「民藝の100年」展に行ったら、柳宗悦の敏腕プロデュース力と、大人たちのアツき挑戦を感じた
国立近代美術館で開催中の「民藝の100年」いってまいりました!
最後にいつ買ったか記憶にないぐらい、久々に図録を買いました。というくらい個人的に色々面白かった展覧会でした。
個人的な面白かったポイントをご紹介します!
1.キュレーターの方の意志を感じる構成と内容(文字多めなのもよかった)
今回は、民藝運動の提唱者である柳宗悦さんに対する挑戦する姿勢があったそうです。それも、東京国立近代美術館が開館した当時(1952年)、柳宗悦に痛烈に批判された過去がある。
「東京↔地方」「官↔民」「近代↔前近代」「美術↔工芸」というように、東京国立近代美術館は柳さんが対抗しようとしたものが名称につくからです。
柳さんは民藝運動を通じて、地方に眠る日常の生活道具の中に美を見出し、社会性を持たせることを目指していたわけですが、一方で近代美術館が提唱するものは相反する関係にある。
今回開催する美術館で柳さんのあえて手厳しい言葉をのせ、それに対する答えとしての展覧会だっということもあり、展示の構成にも企画者の熱い思いを感じました。
今回の展示は、民藝運動の過去と今の社会の流れの「類似点」にフォーカスが当たっていたようにも思います。
2.民藝はエシカルだった
柳さんたちが民藝運動を通じて行ったこの辺は、今に通ずる流れと類似していました!
・カジュアルなツイードスーツと「草木染」のネクタイが民芸の人たちの正装だった。
・柳さんが麻袋を気に入っていた。民藝の会合では大勢が麻袋をもっていた(柳さんが流行らせた?)
・屑繭(不良まゆ)を使ったににぐりネクタイを作った(これまたかわいいネクタイ!)。模倣品が出るほど流行った。
「草木染」「麻袋」「アップサイクル」といったことは、今のサステナブルな流れと共通する部分がありました。
3.柳さんは思想家であり、マルチクリエイター
柳さんは思想家的な印象が強かった(小難しいこと言ってるオッサン)ですが、実はプロダクトデザイナー、編集者、キュレーター的な仕事も多数されており、柳さん、スーパークリエイターすぎました。w
『民藝は「編集」する』という章が職業柄かもしれないですが、個人的に一番面白かったです。
プロダクトデザイナーの顔
「デザイナー柳宗悦」という中で展示されていたものです。
砂糖挟みの商品の修正指示書のラフスケッチがあるんですが、個人的に展覧会イチ!見ごたえありました。
「先が細いから太らせて欲しい」といったことや、サイズの寸法も細かく指示されていたりして、細かなディティールのこだわりを感じました。書簡のやりとりも時代を感じたり。。現代だったら、メールでのやりとりになっているので、このように展示されるような代物ではなさそう。。
敏腕編集者の顔
「トリミングと技術」という中で展示されていたもの。
・商品を図版に載せるときは、徹底してトリミングにこだわっていたそう。全体図を載せるのではなく、強調したい模様の部分をトリミングして掲載。柳さんが何を美しいと感じて切り取って提示して見せたのかがわかる一例。
・「写真は須らく実物よりも美しくあるべきだ」と語っていた柳さん。こちらは編集の仕事をする私にとって、わかりみが深い言葉なのですが、商品を美しく魅力的に見せるために、写真技師への指示だし0から10まで細かくされていたこともあるとか。今だとカメラマンさんへの補正を細かくする感じでしょうか。
・民藝フォントに拘っていた。柳さんの書道も飾られていましたが、とても達筆な方でした。柳さん直筆のレタリングのスケッチもありました。今だとイラストレーター、デザイナー的な感覚を仕事ぶりなのかもしれません。
日本の地方に眠る伝統的な手仕事を一つの文化にした「民藝運動」
色んなメッセージ性を感じた展覧会でした。
日本の民藝文化を海外に積極的に働きかける動きとか、衰退産業を仕組みで盛り立てようとか、民藝でライフスタイル全般をトータルにデザインしていこうとか、 民藝運動の動きが様々に波及していたことがわかりました。
日本の点々バラバラな手仕事を一つの文化「民藝」に昇華させた過程が垣間見えました。何より民藝盛り上げるぞ!っていう大人たちのアツいものを感じましたね。笑
柳さんが民藝品たちのどういう点にひかれ、収集していき、どういう手法で発信していったのか、柳さんや民藝運動に関わる人たちの意志がわかる展覧会だったなと。
何よりキュレーターの人の民藝愛(違う?)を感じました。笑
興味を持ったら次におすすめ民藝案内
私自身、何度も足を運んでしまう先には民藝あり。民藝だから足を運んでしまうのか、味と雰囲気が好きだからなのかはわかりません。。 (卵が先か鶏が先か的な感じですが。笑)
・京都の鍵善良房
民藝と縁深かったお店。今は異なりますが、元々は木工家として人間国宝になった黒田辰秋氏の螺鈿製の器をくずきりの器に採用されていたそう。 店内を入ると、黒田辰秋氏の槻造の飾り棚の家具が壁一面を埋め尽くしていてそれまた圧巻。くずきりも弾力があって、喉越しもよく、大好きです!
・銀座のしゃぶせん
器、箪笥、調度品に至るまで民藝空間が楽しめる店。一人ずつしゃぶしゃぶ鍋が用意され、デザートにはくずきりが食べられます。(ご飯、麺も食べ放題でコスパよし)銀座ランチはここと決めています!
系列店のざくろは展覧会でも紹介されてました。
お店ではないけど、副次的な情報として可愛い食べる民藝を知りたいなら・・・
・『民芸お菓子』
料理家の福田里香さんのご著書。民藝運動に関わっていた芹沢銈介氏、柚木沙弥郎氏のパッケージデザインが楽しめるお菓子や、民藝に関わりのある郷土菓子などが紹介されています。これを見ながら旅に出るのも楽しいものですよ。
福田さんのお父様の福田豊水氏が民藝運動に関わっていたこともあり、生まれた時から民藝が身近にあったのだそう。福田里香さんのお菓子愛が個人的に好きです。平野紗季子さんのpodcast「味な副音声」でクッキー缶をアイドルに例えているところが、もう秀逸でした!
個人的な話ですが以前、民藝の本を作ったことがあり、松本民芸家具の椅子を作る工房を見させていただいたり、民藝と共に暮らす方を取材させていただいたこともあり、民藝には思い入れがあります。
それがきっかけで民藝旅をして、岩手の滴生舎に行き漆のコップを惚れちゃってお持ち帰りしたり、同じく岩手の盛岡の光原社に行ったり、青森買ったこぎんざしのキーケースは今もなお現役選手だし、大分で小鹿田焼の産地に行ったりなど、旅してたころが懐かしくなりました。
次は鳥取のたくみ工藝さんに行ってみたいです!
個人的にツボにハマった展覧会で熱くなったしまいましたー笑
この図録は見ているだけで楽しく今もなおパラパラめくって見てます。ぜひこれからいかれる方は、民藝の100年がぎっしり詰まった図録をお買い求め頂ければと思います!笑
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