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cruising

月曜日。久しぶりにブログを更新しようと思って書き始めたが、如何せんカロリーが高い。そういや文章を書くこと自体が久々だ。書くカロリーが高いと感じるときは決まって肩に力が入っていて、格好つけようとしているときだ。今日も肩、あがってる。いやしかし、上がったままで構わない。2ヶ月ぶりの更新だ、気合い入れて書きたい。という訳で少しずつ書きながら感覚を取り戻していった。フィットする言葉が見つかるのを気ままに待って、ひたすら書いて消してを繰り返す。文章を書くことは、世界地図のパズルと似ている。モロッコを南米に、カリフォルニア州を北欧にといった具合に自由な試行錯誤。消してはリライトして…それは、アジカンだ。

子どもの頃、パズルが好きだったと聞いた。毎回、最後の1ピースを服のなかに隠しては惚けていたそうだ。はよ完成させたらいいのに、なんだこいつは。と今となっては思う…いや、流れのままにペンを走らせてしまったが、実際は見事に思わなかった。いい歳した今でもおそらく隠すだろう。完成しちゃったらつまらないよなあ、クレヨンで海に大陸でも作っちゃうか。自由を求め、時間を延ばして何千キロもの旅をする。あの頃から僕は決まった答えが嫌いだったのかもしれない。それなのになぜ理系を選んだのかは謎だ、アホなのだろう。とにかく今は白でも黒でもないものに惹かれている、コトバが好きなのもそんなとこだろう。世の中には「これはこう」が溢れ返っているというのに、頭の中ではいつだってハテナが飛び交っている。見たことのないパラダイス。

ところで最近、多くの人に読んでもらいたいという一心で苦手なSNSをようやく始めた。「トンガリ、少しは時代に乗ることを覚える」の巻。にしてもやっぱ嫌いだ。早速、白黒はっきりしたがる風潮に遭遇した。乗れないっす、そんなクソみたいな風や潮。「白だけしか踏まないルールね!」そう言って横断歩道でピョンピョン跳ねる子どもたちの未来はきっともっと自由に満ちていて、だからこそカオティックで、最高に訳わかんない時代なんだろうなあ。おじさん、生きてる間は君たちと冒険します。メジャーリーグ観たいし、ベルリンで昼間からビール飲みたいし、イビサ島のレイブだって行きたいし。一緒に地図をつくろう。死に際にパンツからラスト・ピース取り出すね、汚いね。一体どんなコトバが出てくるのだろう、ここだけは汚れていてほしくないなあ。


火曜日

明日のバイトに行かなくて済む方法を模索して終わった


水曜日。バイトに向かう。無心の9時間、なんやこれ。帰宅する途中、「Excuse me.」と声を掛けられた。写真を撮ってほしいとのことだった。オッケーサンキュー、イヤ、エ、ギャクニ、オッケー?「焼きとん80円」の前で大丈夫なの。もう少し進めばスクランブル交差点ですけど。それに忠犬ハチ公さんもいますけど。わからん…焼きとん80円の看板に惹きつけられる理由がさっぱりわからん。まあいいか、なんか笑ってるし。

コインランドリーで洗濯物が乾くのを待っていると喉が渇いた。お金はないけど、ビールが飲みたい…ええい、金欠なんて知らん。必ずやロマンを補充して帰宅いたします。それにしても、もうすぐ夏が来るなあ。スッと鼻先を掠める空気が初夏の匂いだ。いや、気のせいかもしれない…気のせいだ。だってそのまえに梅雨が来るのだもの。雨、雨の日々。たまには梅でも降ればいいのに。


木曜日。先週の森道市場で日焼けした鼻がまだ赤い。当日は見事に鼻だけが赤くなった。酔っ払いのような顔つきに一瞬戸惑ったが、これには理由があった。僕の鼻は真ん中辺りがちょっと高い。小さい頃、両手に抱えた1.5リットルのカルピスとコカ・コーラに揺られていると駐車場で転けたことがある。そのときにカクカクしたブロックで…この先も赤い。骨折れて、鼻高くなる奇跡が起きたのだ。今週はこのうっすら赤くなった鼻が恥ずかしくてマスクをしていたのだが、こんなときに限って突然の会食が入った。マスクを外すのが憂鬱だ、正確にはそのあとの会話が面倒だ。

