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【2022年版】中の人がガチでやるどこより詳しい企業研究 ~スズキ/マツダ/スバル/三菱自動車/ダイハツ編~



みなさん、ご安全に!カッパッパと申します。

大好評、2022年版もすでに合計600部以上購入いただいている

中の人がガチでやるどこより詳しい企業研究 自動車業界シリーズ


完成車メーカーは、昨年までは御三家と言われる「トヨタ/日産/ホンダ」編のみでしたが、今年は「スズキ/マツダ/スバル/三菱自動車/ダイハツ」編、国内全社についても企業研究を発信。

自動車業界で働き、毎朝日経/ネットで自動車ニュースをチェックするカッパッパが丸4日以上かけて30000字近い分量で書いた自信作です。

2022年版も大変好評。就活生、また業界関係者の方から高評価いただき、本当に嬉しい限りです。
昨年、就活生の方からいただきました感想で一番うれしかったのがこちら。

今回のnoteでは国内自動車メーカー、スズキ/マツダ/スバル/三菱自動車/ダイハツ5社の企業研究となっています。

このnote内容は基本的にトヨタ/日産/ホンダ編と同様の構成。

各社のコロナを含めた現状の経営状況、強み/弱み、中長期計画/CASEへの対応、注目すべきニュース

2022年3月現在の最新のデータを使い、どの企業研究よりも新しい情報になっています。その上リンク付きで作成することで深く学べることができる記事にしています。

また企業研究は業績、事業内容だけでなく、個人の働く環境、待遇もとても重要。

社風/年収/残業/年休消化率/3年離職率/勤務地

についてもまとめました。

これさえ読めば、企業研究は大丈夫。就活では選ぶ上でも役に立ち、選考の時には、周りと一歩差をつけることができる。業界関係者の方は、客先や競合の状況を総合的に掴むことができる。昨年版を読んで、「内定をGETしました」という嬉しい報告も多数いただいています。

就活生はただでさえES、面接の練習、OB訪問/社会人の方は目の前の仕事が手一杯でかなり忙しい。まともに読んでも15分。しかも、各章ごとにポイントをまとめわかりやすく。さっと読むだけ読むなら5分かからずに企業研究が終わる。自分でやるよりも断然早く、そして内容が濃い。企業研究は、この記事でやりきってしまいましょう!!

就活生の方、会社を選ぶ、そして面接を受けていく中で大事なのは「自分の考えを深く持つこと」です。この記事を鵜呑みして語っても、自分の思いがなければ薄っぺらに聞こえてしまいます。

メーカーの基本は「現地現物」。
今回の記事だけでなく、会社説明会やOB訪問、面接を受ける中で感じた社風、会社の良さ。そうした「現地現物」の情報を自分の言葉で語ることが内定につながります。

自動車業界、働く環境はかなり恵まれています。

「自動車業界は良いぞ」

「完成車メーカーは良いぞ」

このnoteを通じて自動車業界で共に働く方、またこの記事を自分の仕事に活かせる関係者の方が増えたら嬉しいです。

  • 完成車メーカー全体の特徴は「トヨタ/日産/ホンダ編」の冒頭、無料部分で読むことができます。下記、リンクよりご確認ください。


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さて前置きがずいぶん長くなりましたが、
中の人がガチでやる自動車業界企業研究 ~スズキ/マツダ/スバル/三菱自動車/ダイハツ編~
どうぞお読みください。

*企業研究のために使用する基データは
・日頃収集している自動車業界ニュース/レポート
・IR資料(決算報告書、中長期計画、年次報告書等)
・新卒採用サイト
・就職四季報
・オープンワーク
をベースにしております。

①企業研究:スズキ

総括

自称「ウチは浜松の中小企業」(鈴木修元会長)、静岡が誇る自動車/バイクメーカー、スズキ。国内では軽自動車に強みを持ち、「下駄を極めていきたい」と安価なクルマを提供。
海外では、これから販売台数が伸びてくる新興国、インドでTOPシェアを持つ。1980年代から進出する先見の明、鈴木修元会長の「勘ピューター」で大きく成長を遂げてきた会社。CASE対応への変革を進め、トヨタとの関係を深めている。
安くて使いやすい「日本の下駄」を提供し続けられるか、そしてインドでの販売拡大が今後のカギ。

