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播磨陰陽師の独り言・第447話「春はもうすぐ」

 二月八日は針供養の日です。針仕事の人々が針のろうねぎらって供養する日です。門司では淡島神社で行っています。
 わが国では色々な物を供養しています。鯨などの生き物は当然のこと、針や人形や筆などの供養も行われています。鯨は江戸時代から供養しているそうで、その頃から捕獲したすべての鯨に戒名を付けて供養しています。
 和歌山の淡島神社では、たくさんの日本人形が並べられ供養されています。あまりに人形の数が多いので、少し不気味でした。
 針供養は、着物を縫ったりする人達の儀式です。使った針を豆腐に刺して寺や神社で供養します。着物を縫う時は一反の布を八等分にします。これには意味があって神事として着物を縫うためです。縫い目にも意味があって、背中の縫い目は、悪い霊が入ることから守ります。
 ちなみに神事に使う白い着物のことを〈白衣〉と呼びます。白衣の背中は5センチくらいですが、縫われていない部分があります。ここから霊が行き来すると信じられているので、出入りしやすいように開けているのです。赤ちゃんの着物は背中に縫い目がありません。背守せもりと言って、ここに、わざわざ飾り縫いで縫い目をつけているものもあります。
 お医者さんが着る物を〈白衣〉と呼びます。これは、洋服が入って来るまで白い着物を着て医術を行っていたからです。その頃は、着物と呼ぶより作務衣のような感じでした。作務衣と言うのはお坊さんの着る作業着のような着物のことです。
 昔は医者を〈博士〉と呼んでいました。今でも〈医学博士〉と呼ぶのはその名残りです。この〈博士〉と言うのは陰陽師のことです。古い文章にある博士は、皆、陰陽師のことです。医術も陰陽師の仕事でしたので、こう呼ばれていました。
 教授と呼ばれる役職は神職と僧侶のことでした。大学制度が出来た時、各々〈博士〉と〈教授〉と呼ぶ役職が出来ました。それまで知られていた教授職などが、それぞれ新しい大学制度の役職となったのです。
 さて、二月九日頃から七十二候で〈黄鴬睍睆うぐいすなく〉と呼ばれる季節がやってきます。うぐいすの別名は春告鳥はるつげどり。この鳥が鳴くと春が来ているのを感じます。鶯は鳴き方を練習する鳥なので、まだ、この頃に生まれた鶯は下手鳴きをします。段々と上手く鳴くようになるか、すでに上手くなっている親鳥の鳴き声を聞くこともあります。下手に鳴く方が、
——鶯、頑張れ。
 と応援したくなって好きですが……。

 今夜も火曜日夜九時からクラブハウスによる配信があります。配信時間は一時間で、後半は質問やおしゃべりを楽しみます。朗読とそれに続く質問コーナーは『陰陽師の嫁/W&M Club』で……では、よろしくお願いいたします。

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