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眼鏡屋で働くなら知っておきたい「遠視の視力測定問題集 1年生用」


このnoteはおそらく世の中にない
眼鏡屋で働く人だけ」に意味がある問題集です。

問題はなるべくわかりやすくしていますが、処方には完全な正解はありません。


このnoteで大切なことは、しっかりと「質問」できるようになり
処方後の説明をお客さんに「伝えられる」ことを目的としています。


⬇️視力測定を最近覚え出して「処方まではさっぱり」という方は、
まずこちらの記事(全て無料)から読んでいただけると理解が深まります。

筆者紹介

某大手眼鏡屋チェーンで10年以上勤務し、
自分の失敗体験を恥ずかしげもなく発信しています。

⬇️こちらのアカウントでは眼鏡と心理学をメインとした発信をしています。


⬇️またブログでは日常心理学を活用して眼鏡屋で活かす方法や、
仕事、恋愛、育児に応用でき、人生の難易度を下げる方法を
全て無料で公開していますので、興味のある方はどうぞご覧ください。


⬇️こちらは眼鏡の検査に特化した発信をしていますので、
気になる方がいたらフォローしてみてね。


はじめに

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視力測定初心者でもベテランでもお客さんに、
これを聞かなければ検査が始まらない「質問」が最低3つあります。


それは、
今の眼鏡の見え具合、今の眼鏡の使用年数、新しい眼鏡でどこを見たいか
です。

眼鏡が初めての人には「今裸眼で見ていてどこを見る時に困るか」でOK。


なぜそれを聞かなければいけないかというと、眼鏡は今まで使用した年数によって見え具合が記憶され、新しい度数に変化があるほど違和感を感じます。

⬇️詳しくはこちらの記事で詳しく解説していますので参考にどうぞ。


若ければ変化に慣れやすく耐えられますが、
歳を重ねるごとに慣れることを拒絶します。

このような人間の特性を理解した上で眼鏡の度数を考えていくことで、
お客さんにとって精度の高い処方度数となるのです。


特に今回の「遠視」に関しては、
⬇️の「近視と乱視」の特徴をある程度理解していないと
混乱する場合が多いので、近視と乱視処方について「これぐらいは知ってるよ!」って方は飛ばしていただいて先に進んでOKです。

遠視の人を測る場合に気をつけること

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遠視は生まれつきの場合もあれば弱視矯正がされなかったりと
いろんな場合があります。

もちろん眼鏡が今回初めてという20歳以下の人を検眼することになったら
迷わず眼科に送ってください


遠視の人は20歳までに何らかの矯正はされていることが多いので、
KBを持っていることがほとんどです。

なので遠視はKBベースの処方がマストになります。


もし破損などでKB度数がわからない時は、
体感的にKBの見え方がどんな見え方だったのか詳しく深掘りして
仮枠で細かく近づけていくことになります。


ではまず「KBが無い場合」の遠視処方について解説しますね。

遠視処方の例題 1

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⬇️KBを破損してデータがレフ値のみの場合。

裸眼視力0.5
 
レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90
加入度数 +1.25
7A値 S+1.50 C-1.00 AX90  視力は1.0まで出るものとする
(左右バランスは無視)
主訴✍️
遠方見やすくしたい
スマホよく見る
45歳男性
おそらくKBは乱視が入っていて単焦点レンズだった

まずは基本となる問診3つを確実に確認します。

前の眼鏡の見え具合、前の眼鏡の使用年数、新しい眼鏡でどこを見たいか

するとこんな情報が返ってきました。

「使用年数は5年」
「眼鏡で運転していた」
「眼鏡をかけてPCやスマホを見れていたが疲れやすかった」
「新しい眼鏡は近方も見やすくしたい」


この情報をまとめると、
「遠方は見やすかったが近方は少し見えにくかった」
「新しい眼鏡は近方も見やすくしたい」が主訴とわかりますね。


では「KBデータがなく遠視と乱視が入った場合の処方」で
仮枠にどれぐらいの数値を入れるのか?


これは乱視の法則と似ているのですが、

「S面7A数値の半分以下」
「C面7A数値の軸度法則と同じ」

これが目安となります。

⬇️理由は「最小錯乱円」の話になってくるので詳しくは別記事をご覧ください。

むずかしく考えずにまずはこの法則だけ覚えて、座学的なことは後からご自身で
調べながら体験していけば理解が深まります。


では、ここからさらに深掘りします。

「眼鏡で運転していた」
「眼鏡をかけてPCやスマホを見れていたが疲れやすかった」
「新しい眼鏡は近方も見やすくしたい」

「一本の眼鏡で運転やPC作業スマホは見たいですか?」→はい

この回答から考えられるのは、S面を強めにした単焦点レンズか、
遠近両用レンズが提案候補となります。


では先ほどのデータにあてはめていきましょう。

裸眼視力0.5
 
レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90
加入度数 +1.25
7A値 S+1.50 C-1.00 AX90  視力は1.0まで出るものとする
(左右バランスは無視)
主訴✍️
遠方見やすくしたい
スマホよく見る
45歳男性

