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祝・作品完結。おそらくこの作品は「誤読」が多発するはずで、僕らは「誤読とは何か」へ追い込まれる。(『狂楽の回旋曲(ろんど)』涼雨零音著)

涼雨零音さんが連載されていた新作が、完結しました。知的膂力でちゃぶ台返しするのは、涼雨さんの得意技だと思う。

👆これは、連載中に書いた文章です。

SF的だし、「なぜ自明のこととしている?」って問いは涼雨哲学の反映ですね。今回は、ミステリのように謎で引っ張る魅力があります。話数が進むと、それまで語られたことが微妙に改訂されていきます。たぶん、独特の読み心地に繋がるはず。従来の作品から、「仕掛けがご馳走」の部分も踏襲しています。

何故事件が起きたのかは読めば明らかになります。作品中の事実は、読み手によりどこまで事実とするか別れると予想します。理由は、ミステリで言うところの「信頼できない語り手」のみで(おそらく)、構成されているので、受け取った事柄が「侵食」されてない保証が無いから。

小説作法上きちんとした日本語を用いつつ、「人と人は分かり合えない」ことを書いて見せてくれます。

注意すべきは、著者は著者の思想・価値観・哲学の一端を小説に組み込みましたが、素材としてそのまま置かれており、気づかない人もいれば、共感する人もいるはずで、様々な反応が起きるでしょう。私のこの文章もその1つです。

著者は「狂気とは何だ」とは作品に書いていても、「人と人は分かり合えない」ことは書いていません。私の読解です。作品の性質上、私の読んだこの作品と、著者の理解と、他者の読みが食い違いやすいはずなのです。

全ての小説は、誤読の余地を読者に委ねますが、この作品は、私の理解が間違っていなければ、信頼できない語り手達によって構成されているため、「誤読」しか生まれない可能性があります。ということは、どれも「誤読」であるなら、正しい読みは存在するのでしょうか?

是非、メモ帳を片手に、この作品に挑戦することをお勧めします。おそらく、私達が無意識に見たいものしか見てないことを、確認出来るはずだから。

👆ヘッダーはYasu Komaさんからお借りしました。

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