歴史

1909年に「鈴木式織機製作所」として創業。トヨタと同様に織機メーカーとして事業を開始しました。
その機械技術を活かした事業として、自動車産業へ進出。1950年代にまずバイクの生産を開始。これがブームに乗り、輸送機器がメイン事業に。
1955年には初の自動車「スズライト」(2サイクル360cc)を発売。日本の軽自動車の先駆けとなりました。その後も軽自動車を中心に販売車種を広げ、1970年には「ジムニー」、そして1979年に「アルト」を発売。鈴木修元会長が社長就任後、初めて主導した車であり、徹底的なコストダウンで実現した安価な価格設定により、大ヒット。スズキ、そして鈴木修氏の地位を確固たるものにした1台になりました。
その後、1980年代にインドに進出。インド政府、現地合弁会社への支援を通じて大きく販売を伸ばし、現在でもTOPシェアを維持しています。そのほか、ハンガリーやパキスタンなど海外に積極的に進出しています。
1981年にはアメリカGMと業務提携。販売を伸ばすと共に技術交流も深め、品質の高いクルマを世界へ提供。2008年には提携を解消するものの、その期間でスズキは大きく販売台数を伸ばしました。その後も2008年、VWと一時業務資本提携を結ぶものの、こちらは短期間で解消しています。
その後は日産/三菱と軽商用車のOEM供給、トヨタとインド・欧州市場における車両の相互OEM供給について基本合意するなど、国内完成車メーカーとの連携を深めています。


2000年代には軽自動車だけでなく「スイフト」や「SX4」などの普通自動車の販売も広げ、軽自動車でもSUVの「ハスラー」をヒットさせ販売台数を伸ばしました。また販売開始から50年以上継続しているスズキの看板車種オフロード四輪駆動車「ジムニー」は納期が1年以上人気となっています。

売上規模(2020年度)

2020年度売上高は3兆1782億円。全然中小企業じゃない…

日本全体の中でも40位。TOPIX Large70の構成銘柄の1つであり、日本を代表する企業であることは間違いありません。

経営状況(2020年度まで)

https://www.buffett-code.com/company/7269/

他社同様にコロナ禍以降、販売台数が伸びず、厳しい時期が続いています。ロックダウンによる生産/販売停止、部品供給問題による稼働調整。売上高はコロナ禍前の19年度より減少している中でも、スズキは安定した利益率をキープ。四輪事業単体で2020年度は営業利益率6.0%とトヨタ次いで高い数字になっており、経営環境は他社と比べても安定しています。

2021年の販売/経営状況

2021年4-12月期の業績は利益率は維持しているものの、コロナ禍以前と比較すると回復はしていない内容となっています。

前期比では増収増益であるものの、コロナ前の前々期比ではマイナス。売り上げ/営業利益は伸びたものの、コロナ前には達せず。販売台数もコロナ前と比べると4輪▲9.8%とまだ回復に至っていません

四半期ベースでみると、コンスタントに利益は出ているものの上向いていないところが厳しい。やはり販売台数の伸びが半導体供給問題を始めとする部品ネックで止まっているのが業績に影響を与えています。

ただこうした環境の中でも利益率、5%を維持できているのはスズキの経営が筋肉質、売上高が少なくても十分に黒字を上げられる体質であることを示しています。

国内の状況(2021年)

日本国内の販売台数は半導体供給問題の影響を大きく受け、前年比▲8.8%、コロナ禍以前の前々期比▲16.6%と大幅な落ち込み。
特に10~12月期の国内完成車生産台数は213千台で期初社内予算比ではおよそ80%。

当初の計画よりも落ち込みは深刻なことが読み取れる日本の実績。本当に10-12月期はスズキ止まっていることが多かった…
需要はあるものの、生産ができておらず販売が伸ばせない状況。部品供給問題が解消すれば、増産し、売上高は伸びていくでしょう。

海外の状況(2021年)

スズキがTOPシェアを持つインドも苦しい状況。インドも前期比では増えてはいるものの、まだまだ低調。半導体供給問題に加え、コロナでのロックダウンが販売に悪影響。受注残が積みあがっていて、半導体供給問題で作れないのが本当にネック。海外も部品問題が解消されればフル生産状況に入っていくでしょう。