先日、日焼けしまして。ええ、完全に油断しましたね。いや〜、お恥ずかしい限りで…マスクを外した瞬間に自分から切り出すべきだろうか、それとも何事もなかったかのように平然を装っていようか。3日経って少しはマシになってきているのも事実、凌げるかどうかは微妙なグラデーションだ。うーん、やっぱり言っちゃおう。小さいことを気にしながら食事して味がしないなんてのは御免だ。そう思い、鼻にもきちんと挨拶させておいた。コンニチハナ。その後はなんにも考えず、愛知で食べ損なったエビフリャーを美味しくいただいた。

帰り道、駅のホームでバーンッとぶつかって押し合いをしている人たちを見かけた。うわ、すごい。アンガールズのジャンガジャンガ並に腕広げてるやん。「なんやの!」と怒号を飛ばしている。そのイライラはお互いに「ごめん」と言えばむしろ悦に入ると思うけどなあ。うんうん、言わんよねえ。言えないよねえ。電車に乗ると、若者が木のスプーンでプリンを食べていた。素晴らしいバランス感覚じゃないか。愛のメガネをかけてごらんなさい、色んな人がいてトーゼンさ。気楽に行こう。


金曜日。会社員の友人と飲みに出掛けた。新卒1年目のストレスで胃が痛いという彼と、帰宅すると執筆の締切に追われる僕はリンゴジュースばかり飲んでいた。それにしても会社員の話を聞くのが好きだ。自分には訪れないであろう瞬間がたくさん会話に登場するからだ。今日は友人が初の合コンに行ってきたという話を聞いた。「合コンなんてクソ」と一言だけ放っていたが、実際は「クソッ」だったかもしれないと想像する。ほかにも社内の話、研修の話。知らないことばかりで聞いていて楽しかった。それにしてもいいなあ、合コン。つまらないの連続のなかに、どこか面白いが紛れている気がするのだ。

合コンに行くところを妄想する。最初は自己紹介から始まるだろう。職業は左から商社マン、公務員、フリーター。年収はキラキラ、安定、ドロミズ。服装はスーツ、スーツ、シャツ。「何してる人なんですか?」と訊かれたらどうしよう。ダメだ、わからん。文字を…こ、言葉が…文章を書いて…モゴモゴしているときっと言われる。「小説書いてるんですね!すごーい!」なんとなく返ってきそうな返事ランキング第1位は何度妄想してもこれだ。うーん、難しい。テーブルに置かれた訳の分からん棒のお菓子をひとりポリポリ食べることになるだろう。全然面白くないではないか、クソッ。妄想から抜け出し、居酒屋からも抜け出して、唐揚げ弁当とエナジードリンクを買って帰宅。カタカタとキーボードを打ちながら朝を迎えた。こういう日に限って天気がいいのは何故だろう…カーテンの隙間から漏れる光に目を瞑り、布団にダイブする。いつか合コンに行く機会があれば胸を張って本を渡そう、そう思いながら夢を見に行った。


知り合いの編集者の方がやっているイベントに遊びに行った。久しぶりに音の鳴る場所で揺れている、締切もなんとか間に合って最高の解放感だ。ミラーボールの下で「踊る」。今年の抱負は物理的にもぶっ刺さっている。Shazamとジントニックで両手の塞がる今夜はどこまでも空っぽになれた。ゆらゆらと終電に乗り、最寄り駅へ。安心できるいつもの場所で軽く数杯だけ飲んで帰宅、楽しい土曜日だった。それと引き換えに二日酔いで動けなかった翌日は、明日からまた頑張ろうと思うだけの平凡な日曜日。平凡だけど、きっと必要。最近はそう思えるようになってきた、雨だったからかもしれない。

2024.05.27~06.02


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