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サッカー元日本代表 鈴木啓太さんに聞いた「家族の存在」について【腸活ビジネスを展開するAuB株式会社 鈴木CEO×カラダノート代表 佐藤】〜前編〜

当社は「家族の健康を支え笑顔をふやす」を掲げ、少子高齢化の社会課題の解決を実現したいと考えています。

少子化を改善するにあたって官民ともに様々な対策が講じられるなか、私たちは、子育てにおける不安等のマイナスをゼロにするだけでなく、どうすればもっと幸せに、笑顔になれるのかを考えたいと思っています。
そういった思いから、家族の健康や幸せのサポートをされている企業や有識者とカラダノート代表 佐藤との対談を通じて、少子化を解決する上での「課題」だけでなく、インタビュイーご自身の「子育ての魅力」についてなども発信してまいります。

第三回となる今回は、サッカー元日本代表選手で、腸内細菌の研究を軸としたヘルスケア事業を展開するAuB株式会社代表取締役CEOの鈴木啓太氏のインタビューの前編をお届けします。

子育てには明るいビジョンが必要

佐藤:鈴木さんは元プロサッカー選手で、現在はご自身で設立された会社の代表を務めていらっしゃいます。おふたりのお子さんのパパでもいらっしゃるので、本日はご自身の子育てのことについてもお聞かせいただけると有り難いです。どうぞよろしくお願いいたします。

鈴木CEO(以下:鈴木):本日はお声がけいただき、ありがとうございます。こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

佐藤:対談を始めるにあたり、まずは当社の事業内容について簡単にご説明させていただければと思います。
当社は2009年に設立し、14年間にわたってヘルスケア領域の事業を展開してきました。妊娠・出産に関連するアプリの提供を始めて10年以上になるのですが、有り難いことに現在は国内の年間出生数の9割ぐらいにあたる方がダウンロードしてくださっています。

アプリ開発において当社が強化しているのが「夫婦の情報共有」という視点です。ママだけが使うのではなく、パパとも記録や情報を共有できる設計にすることで、男性の育児参加を促していけたらと考えています。実際に3割くらいのユーザーはご夫婦で使ってくださっていて、以前と比べると「子育ては夫婦で一緒にするもの」という考え方が浸透してきているのかなという印象を受けます。
ただ、それが少子化の解決につながっているかというと、残念ながらそうではないと考えています。当社を設立して間もない2009年の時点では約107万人だった日本の出生数は、2022年には80万人を割る見通しです。
私たちとしては、子育て環境をより便利にしたいという思いでDX化を進めてきました。でも、「子育ては大変」と感じてしまう状況は変わっていないし、むしろ悪化しています。鈴木さんは、日本の少子化は何が原因だと思われますか?

鈴木:少子化はすごく難しい問題で、様々な課題がいろいろ絡み合って起きていることだと思います。世代間格差や経済格差といった要素もありますし、環境面の問題もあるでしょうし。

撮影:カラダノート

僕は専門家ではないので詳しいことは言えませんが、人って「こうすると良さそうだな」と想像できて初めて、行動を起こそうとするものだと思うんです。だから、子育てに対して良いイメージが湧かないということが問題かなと。

サッカーでは、結果を出すにはモチベーションが大切だと言われます。でも、子育ては瞬間的なモチベーションが上がるだけでは、続けていくのは厳しいじゃないですか。じゃあ、モチベーションを高く保ち続けるにはどうすればいいかというと、明確な目標があることとそれを達成する方法が分かっていること、この2つが大切です。

これを子育てに置き換えてみると、子どもが小学生になる頃にはこんな感じになっていて、10歳になる頃にはこれくらい成長していて……といった見通しがあると、「これくらいの年齢になったら家族で旅行したりするのも楽しそうだな」といった明るいビジョンを描きやすくなると思うんですよ。

だけど現実は「子育てはお金がかかる」「誰も助けてくれなくて大変」といったネガティブな情報が多いから、みんな、「えっ、そうなの?」と思って、子どもを持つことをためらってしまうのではないかと。

そうならないようにするには、情報収集にのめり込みすぎずに、一歩引いてみる必要があります。「ネガティブなことを言う人もいるけど、必ずしもそうとは限らないんじゃないの?」と楽観的に考えることができれば、見方も変わってくるはずです。

「そもそも、自分にとって大切なことって何だっけ?」というところに立ち返ったとき、僕は自分が子どもだった頃の家族の思い出を振り返ってみると、「家族って悪くないな」と感じるんですよね。

夢を託した誰かを応援する、その最小単位が家族

佐藤:鈴木さんは小さい頃からサッカーをされていらっしゃったんですよね。ハードな練習を続けていた中で、ご家族との思い出としてはどんなことが印象に残っていらっしゃいますか?

鈴木:我が家は、父、母、3歳上の姉の4人家族だったんですが、休日になるとですね、みんなが僕のサッカーの練習を見に来ていました。

佐藤:ご両親だけじゃなくて、お姉さまもですか?