強み

・徹底した作りこみによる原価低減

スズキが他社と比べて強い点は高い営業利益率。5%を維持し続けています。トヨタが8%なのでそれに比較すると低いと思われるかもしれません。しかし、スズキのメイン車種が軽自動車やコンパクトカーなどの大衆車、1台当たりの価格が低め(自動車は基本的に高級車、高価格帯のクルマの利益率が高い)であることを考えると、スズキの体質がムダのなく、安価にクルマが製造できていることがわかります。
その要因は徹底した製造原価の低減。「製造業は1円のコストダウンが生死を分ける」と自社での取り組みもさることながら、外販部品に関しても仕入先から他社採用品をスズキ向けに転用することで、研究開発費やコストを削減。原価低減というとトヨタばかりが注目されがちですが、スズキも極めて厳密なコスト削減を行い、安価にクルマを作る体制を整えています。

・インドでの高いシェア

これから成長していく新興国、インドで高いシェアを持っていることはスズキの非常に大きな強みです。1980年代からインドに進出し、そのブランド力は極めて高く、販売台数はTOPを維持し続けています。
今後、インドで自動車の販売が伸びていくことは間違いなく、インド自動車市場の拡大と共に、スズキの販売台数、売上も連動し成長していくでしょう。
インドではトヨタ以上にスズキはブランド力があり、トヨタとの連携もこのインドでの高いシェアが大きな理由の一つとなっています。

・自動車事業以外を持つ多角的経営

スズキでは自動車以外でもバイクやマリンといった事業を持ち、多角的な経営を行っています。売上高自体はそれほど大きくないものの、両者共に黒字、特にマリンは非常に利益率は高く、直近の業績では営業利益率が25%超えと圧倒的。
自動車だけでなく、他の事業からも十分な利益を上げられることはスズキの大きな強みです。

・生活の足にこだわる一貫した経営理念

スズキには「アルト」に代表される「日常の下駄」として使える「生活の足」を提供するという一貫した経営理念があります。「安く、低燃費な自動車を提供し、消費者の移動を支える」。高級車ではなく、日常の生活に沿った普段使いのクルマで社会を支える。大衆車は利益の上がりづらい経営の難しいカテゴリー。ただ、そこには多くのニーズがあります。
他社が低価格車で利益を上げることに苦しむ中で、一貫してそのカテゴリーをこだわり、開拓かつ利益の上げることのできるスズキ。軽自動車へのこだわりはスズキの大きなストロングポイントです。

弱み

・CASEによる研究開発費/設備投資費の負担増加

自動車業界は100年に1度の変革期とされ、CASEという技術革新を迎えています。今後の成長のためにはCASE対応として、研究開発を進め、新しい設備を導入しなければいけません。自動車を開発、生産する費用は他業界と比べても多額であり、自社だけで負担していけば、経営が行き詰る事態になりかねません。
トヨタほどの売上、利益があれば単独で進めることができるかもしれません。ただ、自称「浜松の中小企業」であるスズキが国内、海外メーカーと戦っていくための十分な技術/設備を整えていくためには、CASE対応を進めながらも、いかに研究開発/設備投資を抑えられるかがカギ。
自動車メーカーとして決して規模が大きくないスズキにとって、研究開発費/設備投資費の負担増加は大きな課題の一つです。

・加速する世界の電動化

CASEの中でも特に直近顕著になってきたのが、EVを含めた電動化の加速です。日本を含む世界各地で規制が強まり、政府もEV支援を推し進めています。
こうした中で、スズキは電動化の流れに乗り切れてはいません。電気自動車、BEVの販売は2025年ごろからの開始、現在ハイブリッド車は発売していますが、「マイルドハイブリッド」(エンジンで走行しながら発電機を補助モーターとして利用)となっています。
電気自動車やモーターで走行する「ハイブリッド」車はどうしても価格が高くなってしまいます。しかし、世界で電動化が促進する中で、EV/ハイブリッド車への移行は避けられません。スズキが得意とする「安価な大衆車」のカテゴリーで利益と維持したままで、いかに生産できるのか。今後スズキが取り組んでいかなくてはならない問題になっています。

・インドへの海外メーカーの積極進出

スズキがTOPシェアを誇るインド。今後成長していくことの間違いない、世界から注目を集める市場であり、今海外メーカーが相次いで進出、販売を広げシェアを伸ばしています。
特に伸びているのが韓国、現代。21年5月にはコロナ禍パンデミックの影響もありましたが、23年維持し続けてきたスズキのTOPの地位を奪還。SUV、EVを主力として販売台数を伸ばしています。
これまでインドで絶対的地位を維持してきたスズキ。今後インドでの競争が激化し、TOPシェアを保ち続けられるかに注目です。

中長期計画とCASEへの対応

スズキは2021年4月から中長期計画を打ち出しました。
スローガンは「小・少・軽・短・美」による価値ある製品・サービスの提供。
中身はどのようなものなのでしょうか。

