が苦痛を感じていないかなど、周りの人が把握し、環境を整えてあげることが大切です。

吃音の治療としては、言語聴覚療法や認知行動療法が実施されます。

発達障害のグレーゾーン

発達障害には症状が障害だと認められる基準があります。

発達障害の特性を持ちながら、診断の基準を満たさない状態を「グレーゾーン」と言います。

発達障害は数字のように明確にわかる基準がないので、軽度の人は発達障害だと見極め辛い場合もあるのです。

診断基準を満たさないのは症状が軽いから、と楽観視されることもありますが、グレーゾーンの人々は基準を満たさないという理由で福祉の支援や周りの理解を得られず、苦しんでいる場合が多いです。

そのため、診断がなくても受けられる支援もあります。

それぞれの発達障害を持つ人に合う仕事

発達障害についてのいろいろをお話ししてきましたが、発達障害があるから働けない、ということはありません。

もちろん周りからのサポートが必要になることが多いですが、仕事を諦める必要はないのです。

それでもどんな仕事が出来るのかわからない、という人に、ASD・ADHD・LDそれぞれの特性を持つ人に向いている仕事内容をお話しさせていただきます。

挙げる仕事内容はあくまでも一例なので、参考程度に読んでみてください。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の人に向いている仕事

仕事を見つける前に、自閉症スペクトラム障害の特性を挙げてみます。

・他人とコミュニケーションを取るのが苦手
・他人の言いたいことや気持ちを読み取るのが苦手
・強いこだわりを持つ事柄がある

これらから考えられる、自閉症スペクトラム障害での問題は、
大人数で行動したりすることが不得意で、空気を読めない、冗談が通じない、と差別されかねないことです。

”向いているのは?”

自閉症スペクトラム障害ではコミュニケーションがトラブルのもとになりやすいと思われるので、
「他人と多くコミュニケーションを取らなくても働ける仕事」
が向いていると言えます。

また、自閉症スペクトラム障害の特性に「関心があることは何時間でも熱中する」というものがあります。

そのため、その関心を仕事として発揮できると、活躍できるかもしれません。

注意欠如・多動性障害(ADHD)の人に向いている仕事

次は注意欠如・多動性障害の特徴を挙げていきましょう。

・注意不足が多い
・集中が続かない
・思いついたらすぐに行動してしまう

これらから考えられる、注意欠如・多動性障害での問題は、
同じことをコツコツ続けることが難しく、電話対応など一人で解決しなければいけない仕事が難しい、ということ。
仕事のミスや遅刻にも気をつける必要があります。

”向いているのは?”

注意欠如・多動性障害の人は同じことに対する集中力が続かないことがトラブルのもとになりやすいと思われるので、
「その日その日で違うことを行う仕事」
が向いていると思います。

例えば旅行のジャーナリストはその日その日で違うツアーのことを考えられます。
何かを作る仕事や料理人なども、日によって工程を変えたり、扱う素材を変えたり、という違いを感じられます。

日々、試行錯誤を繰り返す仕事だと、集中力が途切れにくくなるので働きやすいかもしれません。

学習障害(LD)の人に向いている仕事

学習障害の特性は、特定の学習に関する能力が欠けていること。

何に対する学習能力が欠けているのかは人それぞれなので、
「欠けている物事を必要としない仕事」
が向いていると思われます。

例えば文字を読むのが難しい読字障害の人は、文字ではなく物事を視覚で把握するデザイナーやカメラマンが合うかもしれません。

また、読めなくても誰かに音読してもらうことで把握できる人もいるようなので、周りの人から手を貸してもらえるなら出来る仕事の範囲も広がるでしょう。

そして周りからの理解を得るためには、自分に欠けているものをしっかり認識して、自分なりに行いやすいように工夫をしたり、欠点を補う努力も必要です。

当事業所カーケルでは、様々な角度から繰り返し自己分析を行うことで、障害特性に向き合い、理解を深めたり工夫する方法を一緒に探していきます。
下記から質問等を受け付けておりますので、お気軽にお問合せ下さい。