松雪泰子さんについて考える(12)『地の塩』

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*松雪泰子さんについて考える(51)「歌は語れ、セリフは歌え」*

松雪さん出演シーンの充実度:6点(/10点)
作品の面白さ:5点(/10点)
制作年:2014年(WOWOW)
視聴方法:FOD、U-NEXT

※以下、多少のネタバレを含みますが、決定的なオチや展開には触れないようしております。
 
WOWOWのドラマはどれもシリアスな作風で大人向けのイメージがあるが、この2014年『地の塩』も、その翌年の『5人のジュンコ』も、まさにそのとおりの内容。今回と次回でこの2作について書こう。『邪神の天秤』(2022年)も良かったので、追って書きたい。
 
『地の塩』は、遺跡発掘をめぐる考古学者(大泉洋)の裏の顔を描いたヒューマンドラマ。ダブル主演のような位置付けの松雪さんは、教科書会社の社員役。考古学者(大泉洋)の発見による遺跡を自社の歴史の教科書に載せたところ、彼の犯した行為を知るところなり、遺跡発掘の偉業に隠された秘密を糾弾するか否か葛藤するようになる―という筋書き。
 
あまり他のドラマにない舞台設定は面白い。ドラマの裏テーマとして「正義とは何か」といったようなことを問いかける社会性を兼ね備えていて、考えさせられる。

ただ、全4話というのが窮屈だった感がある。民放地上波ドラマのように10話もなくていいが、あと1~2話あればちょうどよかったかもしれない。そういう意味では、『5人のジュンコ』は全5話で、ちょうどよかった。
 
松雪さんの役柄は、真面目で正義感のある、少しおとなしめのシングルマザー。したがって、作中であまり笑顔になることも、はしゃぐこともなく、落ち着いたトーンの演技が終始続き、そのまま最終回まで終わってしまう。
 
正直、これといった名シーンが無いため、なんと表現していいか分からない。決してつまらなくはないし、どちらかというと次の展開が気になるような面白い作品だとも思うが、何か決め手にかける感じ。「このシーンのここが!」とかいったような、人に話したくなるような山場に欠ける。
 
…ということで、これ以上特に書きたいこともないのが、松雪さん以外の役者のことを少し書き足そう。
 
大泉洋さんは、ソツのない演技。いつもこういうテンションの役柄を演じている気もするが、いい役者さんだと思う。
 
そして陣内孝則さんも、いつもこういう役柄のような…。立派なベテラン俳優なので、演技どうこうについて今更コメントすることもない。(いい意味で)
 
他には、田辺誠一さん、田中圭さん、きたろうさん等が出演するが、みんなソツのない演技。
 
書きながら思ったが、とにかくこの作品は、良くも悪くも「ソツのない」出来栄えということに尽きると思う。キャスティングも内容も。
 
そういう意味では、キーパーソンとして出演する板尾創路さんの怪演ぶりこそが最大の見せ場ということになるだろうか。観ている側も気味が悪くなるような表情づくりや奇行が、とてもリアルでよかった。

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