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書道の先生に教えてもらったこと。

昨日の記事では、「ほめる」と「ねぎらう」について書きました。勇気づけや動機づけにおいて、両者とも万能な存在ではありません。ですが、それぞれの特性を知って使いわければ、それらは有効に作用します。

何に使うのか?

お相手に対して使うことはイメージしやすいでしょう。ですが、自身に対して使うことは、案外、片手落ちになりがちです。自分の機嫌をとったり、意欲を育てたりするのは、本来は自分ですること。

その主導権を“自分以外の誰か”に委ねていると、「その人がいないと何もできない」なんてことになりかねませんからね。自分を育てるのはあくまで自分なのです。

たまたまの出会いが運命を変える

ひとつ、思い出したことがあります。

僕は小学一年生から六年生まで、書道を習っていました。近所のアパートの2階にあった書道教室で、たしか、近所の同級生から教えてもらったことがきっかけで通うようになったと思います。

僕は、最初から字を書くのが好きだった…わけではありません。嫌いでもなかったと思います。ですので、通い始めたのも、誘ってもらったこと以外に特別な動機はなかったと思います。たまたま、なんです。

この「たまたまの出会い」って、僕はすごく大事だと思っています。時に自分の人生を大きく変えるものって、この「たまたま出会ったものや人」であることが多いのです。これは普遍的なパターンだと思います。

それはさておき、この書道教室に通うようになってから、僕の字は秒速で上達していきました。いまでもよく覚えています。書くたびに字が上達していく。それが自分でもハッキリとわかるくらいでした。

当時、たしか「展覧会」みたいなネーミングだったでしょうか?コンテスト的なものがあって、応募した作品は金賞と銀賞、あともうひとつ何かの賞があったように思いますが、何かしらの基準で採点され、ランク付けされます。

で、当時の僕は金賞。自分で言うのも何ですが、自分が書いた何枚もの作品候補たち、たぶん、どれを出しても金賞はとれていたと思います。それくらい、あっさりと上達してしまったのです。

秒速で上達していくコツ

では、なぜ、こんなに早く上達したのか?

まず、自ら硯に墨汁を入れ、筆に墨をつけ、半紙に書きますよね。その書を先生のところにもっていき、添削してもらいます。すると、先生は毎回のようにこう言います。

「よっしゃぁ!ようできた!!!」

そう言って花丸をつけてくれるのですが、その声、めっちゃ大きいんですよ。僕はそれがすごくうれしかった。うれしいから、より頑張った…というよりも、書くことが楽しくなった。

これは昨日の話で言う「ほめる」ですね。書いた結果に対しての言葉がけですから。

一方、こんなことも言われました。

「ここは、えっへん。」

たぶん、書道の基礎には「とめ、はらい」の技術があると思います。たとえば、部首で「しんにょう」ってありますよね。この最後の部分は、すっと流すのではなく、とめて、はらうもの。ここの力の入れ方は一定ではなく、強弱をつける必要があるということです。

この「えっへん」とは、「とめ、はらい」の技術をカンタンに伝わるように工夫された、先生独自の表現だったと思いますが、こういう基本技術は徹底的にご指導いただきました。

今だからわかりますが、この「直し」が入ったとき、できていないことで怒られたことはひとつもありませんでした。むしろ、マシになっていることや、直しにへこたれずに書きなおしてもってきたこと自体を「ねぎらってくれていた」ように思います。

直接的な言葉じゃなくても、態度でねぎらってくれていた。だから、直しも苦痛じゃなかったし、書くことがどんどん楽しくなっていったのだと思います。

結果に対しては、ほめてあげること。
プロセスに対しては、ねぎらってあげること。
自分に対してこそ、うまく使ってあげましょう。

僕が書道を好きになれたのは、きっと、先生がうまくこの2つを使って接してくれたからじゃないかなと、今になって思います。たぶん、先生はそんなことは意識していなかったかもしれませんが。


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