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「エイプリルフール」の由来は、ある国の法律だった?

嘘をつくことが、いっさい許されない国がありました。
その国はかつて、口先だけの政治家、人にすり寄るメディア、自分のことだけを考える人間が増え、荒廃してしまった国でもありました。
ふたたび悲劇を招かないようにと、法律をつくり、守ってきたのです。

あるとき、新しい王様がたちました。
彼は、国をもっと良くしたいと考え、さまざまな政策を考えました。
しかし、彼はそれを国民に伝えることはできませんでした。
大臣たちが、
「いけません、そんなことを言ったら嘘になってしまうかもしれません」
「希望ではだめです。確実に実現できるものでなくては」
「国民を裏切るような結果になりうる。いけません」
と、止めるからです。嘘は悲劇を招く。そう硬く信じられていたのです。
嘘のない国は、たしかに、みな正直に生きる、まっとうな国になりました。

しかしその国は、嘘がないと同時に、夢のない国でもありました。
だれも、未来を語ることができなかったのです。
実現できなければ、嘘や、口先だけになってしまうから。

そのせいで、次第に国民は、今のことだけを考えるようになり、
将来の目標も、夢も、持つことがありませんでした。
みな懸命に働き、生きましたが、明日のことを本気で語る人は現れなくなりました。周りのみんなが諭すのです。
「馬鹿だね、できるかわからないことを言って…まわりが何て言うか」
「誰か確実に成し遂げられる人がやるから、放っておきなよ」

前を向き、1歩踏み出す人が、誰一人としていないのです。
これではいけないと思った王様は、特別に、ひとつの法律をつくりました。

「毎年4月1日だけは、嘘をついていい日とする」

あたらしい春が始まる日。この日だけは、馬鹿みたいな夢だとしても、その希望を言葉にできるようにしたい。

そんな王様の想いに応えるかのように、
嘘を禁じられ、希望すらも言えなかった国民たちも、この日だけは、
長いあいだ、口に出せなかった夢や希望、誓いなどを、
堂々と言葉にしていきました。

もちろん、ちょっとした嘘をついた人もいました。
その嘘は、夢でも希望でもありませんでしたが、
「…なんてね」の一言は、
それを聞いた人を、笑顔にすることができました。


そうして夢をもった国は、今もなお、
誠実に、着実に、未来へと向かっているのだそうです。


なんてね。
今日はエイプリルフール。

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