まず「KBが単焦点だと思う」ということからKBの見え方がどれぐらいだったのか?を探します。

法則にあてはめるとこの場合、
S+1.00 C-0.50 AX90 ぐらいが妥当な数値かと思われます。

この数値で遠方の見え具合や近方の見え具合がKBに近いか遠いか?を
確認し、反応を見ながら度数を変えていきます。


もしこのKBと近い見え方で近方をもう少し見やすくしたい主訴を単焦点で
行うならS面に+度数を0.25ずつ足して遠方が見えにくくならない場所を探します。

遠方が見えにくくなった一歩手前の度数で近方の見え方が良いならそれでOKですし、もう少し近方を見やすくしたいと希望があれば累進レンズに切り替えてみます。

遠近両用で仮枠に入れなら数値は、
S+1.00 C-0.50 AX90 ADD1.25あたりが妥当な数値です。

加入度数が+2.00を超えてくると左右の歪みや視野に広さが大きく変わるので、
単焦点での限界と累進レンズの使用方法などを伝えてどちらが生活環境に
適しているか?
をお客さんに選択してもらいましょう。


遠視処方の例題 2

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同じ度数で主訴が違う場合も考えてみましょう。

裸眼視力0.5
 
レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90
加入度数 +1.25
7A値 S+1.50 C-1.00 AX90  視力は1.0まで出るものとする
(左右バランスは無視)
主訴✍️
遠方見やすくしたい
スマホよく見る
45歳男性
おそらくKBは乱視が入っていて単焦点レンズだった

3つの質問の回答が同じように

「眼鏡で運転していた」
「眼鏡をかけてPCやスマホを見れていたが疲れやすかった」
「新しい眼鏡は近方も見やすくしたい」

⬇️主訴が変わる回答が以下になる場合。

「一本の眼鏡で運転やPC作業スマホは見たいですか?」→いいえ
「遠方はしっかり見えてPCやスマホは別の眼鏡でもOKですか?」→はい


この回答から考えられるのは、用途ごとにしっかりと見たいという主訴が
判りますので、単焦点で見たい部分ごとに100点となるように
提案を変えていきます

まず運転などの遠方をしっかり見たい主訴の仮枠度数目安は、
例題1と同じ
S+1.00 C-0.50 AX90ぐらいから始めて、希望に合わせてS面を±0.25前後したり
C面を+0.25足してみたりしながら反応をみて合わせましょう。


次にPCやスマホを見る場合は距離が中間から近方に変わるので、
7A数値のADDが1.25を参考にすると仮枠に入れる目安は
S+1.00 C-0.50 AX90にADD1.00か1.25を足した
S+2.00 C-0.50 AX90あたりが目安の数値となります。

あとはそこからS面に+度数を0.25ずつ足しながら希望の距離を聞き出し、
「ここからここまではこの度数で見えます」と見本の新聞やパネルを見せ、
ジェスチャーを交えながら具体的に距離を認識してもらいましょう。


遠視処方の例題 3

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最後にKBがある場合の処方例を解説します。

数値と主訴は例題1と同じです。

裸眼視力0.5 KB S+1.25C-0.50 AX 視力0.9
 
レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90
加入度数 +1.25
7A値 S+1.50 C-1.00 AX90  視力は1.0まで出るものとする
(左右バランスは無視)
主訴✍️
遠方見やすくしたい
スマホよく見る
45歳男性

同じく3つの質問をします。
前の眼鏡の見え具合、前の眼鏡の使用年数、新しい眼鏡でどこを見たいか

⬇️回答は以下の通り

「使用年数は5年」
「眼鏡で運転していた」
「眼鏡をかけてPCやスマホを見れていたが疲れやすかった」
「新しい眼鏡は近方も見やすくしたい」

さらに深掘りします。

「一本の眼鏡で運転やPC作業スマホは見たいですか?」→はい
「遠方はしっかり見えてPCやスマホは別の眼鏡でもOKですか?」→いいえ

この場合は一本の眼鏡でKBより遠方と近方を見やすくしたいという主訴が
わかりますね。

データを見ながら考えていきましょう。

裸眼視力0.5 KB S+1.25C-0.50 AX 視力0.9
 
レフ値 S+2.00 C-1.00 AX90
加入度数 +1.25
7A値 S+1.50 C-1.00 AX90  視力は1.0まで出るものとする
(左右バランスは無視)

仮枠に入れる処方例は、
S+1.50 C-0.70 AX90 の単焦点か、
S+1.50 C-0.70 AX90 ADD1.00の累進レンズあたりが妥当かと思われます。

KBの視力が0.9で最高矯正が1.0なので乱視を0.25足せばおそらく視力は
1.0出る予想と、S面を+0.25足すことで近方も見えやすくなるというのが
根拠です。

もしS面を+0.25足すことで遠方が見えにくく感じるのなら、
C面だけ-0.25か-0.50足してそのまま単焦点で近方は我慢するか、
遠近両用系のレンズで歪みなどの使用感が悪くなければそちらを
おすすめすると良いでしょう。


眼鏡屋で働くなら知っておきたい「遠視の視力測定問題集 1年生用 まとめ」

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お客さんはいろんな負の要素を伝えてくれますが、
案外今と同じくらいでもOKという場合が多いです。

よほど困っているなら度数は大きく変えて、そのメリットと
デメリットをしっかりと伝え、レンズ設計の限界があることを
理解してもらいましょう。


遠視度数処方はS面と加入度数が大きく関わってきます

⬇️まずは以下の法則をしっかり覚えて目安となる数値
どれだけ入れたらいいのか?を覚えておきましょう。

「S面7A数値の半分以下」
「C面7A数値の軸度法則と同じ」

ここまで読んでいただきお疲れ様でした!

きっと頭と目が疲れたと思いますが、最後にお願いです!!


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