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牡蠣、それは神のいかづち

牡蠣は好きな人と嫌いな人が
分かれる食べ物だ。

子どもに聞くと
「きらい」という子が多い。

あの磯の香りとぷにぷにと
お腹のみどりが無理なのだそうだ。

私も子供の頃は
牡蠣が苦手だった。

やはり、
磯の香りとぷにぷにとお腹のみどりが無理だった。

子どもにとっては
無理して食べる味ではない。

それがいつしか、不思議なことに
美味しく感じるようになるんだなあ。

大人の「きらい」さんは
牡蠣にあたった経験がある方が多い印象。

牡蠣のあたりは
それはもう大変で、「神のいかづち」的だという。

恐ろしや。

私は牡蠣に当たったことがないが

食べる前はいつだって
そこはかとない緊張感に包まれる。

自分で調理する時は

勿体無いけれども
必要以上に加熱してしまう。
身が縮んだって構わない。

そんなある日のことだった。

BBQで飲んだくれている仲間内で
牡蠣を焼いて食べようという
ことになった。

これは危ない。
何せ調理者は酔っ払っている。

そして最高に美味しい状態で
調理しようとしてくれるはずだから

「身が縮んでもいいからよく火を通して欲しい」
などという無粋なことは言えない。

ダッチオーブンに
殻付きのでっかい牡蠣。
酒蒸しに使うのは
料理用には使わないような高級な日本酒。

食べるのを遠慮するには惜しい。
しかし恐ろしい。

ひとたび神のいかづちに触れようものなら
明日からの予定が全部パーになる。

ゴクリ。

先陣を切った夫の友人が
牡蠣殻をナイフでこじ開け、牡蠣プリを
ついに喰らう。

彼曰く、
「…うますぎる。こんなに旨いのだから
もう当たったとしても、それは正当な罰だ。」

そして私たちは
最高に美味しい焼き牡蠣をとめどもなくいただいた。

今まで食べた牡蠣の中で
一番美味しかった。

あたらなかった。

いつか、あたる時が
来るんだろうか。
そして、牡蠣を嫌いになってしまう日が
来るんだろうか。

人々に恐怖を与えたハレー彗星は
また再び宇宙へと帰っていく。

牡蠣のいかづちも
またいくらかの時を経て
私たちに再挑戦に来るのである。





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