・目指す方向性
スズキのこだわりとして挙げられているのは「世界の生活の足を守り抜くこと」「新興国は今後も成長の柱」の2点。軽自動車やコンパクトカーに強みを持つスズキらしく、「世界中に小さな製品で環境に貢献」し、経済発展を遂げる新興国へサービスを提供することで、今後の売り上げを伸ばす方針です。

・事業戦略

事業戦略として掲げられているのは4点。電動化への対応、販売力の強化、商品力の強化、生産体制。
注目すべきはやはり電動化。スズキは軽自動車やコンパクトカーが主流で燃費は優れているものの、低価格車中心のためハイブリッド車の割合が低め、かつマイルドハイブリッド。これからカーボンニュートラルのためには、よりハイブリッド車を充実させ、電気自動車も発売していく必要があります。サービスを含めた体制作りは必須です。また今後オンラインなど販売網を見直し、効率化させていくことも費用軽減の中では重要です。
主要市場インドではこれから販売台数が伸びていくと予想され、需要に応じた生産体制の能増、ブランド力を活かし、利益の出やすいSUVセグメントの充実、日本同様電動化の促進が今後の躍進のカギになります。

・トヨタとのアライアンス

スズキ1社だけでは、CASEへの対応は費用がかかりすぎて困難。研究開発/設備投資費を減らすために、トヨタとの連携を深めていく計画です。ハイブリッド技術の共有やインドやアフリカなどの新興国での協業、互いにOEM生産を行うことで商品群を拡充させる。トヨタとの連携強化でCASEという高い荒波を乗り越えようとしています。

・中長期計画での目標

こうした施策によって、販売台数を伸ばし、26年3月期で370万台という目標を掲げています。インドを中心とした新興国での伸びがあれば、十分にこの数字は達成可能。
営業利益率5.5%は自動車、大衆車のメーカーとしては高い数字であり、CASEへの投資が膨らむ中で、この数字を維持できれば世界でも競争力のあるメーカーであることは間違いありません。

以上が企業研究になります。「小さく、生活の足となるクルマ」にこだわるスズキ。自称「中小企業」と言いながら、その売り上げ、利益率は他の完成車メーカーに全く見劣りしません。

それでは働く環境としてのスズキについてみていきましょう。

待遇/社風

就活生の方まず新卒サイトでチェックを!!

1.給料
有価証券報告書によると平均年収「665万円」。ボーナスは夏冬合計5.5カ月分。

基本的に給料は年功序列で若手のうちは低め。ただ、新入社員入社時は寮に入ることができ、金額が低いためその分お金は貯めやすく。ただ住宅補助は基本的にないため、寮を出ると厳しいかも。
ちなみに通勤費が独自計算のため、マイナスになるんだとか。

2.残業
「21.5時間」
ただしこちらは本当に部署によってばらつきが異なるため、入った部署によりけり。
ちなみに自動車業界は祝日なし、GW、お盆、年末年始が長期休暇という通称「トヨタカレンダー」を採用していることが多いのですが、スズキは7月に連続休暇があったりと少しだけカレンダーが違います。

3.年休取得日数
「13.5日」
自動車業界の中では若干低め。ただし、自動車業界全体として組合の力が強く、有休をとらないとフォローされることが多いため、一定数は必ずとれる。有休のとりやすさに関しても部署によって異なり、製造ラインの改造をする部署は休みの日に出勤しなければならないケースも(その代わり代休は取れます)

4.勤務地
生産拠点は「浜松」中心。新卒採用ページに↓のページがあるほど。

ただし、職種によっては全国の営業所に配属されることもあり。転勤も海外を含めてあり、決して浜松だけではありません。

5.社風
これまではカリスマ経営者の鈴木修氏が率いており、トップダウン型でその影響が大きく社風にも影響。徹底したコストカットは働く社員にも同様で、節電など小さなコストにも気を配る。また顧客ファーストの意識がとても強い。

ちなみにスズキに入社すると、自社のクルマを買うように推奨されるのですが、本社にはエスクード専用駐車場があるのは有名な話。(他の車とサイズが違うので駐車場が分けられているらしい)

まとめ

「小・少・軽・短・美」にこだわり、生活の足となるクルマを日本、そして世界に展開するスズキ。その徹底したコストダウンで他社と比べても非常に高い利益を上げています。
人々の生活を支えていく車を作るスズキで皆さんも働いてみませんか。

