中岡フェニックス

芸人、作家、会社員、アマチュア演芸イベント主催、ドアーズ。何かあればお気軽にご連絡下さ…

中岡フェニックス

芸人、作家、会社員、アマチュア演芸イベント主催、ドアーズ。何かあればお気軽にご連絡下さい。

マガジン

  • 青春ラブアンドコメディ

    お笑いが好きな若者たちの青春群像小説です。

最近の記事

第14話 C組

「で、アンタはなんで鉄アレイ持ってるん?」 木瓜島高校のお笑い同好会、C組に所属する2年生、金原ユキノがケンタに向ってそう言った。 「自主トレを兼ねて見学をしたいからです」 「それは・・・ボケ・・・ってこと?」 ユキノが怪訝そうな顔をする。 ユキノは少しぽっちゃりした体形で、女性ながら言葉に迫力がある。 C組の使用している空き教室の入り口で、ケンタに立ちはだかるようにユキノが立っている。 「いえ、僕、柔道部に入ってまして、今日は自主トレの日なので」 「ふぅん

    • 第13話 マクドナルド

      「まあ別にセカキャが悪いわけちゃうねん、実際上手いし。でもあんな顔いじりに頼ってたら、自分のファンの前でしかウケへんようになるし、実際今日もちょっとウケすぎてたやん?」 ズズー 「セカキャが受かるんやったら、鍛冶牛も受からせないとおかしいねん。いや、ほんまヨリモトの外やったらどっちがウケるねんって話やし」 ズズー・・・ズズズー ケンタはなくなったシェイクをズーズー言わせながらユリの話を聞いていた。 「実際MCがファイ芋やったってわかった時から嫌な予感してたんよ、

      • 第12話 dashヨリモト

        日本有数のお笑い事務所、ヨリモト興業。特に関西では圧倒的な力を誇り、マツタケ芸能を除いて対抗できる事務所がないと言われている。そのヨリモト興業が抱える漫才の殿堂『なんばグランド華星』、いわゆるNGKの向いに構える若手芸人の劇場、dashヨリモト。 ヨリモト興業のお笑い芸人スクールを卒業した駆け出し芸人たちが日々オーディションを受け、舞台出演を賭けた入れ替え戦を繰り返し、売れる日を夢見て腕を競い合っている。素人に毛の生えたような芸人がいるかと思えば、芸歴2年目で年末の漫才

        • 第11話 オフェンスディフェンス

          -ザッ・・・ザッ・・・ザッ・・・ 後ろから聞こえてきた足音に振り返らずにケンタが言った。 「ヒロか?・・・・」 「おう・・・聞いてたん、バレてた?」 「まあな、さすがに俺もそれぐらい、ヒロの性格わかるようになってきたよ」 「そうか・・・えーっと、その、漫才コンビの話なんやけどさ」 「うん」 「えーっと・・・そのさ・・」 「解散しよか」 「え?」 解散を切り出したのはケンタの方だった。 「今までごめんな、付き合わせてもうて」 「いや、別にそんなつもり

        マガジン

        • 青春ラブアンドコメディ
          14本

        記事

          第10話 山影ユリ

          西校舎裏の藤棚は、運動場や食堂から遠いため、あまり生徒が訪れない。 それでも5月までは綺麗な藤の花が咲くこともあり、2つしかないベンチが埋まることもあるのだが、6月に入り花が枯れてしまうと、蒸し暑さも手伝って、ほとんど生徒が訪れなくなる。 そんな藤棚にケンタは一人で立って、まだ見ぬ手紙の主を待っていた。 ベンチに座って待っていたら、偉そうな感じが出るかもしれないし、立っている方が声もかけやすいだろう・・・そんな意味のわからない気の使い方をしながら、葉だけになった藤棚

          第10話 山影ユリ

          第9話 手紙

          「ウィス」 「おはよー」 「どうやったよ?文化祭の夜は?ちゃんと貞操は守れたんか?」 「変なこと言うなや。別に普通に焼肉いっただけや」 「そうなん」 「でも良かったで、全部先輩たちがおごってくれたし、ネタもめっちゃ褒めてもらえたし」 「へぇ」 「その後、先輩の家いって、去年の全日本柔道のDVD見ながら、良い柔道とはなんぞやという討論会になったのはきつかったけど」 「なかなかやな」 「先輩、パジャマも道着やったし」 「それは逆に柔道を冒涜してない?」

          第8話 とんこつパンチ

          「どーもーとんこつパンチです!」 「ちょっとちょっと何してるん?」 「え?何がですか?」 「出てきて2分は黙ってないとあかんねんで!」 「そんなルールないわ!さっきのコンビが黙ってただけや!黙ってる間、見てる人ただただ不安になっただけやないか!」 -ドッ 出てきてすぐにとんこつパンチが爆笑を取る。前のコンビを中村がいじり、織田のツッコミが笑いをかっさらっていく。それを見ていたケンタがつぶやく。 「すごい、出てきてすぐに空気を変えた」 「でもあれ、誰でもでき

