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青臭さすぎる正義感を、半泣きで絞り出す木村拓哉がやっぱり好きです(『HERO』レビュー)

検事志望の増加に一役買ったとか買わないとかいう名作ドラマ『HERO』。第1シーズン、松たか子の方を完遂しました。面白かった!

一話完結のパッキリした気持ちの良いつくり。でも全話を通して描かれるのは久利生(木村拓哉)と雨宮(松たか子)の恋模様、検事仲間とのコミカルな触れ合い。今では王道パターンだけど、やっぱり王道を作り上げてきた側の作品は面白いですね。

何となく「キムタクドラマ」としての印象が強くて、実際そうなのだけど、主人公は雨宮なんですね。久利生を適当な奴だと軽蔑したり、見直したり、がっかりしたり、ドキドキしたり、追いかけたりする雨宮というか松たか子がフレッシュでいい!「堅物女子がぷんすかしていて愛らしい」を見事に体現しています。

このドラマ、妙にアップが多いですよね。今やなつかしきブラウン管のフレームサイズに、どどっと寄った役者のアップがめちゃくちゃ多い。久利生のアップは雨宮の目線であり、雨宮のアップは久利生の目線であり。ポップでビビットな演出が作品全体のテンポ感にも影響してるように思います。

なかなか絶妙だなあと思うのは、中村美鈴(大塚寧々)と芝山貢(阿部寛)の不倫関係が普通に流されたまま終わること。完全なるサイドストーリーとして始まり、サイドストーリーとして完結さえしない、断罪も何もないほっときっぷりが爽快でした。あ、そういえばこいつら、と思い出す前に普通に最終話終わります。何となくHERO以降の阿部寛はだいたい堅物なイメージ。今見直すとチャラ男っぷりがなかなか新鮮で面白かった。

そしてやっぱり木村拓哉という俳優が好きです。とはいえお仕事モノになると『ロンバケ』『眠れる森』的なナイーブさから離れてしまうから一番好きなところは見られないんだけど。でも第10話で一気にタンカを切る久利生はかなりぐっときたな。めちゃくちゃ青臭い正義を、体の奥底から吐き出すときの演技、本当に素敵だと思う。普段ちゃらんぽらんで怒らない人が、「これだけは本当に許せないんだ」が込み上げてしまったときのコントロールの利かない感じ。かっこ悪くも半泣きになってしまう感じ。そういうのが一瞬でじわっと出てくるからすごい。確かにあれを見たら木村拓哉に「正義のお仕事モノ」役を与えたくなってしまうのも分かる。でも同じような役ばかりにさせてしまった功罪もあるよね、なんて考えてしまいました。

メインの脚本は福田靖。2018年秋からの朝ドラ『まんぷく』を担当しています。と繋げてああなるほど、と思うところもちょっとあり。2019年現在だったらちょっとないなって表現、『HERO』には結構あるんですよね。雨宮はなかなかのセクハラを受けているし、女らしいとか女らしくないとか、そんなエプロン着た美人にご飯作られたら男だったら何だ〜とか。まあこのご時世わーわー言う人がいそうなちょっとした台詞だったりシチュエーションだったり、あるわけです。『まんぷく』で批判の的になった、「あの子は美人だあの子は違う」問題と繋がってるなと。「あの頃は笑えた」ネタをそのまま持ってきちゃっている印象はありました。でも確かに「あの頃は笑えた」んだよな。時代って難しいけど面白いです。

と、いいところは沢山!だけど、「一話完結×謎解きモノ」で括ると私の中では『踊る大捜査線』が引き続きトップだな!構造が同じなんですよね。『HERO』の方がより、音楽もうまく効いて「謎解き」部分に重きをおいて、爽快感を全面に出しているイメージ。対して『踊る』は一話完結でありながらも、印象に残すのは色んな人間劇。どっちが好きかってところですね!



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