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「ダイバーシティ」について

「クォータ制」というものがある。<人種や性別、宗教などを基準に、一定の比率で人数を割り当てる制度>のことを意味する。その狙いは、民主政治において、<国民構成を反映した政治が行われるよう、国会・地方議会議員候補者など政治家や、国・地方自治体の審議会、公的機関の議員・委員の人数を制度として割り当てる>ことであり、<政策決定の場の男女の比率に偏りが無いようにする仕組みのこと>でもある(以上、Wikipediaより)。

企業の取締役会メンバーや経営幹部にも「クォータ制」を導入するべきであるという意見はずっと以前からある。日本ではいまだ検討段階にとどまるが、欧米では、既に実際にかなり導入されているようだ。

僕としては、「クォータ制」大いに結構だと思っている。各企業は、女性役員、女性管理職を積極的に登用すべきである。

こういう話をすると、日本ではまだまだ、「性別ではなくて、実力で選べ!」とか、「女性であることを理由に、女性ばかりを優遇するのは逆差別だ!」とかいった反発意見を食らうことになる。あるいは、「フェミニストか?」とか、「オンナに媚びているのか?」といったバッシングを受けたりもする。

そうではない。僕としては、企業としての経済合理性、リスク管理の観点から、女性役員や女性管理職を登用することが理に適っていると思うから、そのような主張をしているに過ぎない。

どういうことか。前にも書いたが、「ダイバーシティ」(=つまり、「多様性」)というのは、先が読めない時代において、一種の「保険」なのである。いろいろな人種や性別、宗教、世代の人間が、多角的な視点からモノを見ることによって、企業が視野狭窄に陥ってしまったり、それによって誤った判断をしてしまうリスクを回避することが狙いなのである。

従来の日本企業、特に伝統的な名門企業は、「金太郎飴」のように上から下まで皆んな同じ価値観を持った人ばかりのところが多かった。やることが決まっていて、皆んな揃って同じ方向に向かっていれば間違いがなかった時代ならばともかく、今はそうではない。「金太郎飴」では、全員揃ってズッコケる危険性が大いにある。

「ジェンダー」に関しても同様である。オッサンばかりの「ボーイズクラブ」的なノリで企業経営を行なっていること自体が、企業にとってはリスクだと言いたいのだ。

一般消費者向けの商材を扱っている企業、特にユーザーの大部分(または全員)が女性であるような企業であっても、経営陣や幹部の大部分を男性が占めている場合は少なくない。大手企業のテレビCMや広告等で、たまに「ジェンダー炎上」事件が起きるのは、オッサンたちの「当たり前」の感性のズレや勘違いを、オッサンたち自身がチェックするのは不可能だからである。

こうしたリスクを回避するには、少々無理をしてでも経営陣の一定割合を女性にするしかない。少なくとも、ある程度の裁量権を有するポジションで女性がそれなりに活躍しているようでなければ、「ちょっと、これオカシイのでは?」という声を社内で発することすら難しい。繰り返しになるが、これは働く女性のために言っているのではなくて、企業のリスク管理として必要だという話をしているのである。

世の中に女性向けの商品は多い。女性が購買権を持っている商品となれば、もっと多い。一般家庭に置いてあるものの大半が該当するかもしれない。そういう商品を扱っている企業の経営陣は、大部分が女性であっても構わないくらいである。少なくとも、マーケティングとか広告宣伝、CSに関わる部門の責任あるポジションには女性を登用するべきではないだろうか。その方が、ユーザーの感性とのギャップを小さくできると思われるからである。

同様に世の中の政党は、もっと女性議員を積極的に増やすべきである。それは有権者の約半分は女性だからである。国会議員は有権者の代理人である。したがって国会議員の性別・年代、地域分布等をできる限り有権者と一致させた方が、有権者の感覚や意向をよりシャープに政策に反映させられるであろう。ついでに言えば、閣僚の半分が女性であっても、僕は決して異論を唱えないつもりである。

こういう意見を言うと、「適任者がいない」とか、「女性は、どうせ結婚したら仕事を辞める」とか、「女性は、仕事に対する覚悟が足りない」とか言って反対する人が出てくる。男性だけではなくて、女性からもそうした意見が出たりする。

これに関しては、各論(つまり、個々人の適性とか出来・不出来の問題)と、総論(つまり、「あるべき」論)とを、ゴチャゴチャに議論するべきではないとだけ言っておきたい。

繰り返しになるが、「ダイバーシティ」は、女性やマイノリティのために必要な施策というよりも、企業や国家にとってのリスク管理であり、歩むべき方向性を見誤らないための「転ばぬ先の杖」だということである。



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