君もきっと会社員になるので伝えておこう【第4章】「優秀」な社員とは
会社に就職して働くこと。それは、幼稚園(あるいは保育園)に始まり、小学校、中学校、高校、大学と進んでいく、学校教育のレールの延長線上に、当たり前のように用意されている。
そのせいか、会社は学校と同じようなもの、という思い込みを持って、会社に入ってしまう人は多い。いわゆる「学生気分が抜けない」というやつだ。
けれど、言うまでもなく、学校と会社には決定的な違いがある。そのこと理解していないと、学校でも、会社でも遠回りすることになる、というのが僕自身の実感、というか反省だ。
その違いを、ものすごく簡単に言うと学校は、お金を払って行くところだけど、会社にはお金をもらいに行くところ、ということだ。
もちろん会社では何もしないのにお金をもらえるわけではなく、仕事をしたその見返り(対価とか報酬ともいう)として、お金をもらうわけだ。
「僕は公立校に通っているから、お金は払ってない」と思うかもしれないけど、君のお父さんやお母さんが税金の形でお金を払うことで、学校が成り立っているのだから、やはりお金を払っていることになる。
これをお店に例えると、学校では君は「お客さん」だったのに対し、会社に入った途端、「店員さん」になるのだ。会社に入った途端、正反対の立場にぐるっと変わる。
君が先生から、叱られてばかりいたり、勉強や部活が大変で毎日疲れ果てていているとしたら、「全然、お客さんなんかじゃない!」と思うかもしれない。けれど、学校や先生が提供する教育という「サービス」を、対価(学費、税金)を払って、受ける立場にいるのだから、やはり立派なお客さんだ。
一方で、会社に入って、君が「店員さん」になったら、時としてワガママだったり、無茶振りをする「お客さん」に笑顔でサービスや商品を販売して、代金をもらうことになるのだ。
この違い、当たり前のことのように思えるけど、長年の学校生活で染み付いた「お客さん」精神を会社に入ってすぐに「店員さん」に切り替えるのはなかなか難しい。
そのせいで、学生時代に「君は成績優秀だ!」とチヤホヤされた人が、会社に入ると優秀どころか、「残念な人」になってしまう例も多い。
これは、その優秀(頭が良い、デキると言い換えても良い)の意味にも大きな学生と会社員では大きな違いがあるからだ。
学校で優秀と言われるのは、どんな人だろう。典型的なのは、「勉強ができる人」だ。
勉強ができるとは、初めから正解が決まっている問題に対して、その正解に素早くたどり着くことができる、ということだろう。そのためには、記憶力や計算力、判断力といった頭の良さが必要だし、言葉の意味や公式を覚えたり、出題者の意図を汲み取るテクニックを身につけたりする努力も重要だ。
先に言っておくと、これは会社でもとても重要な能力だ。会社でも「正解」向かって仕事をすることは非常に多い。例えばマニュアルという「正解」に従って、製品を作ったり、帳簿をつけたりする。上司という「出題者」の意図を汲み取りながら、指示されたプレゼン資料を作る。「勉強ができる人」はこうした仕事が得意だ。
でもそれだけで優秀と言えるかというと、ちょっと違う。
なぜなら、会社という場所は、予想外の連続で、今まで正解が間違いになったり、決まった答えが存在しないような出来事も頻繁に起こるからだ。
例えば、不景気で商品が売れなくなった。ライバル会社の新製品にシェアを奪われた。災害で工場が止まった。社員が不祥事を起こした等々。
こうした想定外な状況には「勉強ができる」だけでは対処できない。目指すべき正解がないからだ。そこでは、冷静に現状を分析して、自分なりの答え(仮説)を探求して、周りを巻き込んで実行に移す能力が必要になる。
もっと言えば、想定外な状況が起きる前から、現状の正解を疑って、もっといい答えを探す姿勢が大事だ。
それは些細なことだっていい。これまでやってきたからという理由で開かれる無駄な会議。10年以上変わっていない書類のフォーマット。未だに使われるファックス。会社にはそういう「怪しい正解」がたくさんある。
会社においては、正解に従順な優等生よりも、いちいち正解を疑う、問題児でありたい。これは、会社員1数年目にして思う、会社員1年目の僕自身に伝えたいことでもある。
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