鈴木:はい。もちろん、中学生くらいからは少し距離を取るようになった時期もありますが、僕が高校生になっても3人で大会を見に来てくれました。
それで、あるとき、姉から「うちの家はあなたのサッカーばかりが中心でつまらない!」って言われたことがあるんです。強烈な一言ですよね。ごはんのおかずも僕だけ一品多かったりして、それでまた「あなただけズルい」って言われて。

僕としては申し訳ないという気持ちを持ちながらも、自分の夢に向かっていくしかないじゃないですか。子どもの頃はそういう時期がありました。

佐藤:お姉さまとしても、複雑なお気持ちがあったのでしょうね。

鈴木:姉に対しては、僕がサッカー選手になってから「いつも僕のことばかりでごめんね」と伝えたことがあります。そのとき、姉は「実は私、すごく楽しませてもらったんだよ。サッカーも好きになれたし、いろいろな所に行けたから楽しかったんだよ」って言ってくれたんです。お互いに大人になり、時間が経ったからこそ言えたことだと思いますが、すごく嬉しかったですね。

撮影:カラダノート

佐藤:ご家族で旅行に出かけられたとか、印象に残っている出来事はありますか?

鈴木:正月には家族でスキー旅行に出かけていたといった思い出もありますが、何よりかけがえのないことは、自分がサッカー選手を目指して頑張っていることを家族が理解してくれたことですね。必要なサポートを受けられる環境を与えてもらったので。だから、練習の送り迎えをしてくれた母親の車とか、全てが思い出です。

人って、自分では実現できない夢を誰かに託し、それを応援することで喜びを感じるという面があって、僕はその最小単位が家族だと思うんです。だからこそ、自分が結婚して娘たちが生まれたときに、彼女たちには早く夢を見つけて、それに向かって一生懸命やってほしいと願うわけです。

これって、自伝を読むときの感覚に似ているかもしれないですね。自伝を読むと、その人の人生を追体験できるじゃないですか。それと一緒で、僕は僕の人生を生きてますけど、娘たちの人生を同時に楽しめる可能性もあるわけです。

自分の存在を娘たちが認識してくれていることも僕の生きる意味になっているでしょうし、彼女たちの夢に自分も乗っかりたいという思いもあります。そういった今の子育てを昔の思い出に重ね合わせると、かつての父親と今の自分が重なり、かつての自分と今の娘たちが重なって、これが人生なんだなと思います。

佐藤:幼少期がない大人は一人もいないわけですしね。今のお話を伺っていて、自分が応援する人に夢を託すということの最小単位が家族だというのは、サッカーでのサポーター・選手の関係をご経験された鈴木さんだからこそ の発想だと感じました。僕も子どもたちが夢を見つけたら、応援したいですね。

情報過多な社会でも本能的な部分を大切に

鈴木:僕、この間、下の子の文化祭に行ったんですよ。娘は相撲のイベントに出場したんですが、全力を出し切らずに、あっさり負けてしまって。その瞬間に僕、めちゃくちゃイライラしたんですよ。「お前、もっとできるだろう!」って。理性では「自分の期待を押しつけたらダメ」と思うものの、本能的な部分で「お前の実力はそんなものじゃない。もっとできる!」と期待してしまうんです。

社会的には理性に基づいた判断が推奨されるんでしょうけど、もともと人間だって動物だし、子育てでは本能的なところを呼び覚ますというのが実は大事なんじゃないでしょうか。損得勘定で動くのではなく、本能的に子どもを産んで育てることを選択する。そういうことが、今の情報過多な社会ではしづらくなっているのかもしれないですね。

佐藤:それは本当におっしゃる通りです。「幸せって何?」と聞かれたときに、それを理詰めで説明できる人って多分いないと思うので。

日本では世帯年収が1000万円を超えているご家庭でも、約3割は「子育てをするのが経済的につらい」とおっしゃるんですね。「子育てはお金がかかって大変」という情報が溢れていることに加えて、何事もコストパフォーマンスを重視する風潮があることも影響していそうですね。

鈴木:子どもは「未来」だと思うんです。社会にとっての「未来」であると同時に、親自身にとっての「未来」でもある。目先のコストパフォーマンスだけでなく、もっと広い視野で、子育てを捉えられる社会になれば良いのですが。

「レール」ではなく「ガードレール」を用意する

佐藤:鈴木さんが子育てで大切にされているのは、どのようなことでしょうか?

鈴木:子どもをよく観察するということです。子どものちょっとした変化って、日頃からよく観察していれば気づくことができるけれど、観察していなかったら気づけないじゃないですか。

なぜそう思うのかというと、これは大人でも一緒だからです。サッカーの現役時代に監督の仕事を間近で見ていて気づいたんですが、優秀な監督は総じて選手のことをよく観察しているんですね。監督と選手の関係って親と子どもみたいなもので、自分のことをよく観察してくれているなと思うと愛情を感じて、こちらもそれに応えたいと思うわけです。そういったところが、子育てでは一番大事なのかなっていう感覚があります。

佐藤:子育ての方針って、厳しくしつけたいという人もいれば、子どもの自主性に任せたいという人もいて、人それぞれだと思いますが、鈴木さんはどのようなことを意識されていますか?

鈴木:僕は、子どもたちに対して、自分が敷いたレールの上を走ってくれとは思っていません。子育てに必要なものって、「レール」じゃなくて「ガードレール」だと思うんです。本当に危ないエリアには行かないようにガードしたら、あとは「この子は何をしでかすんだろう?」というところに興味が湧くんですよ。

結局のところ、「僕の人生は僕の人生、お前の人生はお前の人生だけど、ここで家族という単位で一緒に生活しているからには、お互いに高め合える存在になろうな」ということではないでしょうか。もちろん、子どもたちが何かに挑戦するなら家族みんなでサポートするし、そういった役割が増えたのは喜ばしいことだと思います。

※鈴木さんのインタビュー後編は、後日公開予定の第四回の記事でお届けします!