②企業研究:マツダ

総括

ロータリーエンジンやSKYACTIV TECHNOLOGYなど独自の技術を持ち、近年は「鼓動」デザインで高級路線、ブランド力を高めてきたマツダ。ロードスターやRX-7など熱狂的なファンも多く、現在はSUV車が稼ぎ頭。北米での評価も非常に高く、新工場も建設し販売拡大を目指しています。「人馬一体」「Be a driver.」と「走る歓び」にこだわりを持つ製品づくりを行う、広島、中国地方を代表する一大自動車メーカーです。

歴史

創業は1920年、東洋コルク工業株式会社として設立。当初はコルクの製造、販売を行っていましたが、コルク事業から機械事業へ転換。名前も東洋工業株式会社に変え、1930年代から三輪トラックの製造に着手。戦後、自動車の製造に進出し、最初は4輪トラックから、そして個人向け、ファミリーカーとして1962年に発売しキャロル360が大ヒット。その後もファミリアシリーズで小型車のラインナップを充実させていきました。
ただ収益性が低く苦しむ中で、新たな道を切り開くためロータリーエンジンの開発に着手。数々の困難を乗り越えながら、量産化に成功し、コスモスポーツを販売し大ヒット。企業イメージも向上し、「ロータリーのマツダ」を世間に知らしめました。
1970年代に入ってからはFordとの連携強化。資本提携を行い、マツダが製造したFordブランド車の国内販売も開始。1984年には現在の「マツダ株式会社」に改称しました。
その後、1990年代バブル崩壊とともに経営状況悪化。生産台数はピークの半分、多額の負債を抱える経営危機。この際にはFordの力を借りて構造改革を推進。新ブランドメッセージの「Zoom-Zoom」を打ち出し、アテンザやRX-8のヒットにより業績は回復。マツダブランドを復権させました。
しかし、リーマンショック、その後の大幅な円高により深刻な打撃を受け、再び業績が悪化。2008年から4年連続の赤字に。この事態を脱すべく、ブランドイメージを刷新、高級路線へと舵を切る戦略へ。エンジンなどの新技術を総称した「スカイアクティブ・テクノロジー」を展開。スカイアクティブ技術を搭載した車種の好調な売れ行きとなり、赤字から脱出。2016年には過去最高の利益を達成しました。
2015年にはトヨタとの提携拡大を発表し、長年続いてきたFordの資本提携は同年に解消。トヨタとは業務資本提携を結び、合弁で会社設立、工場建設を行うなど連携強化が進んでいます。

売上規模(2020年度)

2020年度売上高は2兆8821億円。いうまでもなく広島県の売上NO1企業。

日本全体の中でも47位。ちなみにシャープやオリックスよりも売上は大きいです。

経営状況(2020年度まで)

https://www.buffett-code.com/company/7261/

マツダの営業利益率は好調だった、14~16年は6.0%超えと自動車業界の中でも高かったのですが、コロナ禍に入ってからは大きく低迷。赤字になる4半期もあり、直近では非常に苦しい内容になっています。
2020年度の決算では、前年から売上▲5482億円。何とか黒字で営業利益率は0.3%。ただ、コロナ禍によるロックダウン、半導体供給問題による生産減がある中で赤字にならずに済んだことは体質の改善が進んでいることを示しています。

2021年の販売/経営状況

2021年4-12月期では業績が大きく回復。売り上げ、営業利益共に前期比増+通期見通しも上方修正と好決算内容になっています。

21年4-12月期、前期は営業利益赤字が今期では黒字に。売り上げ2兆1624億円、営業利益639億円、営業利益率2.9%を確保。他社と比べて特徴的なのは生産の苦しかった10-12月期で売り上げが下がっているにも関わらず、営業利益率が伸び、3.6%と上期よりも向上している点です。

10-12月期の中身を見ると、他社同様、販売台数減/原材料高騰がが大きくマイナス要因として働く一方で、為替差、販売改善(販売奨励金減/売り上げ構成での高価格帯シフト)、固定費効率化を進めて前期比とほぼ同等の数字に。利益がなかなか上がらずに苦しんでいたマツダですが、コンスタントに黒字を出せる体制が整ってきたことがうかがえます。

国内の状況(2021年)

日本国内では半導体供給問題による生産ネックにより、販売台数が前年比▲17%と大きく減、シェアも減る形に。既存車種のモデルチェンジが進められ、需要自体は堅調であるものの、数が作れていない分、販売に結びつかない苦しい状況が続いています。ネックとされる半導体供給さえ解決すれば、台数は一気に伸びていくでしょう。

