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"普通"にだって心地よさはあるんだ

ここ最近は混じり気のない関係について考えている

子ども時代の僕は「周りと違う自分」へ畏れを抱き、懸命に”普通”であろうとしていた

物心ついた時から自らの一部となっていた、火傷の手術跡という『異質さ』を、僕はなかなか受け入れることができなかったのだ

長年を同じ仲間で過ごした小学生時代には、その異質さをいじられたり、からかわれることもあった

だけれど、時に熱を帯びてぶつかり合い、時に冷たさを共有し合うことで、「僕には火傷の傷跡がある」といったその異質さは、皆の日常に溢れている飲料水のように”普通”な存在へと移り変わっていった

そうした過程を経て、水と油のようにけっして混ざり合うことのない相手もハッキリしたけれど、一方で混じり気のない関係へと仲が深まった友達もいて、心地よい普通を手に入れることもできたという気がしている

混じり気のない関係とは、異なる者同士が合わさって共に魅力を引き立たせ合うような関係のこと

・・・しかしその心地よさも、中学校へ入学した途端に終わりを告げた

1学年3クラスの小学校から1学年7クラスへと生徒数が増え、また新たな”普通”を求めて、ふわふわと漂い出したのだ

思春期を迎え、「周りからどう見られるか」に対してよりいっそう敏感になっていた当時の僕は、新たな普通を探し求めた

それを模索している時に訪れた、初めてのプール授業

中学校に入ってから初の上半身裸になるシーンで、周りからの視線を痛いほど感じてしまった

「お前は普通じゃない」と言わんばかりの、そんな冷たい視線を

今にして思えば、火傷の跡を見たみんなの心中は「あれは何だろう?」というようなただの疑問であったり、「何となく見た目が気持ち悪いなぁ」というような、未知との遭遇からくるごく自然な感想だったんだろうなぁと思う

・・・この一軒があってから、普通であることを求めていた僕は、傷跡を頑なに隠すことを決めたんだ

悩むことがあっても誰に相談することもなく、21歳くらいまでそれを抱えてきたんよね

中学生の頃の僕が、もし傷を周りにさらけ出していたらどうなっていたのかは、正直分からない

しかし傷を隠し続けることで、その傷はますますアンタッチャブルな存在になり、『隠していることが普通になってしまった』のは確かだ

空気みたく痛みはそこへ存在しているのに、触れた実感は誰にも得られない

僕は、そんな空虚な普通を望んでいたわけじゃない

きっと当時の僕が心の底から望んでいた普通とは、『心地よい普通』だったはずだ

そこに存在していることが当たり前だけれど、時に温かな潤いを与え合い、時に冷たく身を引き締め合う、そんな水のように心地よい普通の関係を、周囲と築きたかったはずなんよね

例えば、お風呂がぬるくて1℃温度を上げたら心地よくて、それが普通になっていくけれど、気温が1℃上がっても気にはならないだろう

”普通”にだって、心地よいものとそうでないものがあるんだ

・・・僕らは他者と混ざり合うために、思わず異質な部分を隠したり捨てようとしてしまう

だけれど、むしろ異質さをハッキリと浮き彫りにすることで、その淀みを共に流し合うことだってできるんよね

相手と同じところだけを探し求めて得られる”普通”は、まるで空気みたいだ

そこで心地よさを得るためには、淀まないように空気を洗浄し続けないといけないし、空気の温度感に自らを合わせていかないと、はみ出されてしまう

自分の異質さをさらけ出すのは、怖い

・・・けれど、接する回数が増えれば増えるほど、その異質さは”普通”になっていくし、そこには自然と心地よさも芽生えていくんよね

僕らはどうしても、周りの人のことを「清らかで澄みきったお水」かのように見えてしまう

その人と混ざり合うために、自分から不純物をできるだけ取り除き、身を清めて、相手にとっての普通であろうとしてしまうこともある

だけれど、その相手だって完ぺきに澄んでいるわけもないんよね

むしろ、まず溶け合ってしまってから、お互いの不純物をさらけ出し合って、混じり気のない関係へと共に発展させていくことだってできるんだ

人間関係を蒸留するかのように、感情を明らかにし合って、しっかりと熱を加えて、キリッと冷ますことを忘れずにしたい

きっとそこには『心地よい普通』が待っているから

・・・読んで頂きありがとうございます(*^^*)

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【軟水のたそがれ】
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このnoteは筆者のツイートを深堀りするエッセイです。
※毎週日曜日の夜に更新!

新たな1週間が始まる前に、何か大切なことに気がつくキッカケになれば嬉しいなと思っています(*^^*)

水はあらゆる流れに身を投じることができるし、自ら流れを作ることもできる

世の中の動きに流されるのではなく、「主体的に流れること」を大切にしたい

そんなおもいを込めています

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