          第8話 とんこつパンチ

          第7話 雨の岩戸

          「めちゃくちゃウケてたやん!やるなぁ!」 ステージから降りてきたケンタに織田が声をかける。 「ありがとうございます!織田さんが緊張ほぐしてくれたからです!」 「ははは、いやいやちゃんとネタ面白かったよ!」 「でも見てる生徒のテンションすごいですね!めちゃくちゃ盛り上がってくれてやりやすかったです」 「そうやな、なんか今年はいつになく盛り上がってるわ。なんやったらお前ら出てくる前からウケてたもんな」 「それはいいすぎですよ!」 ウケて気分が良いからか、いつにな

          第7話 雨の岩戸

          第6話 文化祭

          It better be worth it…♪ So much to die for…♪ -ワーワーワー!!!! 知らない洋楽がフェードアウトし、生徒の歓声が大きくなる。 ケンタ達が通う木瓜島高校の文化祭は2日間行われ、最終日の夕方から体育館のステージで有志による出し物が行われる。学内バンドのライブやダンスが行われ毎年大きな盛り上がりを見せる。 「あ、ヒロ君~!」 「お疲れアイカちゃん」 ダンスを終えたアイカがステージから降りてくる。 「めちゃくちゃカッコよ

          第5話 京本先生

          「お願いします!この通りです!」 「あかん」 「そこをなんとか!お願いします!」 「何度言われてもあかん!もう顔あげろ!土下座なんてしていらんのや!」 「そこをなんとか!この通りです!」 「やめろって・・・」 職員室の入り口でケンタが床に頭をこすりつけている。それを制しているのは文化祭有志ステージの責任者であり生活指導の教師、京本だ。 京本は50代後半、小柄で白髪だが、筋肉質で姿勢が良く、声に迫力があり、武道の達人のようなオーラを身に纏っている。ヤンチャをし

          第5話 京本先生

          第4話 森アイカ

          「はいこれ」 「うぉ~ありがとう!」 ヒロから手渡された台本を見て、ケンタが喜ぶ。 「なあ、次から台本、LINEでやり取りせん?なんか紙に書くのめんどくさいわ」 「あ~、え~けど、俺はちょっと紙に書けへんと集中でけへんから、そっからLINEに入力して送るわ!」 「変なこだわり・・まあええけど」 夜の高今池公園。ケンタとヒロがネタ合わせをし始めて今日で1ヵ月。文化祭は2週間後に迫っていた。 「めっちゃおもろい!ええやん!コレ!」 「ほんまに言うてるん?」

          第4話 森アイカ

          第3話 高今池公園

          「では今日の稽古は以上で終了!あざしたっ!」 「「「あざしたっ!!!」」」 5月、柔道場に大男が5人。むせかえる汗のにおい。誰一人としてこの柔道場に好んで立ち入るものはいないだろう。5人の中には古賀。そして、ケンタの姿があった。 「いや~岩山くん、ほんまに君が入部してくれて良かったわ」 「いえ・・・」 「どう?これから親睦を深めるのも兼ねて、焼肉でも食べにいけへんか?」 「いやあの、すみません、この後は予定があって・・・」 「そうか、ほな明日行くか!?」

          第3話 高今池公園

          第2話 尾崎ヒロ

          「なあ!?俺と一緒に漫才せぇへん?」 「はぁ?」 始業式が終わり、教室を出たヒロをケンタが呼び止めた。 「先生が、うちの高校の文化祭は6月にあるって言うてたやろ?そこで俺と一緒に漫才せぇへんか?」 「・・・そういうのってもっと仲良くなってから誘うもんちゃうの?」 「なんでや?そんなんしてたら6月までに間に合わへんやん!」 「めっちゃグイグイ来るやん。その体形でグイグイ来られたら別の意味で怖いわ」 ケンタの身長は182cm、体重は100kgを超える。対してヒロ

          第2話 尾崎ヒロ

          第1話 岩山ケンタ

          昼下がり、いつもは休みのはずの土曜日の特別受業をどこか浮ついた気持ちで受ける小学生達。今年の春に入学したばかりの岩山ケンタもソワソワしながら受業が終わるのを待っていた。 「はい、じゃあみなさん、さようなら!」 「「「「さようなら!」」」」」 HRが終わるとケンタはすぐに教室を飛び出し、家へと急いだ。 「ただいま~」 「おかえり~小学校どない?だいぶ慣れた?」 台所の方から母の声がする。 「おん」 ロクに返事もせずケンタはすぐにお茶の間にむかいテレビのスイッ

          第1話 岩山ケンタ