一首評 歯磨きの漱ぎの水に少しある苦みのような懐疑のような/鬼頭孝幸
歯磨きの漱ぎの水に少しある苦みのような懐疑のような/鬼頭孝幸
第三回超然文学賞優秀賞「米の花」
底知れない魔力を持っている歌だと思う。
この歌を読み進めていくと、四句までは「共感」だ。確かに歯磨き粉というのは独特な味で、飲んだことはないのに絶対に飲み込みたくないと感じる。食べ物の側では歯を磨きたくないと思う程だ。それが水と混ざって薄まったときの微妙さを、「少しある苦み」はよく表している。「歯磨きの漱ぎの水に」という説明も上手い。これだけで日常の細部の感覚を鋭敏に捉えた詩とし