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「チャイルドペナルティ―」について

「チャイルドペナルティー」という言葉がある。出産前後で収入が下落する現象のことである。出産や子育てのタイミングで、育休を取得したり、時短勤務を選択すると、どうしても収入源は避けられない。特に日本はその傾向が著しく、女性が潜在能力を十分に発揮できていない証しでもあるという。

日本に限らず先進国共通の問題である男女の賃金格差は、ジェンダー平等施策が進む国では徐々に差が縮まって来てはいるものの、チャイルドペナルティーが残された関門となっている。出産するとあたかも罰せられるかのように収入が下落する。日本は他国に比べ落ち込みが大きく、その後の回復も緩やかであるという。長時間労働ができないと評価されにくく、子育てに時間を割かざるを得ない女性は昇進・昇給で不利な扱いを受けることが原因と考えられる。

今年7月に男女間賃金格差の情報公開が大手企業に義務付けられたことで、チャイルドペナルティーの解消に向けた対策を講じる企業も出て来ているとのことであるが、全体から見れば、まだまだ少数派であろう。

この問題に関しては、いろいろと原因はあるのだろうが、根本的には、「子育ては女性の仕事」であるという認識がなかなか払拭されないところが大きいと思う。男性版育休制度の整備も進んでおり、企業側から従業員への取得促進が義務化されたが、じゃあ、実際に取得するのかとなると、そこはまだまだ見えないハードルがありそうである。

あと、実際に男性が育休を取得したとして、子育てにおいて戦力になるのかという問題がある。夫が育休を取得して家にいても、たいして役にも立たず、その割に「頑張ってますアピール」が鼻につくくらいだったら、会社でバリバリと稼いでほしいと思っている妻は少なくないと思う。

つまりは、制度の問題よりもまず、子育てに関する夫婦の役割や責任に関する意識を社会全体として改めていかないことには、結局のところ、あまり実効性は期待できないように思う。出産は女性にしかできないが、生まれた子どもを育てるのは夫婦(あるいはカップル)が連帯責任を負うべき領域であり、妻サイドが育休を取得する、あるいは時短勤務をするのが当然というわけではなく、妻が出産から復職したら、夫サイドが育休や時短勤務を選択してもおかしくはないと、企業も従業員側も普通に考えられるようになるべきであろう。

さらに言えば、これだけ少子化が急速な勢いで進行している以上、「生まれた子どもは、社会で責任をもって育てるべきもの」という認識も必要であろう。はっきり言って、高齢者はまあどうでも良いが、子どもは大切にするべきである。付け加えれば、子育て家庭、子育て中の夫婦(あるいはカップル)も大切にしなければならない。彼らは日本の将来のための重要な役割を担ってくれているのだ。極論すれば、高齢者に使っている医療費を削減して、子育て家庭に配ってもらっても、少なくとも僕は文句を言うつもりはない。企業が柔軟な人事施策を選択しやすいように、国や自治体は給付金や税制面で積極的にバックアップするべきなのである。

優秀な人材を雇用するに際して、子育てに対して協力的な姿勢を持った企業というのは、大きなアピールポイントになるはずである。会社に託児所を設けるところもあるし、出勤時に子どもを職場に連れて来ても構わないという会社もあると聞いた。在宅ワークを柔軟に許容している会社であれば、子育てもやりやすいであろう。

「チャイルドペナルティ―」とは実に嫌な言葉である。少子化が進む国で、子どもを生む選択をしてくれた夫婦(あるいはカップル)に「罰ゲーム」を課しているようでは、この国の将来は暗いと言わざるを得ない。


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