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女子プロレス沼のほとりにいる・その3

個性の数だけ多様性がある

井上貴子がプロレスデビューして35周年だという。1969年11月7日生まれだから54歳。同じく11月生まれの私より8歳若いけれど、35年は、サラリーマンでいえば定年間近のキャリアだ。プロレスは体も精神も張りつめないとできないから、仕事の濃さは私みたいな凡庸なサラリーマンの何十倍にもなるだろう。
その井上貴子が、所属する神取忍の団体LLPW-Xが主催する35周年記念イベントの企画から司会、歌、それに試合を、11月21日に東京ドームシティーホールでおこなった。女子プロレスに関心がなかった頃の私には、彼女はヌードを含むグラビア写真集をたくさん出す人気アイドルという認識だったと思う。けれども、スターダムの試合を観るようになってから知った彼女や神取らレジェンドたちは、プロレスの成熟とは何か、あるいはプロレスの多様性を見せてくれる選手というように私の目には映る。

神取忍と井上貴子

全盛期の「全女スタイル」というものを、私は知らない。スピーディーに技を繰り出し合うスターダムの試合が私は好きだけれど、プロレスはそれだけではないのだろう。この日、リングに上がったダンプ松本(1960年11月11日生まれの63歳! 先輩!!)とアジャコング(53歳)の異様に強い存在感はどうだろう。目線ひとつ、不敵な笑いひとつで相手を刺すかのようだ(実際、ダンプ松本は渡辺智子の額にフォークを何度も突き立てていたが。痛そう!)。

ダンプ松本。リングに立つだけで、この迫力。
スターダムの提供試合として組まれたジュリアと飯田沙耶のシングルマッチ。他団体でも遠慮なしにキレのある試合を見せてくれた。敗れた飯田は試合後のバックステージで号泣した。

プロレスは何でもあり。世間の一般常識的にはダメな子にも舞台がある。でもけっして甘くはない。日常的に肉体を鍛え、気持ちを強く持ち、見ておもしろい選手にならないとマッチメイクされない。そのため他の子と自分を極端に差別化しないといけないから、おのずと個性と同じ数だけ多様性が生まれるのかもしれない。他団体を観ると、改めてそれがわかるような気がする(写真はすべて筆者撮影)。

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