海外の状況(2021年)

半導体が限られる中でグローバルでどこに販売を割り振るかが戦略的に行われ、地域により販売状況に差が出ています。

減っているのは中国。前年比▲25%の大幅な減。SUVCX-4などが台数を減らす一方、主力モデル、セダンMAZDA3は販売を維持。全体の半数を占めています。

そして今回の決算発表で明らかだったのは北米重視志向。他地域が販売を落とす中、北米は前年比14%増。3Q累計で過去最高の販売台数/シェア獲得と明らかに他地域よりも優先。北米はSUV人気が高く、しかも今はインセンティブが少なくても売れるまさに「ドル箱」市場。1台当たりの利益が高く、今マツダは北米で稼いでいると言って良いでしょう。22年1月からはトヨタとの合弁で設立したアラバマ工場で新型「CX-50 」の生産も始まり、より北米での販売台数が増えていくことは間違いありません。

強み

・ロータリーエンジンやスカイアクティブエンジンなどの高い独自の技術力
 マツダの何よりの強みはその技術力。ロータリーエンジンの量産化、スカイアクティブエンジンなど魅力的な内燃機関を開発し、乗り心地の良いクルマを提供。「Be a driver」「人馬一体」のキャッチフレーズが表すように、乗っていて楽しいクルマを作り出し、高い評価を得ています。

・鼓動デザインに代表される高いデザイン性
クルマを選ぶ上で「カッコよさ」、デザインは極めて重要な要素の1つです。マツダは車のエクステリア(外装)を「鼓動デザイン」を統一して採用。「職人気質に基づいた細部へのこだわり」を打ち出し、数々の賞を受賞。
統一された高いデザイン性はマツダの強みの一つであると言えるでしょう。

・アメリカでの高いカスタマー評価
直近の2022年2月では同月で過去最高の販売台数を記録するなど近年は北米での販売が大幅に伸びています。米国の消費者情報誌の『コンシューマーレポート』では「2021年自動車ブランドランキング」で初の首位を獲得。所有者の満足度が高く、北米での人気も年々高まっています。
自動車市場として世界2位、アメリカは1車当たりの新車車両価格も高く、利益の出やすい魅力的な市場。北米で高い評価を得られていることはマツダにとって収益上でも大きなストロングポイントです。

・MBDによる効率的な車両開発
マツダは開発段階でMBD(モデルベース開発)を積極的に取り入れ、開発工数を大幅に効率化
しました。MBDはアイデア発想、技術開発、車両構想段階や商品開発段階において、車両設計するモデルを使ってコンピューター上で開発します。実際に試作を作るよりも大幅に費用、時間を短縮することが出来、開発効率を大幅に上げることが出来ます。
マツダは2000年代から先行して取り組み、マツダの特色である「スカイアクティブエンジン」もMBDを活用して、開発されました。他社でもMBD開発に取り組んでいますが、マツダほどの効果を上げることはできていません。
今後技術革新が進んでいく中で、自動車業界では開発スピードをより上げることが求められます。そうした中でMBDに一日の長のあるマツダは他社よりも有利に開発を進めることが出来るでしょう。


弱み

・低い営業利益率
マツダの営業利益率は他社と比較しても低い数字になっています。
2020年は0.3%。何とか赤字に転落はしなかったものの、ギリギリの状況。2021年に入ってから、業績は回復しているものの、2.9%とトヨタの10.9%、スズキの7.9%と比較すれば、見劣りするのは否めません。
リーマンショック時の赤字以降、構造改革を順次推し進め、販売手法の見直しにより、黒字化を図れる体質になってきました。しかし、北米アラバマ工場の建設に伴う設備投資やCASEによる研究開発費の増加により利益率を大きく向上させることはできていません。

・強まる環境規制
マツダの強みは内燃機関の技術力にありますが、世界各地で環境規制が強まる中で、内燃機関車(ICE)の販売を伸ばし続けると罰金が発生し、マツダは対応を迫られています。一番厳しいのは欧州。燃費規制が強化されたために、気自動車(EV)「MX-30」を投入したのに加え、「マツダ6」のディーゼル車の販売中止や、SUVの一部モデルを値上げするなど、燃費の悪いモデルの販売を抑制も行っています。
トヨタや日産が強みとして持つハイブリッド技術の開発/販売は、遅れているのが現状であり、強まる環境規制、それに伴う罰金はマツダが今後取り組んでいかなくてはならない大きな課題です。

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