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烏梅(うばい)を知っていますか?

烏梅を知っていますか?
烏?からす?からすうめ?
ちゃうちゃう、”うばい”と読みます。

この記事は、多くの人にとって、初めて聞いたであろうこの”烏梅”に関するお話と、烏梅農家さんが取り組むクラウドファンディングについてのお話。

烏梅とは、梅の実を伝統の製法で燻製にしたもので、漢方、染物、口紅の材料として1300年もの昔から使われているものである。梅の名所として有名な奈良県月ヶ瀬では、約700年前から烏梅作りがはじまったと言われている。

烏梅は、主に紅花染めの媒染料として使用されてきた。紅花は美しい紅色を生み出す植物だ。しかし、その色素の99%は黄色で、紅色は残り1%でしかないのだという。花そのものの色を思い浮かべてみても、紅色ではなく黄色だ。しかし、古来の人々は、貴重なわずか1%の紅色を愛し、尊び、紅花からとれる色として”紅色”と名付けたのだろう。その紅色を美しく発色、定着させるためになくてはならないのが、烏梅なのだ。

しかし、近年では、紅花は安価な化学染料に、媒染材としての烏梅は安価なクエン酸にその立場を奪われ、紅花、烏梅ともにその需要は急激に減ってしまった。けれど、皇室行事や伊勢神宮の式年遷宮には、必ず伝統製法で作られた紅花染めを用いた調度品が使用される。そうした特別な物を染めるための伝統製法を守っている数少ない染色家たちは、烏梅を使用しているのだ。

京都の有名な染織工房”染司よしおか”でも、この烏梅を使っているようだ。間もなくはじまる奈良の伝統行事、東大寺の修二会(しゅにえ)のおりに、十一面観音にささげる椿の造花、いわゆる”のりこぼし”を作るための和紙は、代々よしおかで染められていて、これにももちろん、烏梅が用いられている。ちょうど今頃、練行衆のお坊さんたちが、せっせと”糊をこぼしながら”造花を作っている頃だろうか。

最盛期には、月ヶ瀬に400軒以上もあった烏梅農家だけれど、現在残っているのはわずか一軒のみ。しかも、それは月ヶ瀬で残り一軒というだけではなく、日本全国で見ても最後の一軒なのだそうだ。その最後の一軒が梅古庵さん。

世の中が移り変わり、次々と同業者が消えていく中、実直に先祖代々伝わる烏梅作りを守り続けている。しかし、限られた需要しかない中で烏梅作りを続けていくのが簡単なことではないことは想像に難くない。現存の烏梅農家が梅古庵さんしかないことが、如実にそれを物語っている。最後の一軒がもしもなくなってしまったら、それはつまり、月ヶ瀬の700年に渡る烏梅作りの伝統が失われ、それだけでなく、日本古来の紅色を再現する術も失われてしまうことになる。古から伝わる美しい伝統がまた一つ、消えゆこうとしている。

いや、その伝統の灯を消さんとして、梅古庵さんは健闘されているのだ。染料用としてだけでの烏梅作りが難しいのであれば、その用途を他にも見出すべく、知恵を絞っておられる。それが今回のクラウドファンディングで取り組んでいる”紅花と烏梅を使った口紅の開発”だ。

ものすごく正直なことを、誤解を恐れずに言うならば、”口紅の開発”自体は、さほど重要なことではないと私は思っている。烏梅作りという伝統技術、文化を後世に残していくことが、何よりも大切なことだ。しかし、染料用としてだけでの烏梅作りでは立ち行かない、とならば、ほかの用途を見出していくしかないのだろう。その一つの可能性として”口紅”があるのだろう。紅花と烏梅のみを使った口紅ならば、今はやりのヴィーガンコスメという切り口でも広めていけるんじゃなかろうか、などと勝手に考えたりもしている。

ともあれ、烏梅作りという伝統を残していくために、このクラウドファンディングが、まずは烏梅の存在を多くの人が知る機会になることを、さらに、文化継承に繋がるアイデアが生まれる機会になることを、期待している。このプロジェクトを支援しないとしても、できれば一度その詳細を見て、まずは”烏梅”とはなんぞや、ということを知ってもらえたら、嬉しい。

ちなみに、私は梅古庵さんとは何の関係もない。奈良にいた頃、月ヶ瀬の梅を見に行った際に訪問したことはある。たったそれだけのご縁にもかかわらず、こうして宣伝している理由、それは私の実家の家紋が梅だったから。私お得意の関係妄想によって、私には梅に関する布教宣伝活動をする十分な理由があるのだ。

もうすぐ梅の花咲く季節。日本の名勝にも登録されている月ヶ瀬の梅林を愛でに、ちょいと出かけてみませんか。そして梅古庵さんに立ち寄って、烏梅についても知ってみませんか。

クラウドファンディングのリンクはこちら

って…梅古庵さんのHPへのリンクも、クラファンへのリンクも、なぜか貼れない…どうして…😭😭😭
気になる方は、とりあえず"梅古庵"でググッてみてください!!!