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データの寿命について

我々は、いろいろなデータをデジタル化してクラウド上に貯め込むことに慣れている。業務の効率化のためには、ペーパーレス化を推進すべきであるという点に関しては、誰も疑問を差し挟むことはない。

たしかにデジタル化することで、紙に印刷したら膨大なデータも、パソコンのHDに収まるし、どこにでも持ち運びできる。CDだったら何百枚分もある音楽も、余裕でiPhoneに収まる。動画や画像も同様。便利なこと、この上もない。

一方で、昔、FD(フロッピー・ディスク)があったけど、あれは今は使われているのだろうか。MD(ミニ・ディスク)なんてもあった。HDD(ハードディスクドライブ) やフラッシュメモリーの大容量化で見かけなくなったが、MO(光磁気ディスク)が記憶媒体として使われていた時期もあった。これらは、読み取るデバイスがなければ、中に何が書かれているか、さっぱりわからない。少なくとも素人には手も足も出ない。

クラウドの向こう側には、HDDがあるのだろうが、HDDには物理的な寿命がある。壊れてしまえば、中のデータは読めなくなる。バックアップは当然にされているだろうから全て壊れることは可能性としては低いが、絶対大丈夫とは言えない。

データを記録メディアに保存する場合、3つの観点から、安全性を考える必要があるという。

  • メディア自身

  • メディアを読み取るハードウェア

  • 読み取ったデータを取り扱うソフトウェア

いずれも、数年レベルであれば問題はないのだろうが、10年、20年とか、あるいはそれ以上の年月を考えると、いずれも大丈夫とは言い難い。

その場合、どのように対応するかということだが、これについても、3つの方法があるという。

  • ミュージアム手法

  • エミュレーション手法

  • マイグレーション手法

ミュージアム手法というのは、メディアはそのまま保存。システムもそのまま保存。記録当時のまま保存・保守を続けるという方法で、高コストな手法のため現実的ではない。

エミュレーション手法というのは、メディアはそのまま保存。システムなどは更新するが、古いメディアも読めるように作るという方法。CDメディアにおけるDVDドライブ(DVDもCDも読み書きできる)のようなイメージ。エミュレーション環境の維持、サポートの不安あり。

マイグレーション手法というのは、古いメディアから新しいメディアへ移動させ、システムも更新する方法。VHSビデオ→DVDやBlu-ray Discメディアへ移すイメージ。

現実的には、3番目の「マイグレーション」を選択するしかないということになる。

しかしながら、データを間違わずに移行する作業は手間もかかるし、人間がやる以上は事故や手違いが起きるかもしれない。こうした作業が幾度となく繰り返されていくうちに、長期間においては、消去されたり、壊れて読めなくなったり、劣化して使えなくなったりするものも一定量は発生すると覚悟する必要がある。そうなると、紙に印刷した本や書類と比べて、どちらが堅牢性において優れているのか、なかなか判断が難しい。

大昔、石板や羊皮紙、木簡に書かれた記録は、いまでも多くは読むことが可能である。もっとも、「読み取ったデータを取り扱うソフトウェア」に相当する、「昔の言葉を解読するスキル」という前提条件はクリアする必要がある。たとえば、古代エジプトのヒエログリフ(神聖文字)は、シャンポリオンがロゼッタストーンを解読したおかげで、いまでも読むことができる。

同じことを、デジタルデータで実現しようと思うと、思ったよりもタイヘンであり、クラウド上のデータは放置しておくと、永遠に不滅と言うわけにはいかない。

我々は、クラウドに保管しておけば、とりあえず安心と考えがちであるが、この辺のリスクについては留意しておく必要がある。

一方で、クラウド上のデータは加速度的に増加している。今後、5Gが普及すれば、ますます拍車がかかる。クラウド企業のデータセンターは電気を「爆食」している。いずれ人間の電力消費量の過半がデータセンターといった事態も起こり得ることである。

ここから先は、僕の私見であるが、残す価値のないデータは積極的に削除していくとか、「マイグレーション」の過程で、敢えて移行させることなく、風化するに任せるといったやり方も選択肢かもしれない。消費電力のことを考えれば、データを野放図に残すことは無駄であり、地球環境にとっても脅威となり得る。

SNSで僕らが呟いていることや、個人のスナップ写真や、YouTubeの動画、僕がいま書いているような記事などが、未来永劫、残すべき価値があるものとは思えない。何でも貯め込むのではなく、少なくとも、「捨てるルール」づくりは考えるべきだし、何でもとりあえず貯め込むのではなく、「保存期間」を設けつつ、「断捨離」していくことも考えた方が良いのではないか。


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