【勝手ヒーリング】空気、鱗、小魚、骨

ずっと武道の道を歩いてきました。
父が道場主だったので、気がつけば道場にいました。まぁ、厳しくない道場だったので、遊んでいる、という気持ちの方が強かったのですが、それでも「武」です。その練習の大前提には「敵」がいます。

武道、武術はスタートがマイナス、超マイナスなのです。
とにかく、命があれば〇。なんとか、生き抜けばよかったね、という感じでしょうか。
試合ならば勝たねば栄誉は得られませんが、護身を主とした武術武道なら負けなければいいのです。
そもそも戦わないで済むのならそれでいい。私はそんな場所で育ちました。

ただ、現実の世界では戦わない、と逃げる事が出来ても、練習となれば違います。敵役を買って出てもらい、襲ってもらい、力を試し、実力をつけていかねばなりません。
上達する喜びはありますが、それはこれで生き延びる事が出来る、というゼロ地点への回帰なわけです。


こんな私ですから、「癒し」というものがよくわかりませんでした。
しかし、やっと、私にも「癒される」という世界が分かってきたのです(笑)。

大きな理由はやはり老い。大きな怪我もなく、ぬくぬくと育ったので、若い頃には内面に不満なく過ごしました。
外に対しての不満は実力不足、と割り切れましたから、早々に諦めたりすればよかったのです。

ただ、老いて、病気をしたり、身体に負荷が溜まり、腰痛頭痛と現れだすと、その瞬間の「気分」が分かるようになりました。
それまでは目の前に敵が現れ、気分を悪くしていたものが、内側に不満を見つけてしまい、気分が悪くなるのです。

内面にあるものも敵と認識して立ち向かえばやれる事はいくつもありました。
私の稽古は主にこれ。自分の中に見つかる不満を糧に新しい姿勢、動き方を求めたのです。
求めてみれば身体はどれほどでも返してくれます。
気がつけば常識的練習ではおおよそ、想像もつかない動きを知る事が出来たのです。

そして、内側に見つかる敵はどんどんと小さくなり、ただ、今ここにいるだけで感じられるものを探すようになりました。
何かをするために術理を求めるのではなく、今を快適に過ごすために必要なものが自然と出てきました。

それも武術の技として表現していたのですが、いつの頃か、その身体の状態を癒しや、健康体として評価されるようになりました。
施術を生業にしている人たちから見て、気楽に過ごしているように見えたのでしょう。
私は武術として、日々の生活の中で嫌な気分にならないようにするために作ってきた姿勢が、心を癒すものになっていたわけです。まさに、心身一如です。

ちょっとここで私が手掛かりにしているヒーリング的術理を紹介します。
ちょうど、腰椎の理解も深まり、バージョンアップというか、整理をし直さなくては、と思っていました。
それぞれに関してはまた改めて書きますので、今日はざっと。

まずは「骨」。
誰もが持つ、骨。これは「回せばいい」、と考えています。
ついつい関節が気になり、単純作業になりがちですが、それでは一部に負担が偏ります。
螺旋をイメージして回しながら使えば、結果的に全体の速度が調和され、バランスを維持したまま動く事が出来ます。

ちなみにこれ、着物を着たら自然とそんな動きになります。
邪魔な袂を抑えながら手を出せば、自然と骨は回り、螺旋を描きます。

次は「小魚」。
これは筋肉的働きの新しい視点。
ついつい筋肉は固めてしまいます。
ギュッと力を入れれば確かに力は出ます。しかし、それでは持続が難しいのと、これもまた、偏りを生みます。
筋肉に負荷を偏らせすぎると、そのアンバランスは骨格にも向かい、体重がさらに負荷を増してしまいます。
これをやらない方法として「小魚」を考えました。

身体の中にあるものを「水」と見立てて、その中にあるちょっとした筋肉感を小魚として考え、身体の中を小魚が元気よく泳ぐような感じを求めて使います。
いきなりそれを「イメージ」しろ、というのも難しいですから、これは手助けをします。
具体的には手首と肘を支え、肘を曲がる方向と直行する方向へと「揺らし」ます。
肩に力がかからない程度の軽い揺れを起こすと、腕の中がざわざわとしてきます。これを「小魚感」としてみれば手掛かりになると思います。

骨、筋肉と来たなら次は「皮膚」です。
皮膚はバリアなんだなぁ、と今はもう当たり前になりましたが、この皮膚の働きに気づく前は皮膚に頼る、という意識はまるで持てませんでした。
ついつい、筋肉が出しゃばり、筋肉鎧を作ってしまうのです。
筋肉が皮膚を追い越してしまっていました。

皮膚はまるで「鱗」のようです。
キメ細かな、なんて表現をされますが、じっと目を凝らせば確かに細かく、分かれていると言えます。
そして、この皮膚も実はそうになっていて、その下の筋肉や骨、もちろん、内臓を守る役割ができるのです。

紫外線など目に見えないエネルギーから守る力があるのは皆知っていると思います。
ただ、それだけではありません。
衝突した際に生まれる「触覚的力」だって、この皮膚のバリアで止める事が出来るのです。

鱗を意識する方法は逆に考えた方がいいかもしれません。
意識をする、というのではなく、骨や筋肉、内臓から生まれる感情の起伏などを「意識しない」という事が大切になりそうです。
皮膚はいつも、外界との間にいて、バリアは発揮されているのです。それをさらにバリアを上げる、という考えは要りません。
いつももう、ある、これでいいのです。

鱗を意識するには「触れる」事が一番有効。
そして、その際、「皮一枚下」に触れます。
少し強く振れ過ぎれば筋肉が反応し、弱すぎれば遠慮している、と見られ相手の気持ちが動き、警戒をされます。
皮一枚を淡々と触れる。それで無意識の主役が骨や筋肉から皮膚へと変わります。

小魚も鱗も「余韻」が残ります。
無理に力む事をしなければ1時間ぐらいは残るんじゃないかな、と。
後はその余韻に浸り、なんとか自力で再現できるように工夫をすればいいだけです。
新しく付け足すものはありません。全部、もう、持っているものなのですから。

そして最後にもう一つ。
それは「空気」。
内臓があり、骨があり、筋肉、皮膚がある。これで終わりかと言えば、違います。
私たちが住むこの世界には「空気」があります。
その空気だって、実は私たちを動かしたり、支えたり、ちゃんと助けてくれています。

空気を読めない、空気が違う。
そんな言葉は残っていますよね。
それこそまさに、空気の力。
しかし、空気が気分を変える事は知っていても、肉体的身体までも直接助けている、とはなかなか考えません。

武術の世界には「気」という概念がありますが、かっこいい言葉を使いすぎているように感じます。
練らなくてはいけない気ではなく、もう、目の前にある「普通の空気」で十分、私の身体を支え、動かし、助けてくれているのです。

当たり前に感謝を!、なんて言われますが、空気を使わずして何を言うか!!です(笑)。

とりあえず4つほど挙げてみました。
またちょっとそれぞれに関しては書きますね。

「甲野善紀先生名古屋講習会(12月)」

稽古日時:2023/12/16(土) PM2:30~PM5:00
稽古場所:名古屋市南生涯学習センター/第4集会室
会場住所:名古屋市南区東又兵ヱ町5丁目1-10
参加費:8000円

【12月定期稽古】
14木 名古屋
21木 瀬戸ヒーリング
22金 東山
23土 浜松
30土 名古屋

個人稽古も共に詳細、申し込みはウェブサイトから。
http://www.karadalab.com/

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