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SUSURU

現在15時。バイト開始予定時刻は13時。終わった。
急いで家を出て、駅に向かう。妙に頭が冴えていて、遅刻していると言うのに冷静だった。
まず、バイト先に連絡しなくては
ラインを開くと納豆スパゲッティのアイコンがズラリと並んでいた。何故だ。
バイト先のトークが判別できず、ひとつひとつ開いて見ていると、青い帽子を被って颯爽と自転車に乗ったおじさんがAKIRAの名シーンみたいに私の前に止まる。
「当社の年末の予定はご存じですかね」と、明日から三ヶ日にかけての予定表が渡された。
『〇〇牛乳』と表の上部にあった。
『〇〇』部分はよく見えなかったが、彼は牛乳配達をしているらしかった。
牛乳と彼の関連を解した瞬間、彼は商品の説明を始めた。生憎、勧誘を受けている暇はない。
しかし、ここで勧誘に捕まればバイトに行かなくてもよくなる。このような思考がよぎり私は彼からの迷惑を内心喜びつつ被った。
バイト終了は18時。たった3時間ほど話してくれさえすればよい。
彼の話は30分ほどで終わった。仕方なく私は、駅に向かった。駅に向かうと長い行列ができていた。何事かとも気になったが、連絡をしていないことに気付き、改めてラインを見返した。
すると、私は何やらメッセージを送っていたらしく、返事が来ていた。
『?』
とあった。
トーク画面を開いて送る相手を間違えたことに気づいた。仕方ないことだ。アイコンが全部納豆スパゲッティで統一されているのだから。
なんとかバイト先の納豆スパゲッティを見つけて、謝罪文を送った。それから今日は行けそうにない旨をしたためると、心が落ち着いた。
今日はこういう夢だった。

 確かに、今日はバイトであるためその緊張感から、遅刻をしてしまう夢を見るというのはわかる。しかし、納豆スパゲッティはなんだ。
私は納豆があまり好きではない。そういえば、昨日カルボナーラを啜っている人を見た。率直に「やだな」と思った。
お箸の国のジャポネーゼがフォークの使い方をどうこういうでもないが、やはりスパゲッティは啜らずに巻いた方が良いと思う。
ラーメンなどは啜って食べるが、あの食べ方も全肯定派ではない。もっと良い食べ方があるような気がする。
例えば、おでんの糸こんにゃくみたいに結んでまとめたり、一口のベビースターみたいに円柱に固めたり、やりようはいくらでもある。
納豆スパゲッティはスパゲッティの中でも啜る率が多いと思う。若干の和の要素がそうさせるのか。
解せない。納豆がスパゲッティを修飾しているのだから、紛うことなき洋食だ。異国の食べ物に自国の食べ方を持ち込むとは何事か。
ただ、多様性が謳われる現代で国の文化にこだわって食事するのも、もはやナンセンスなのだろうか。戦後から80年ほど経った今、パスタを巻いて食べることにこだわるのは、ヨーロッパを讃賞することになりかねないというのか。スパゲッティをこうして自由に啜っている。日本は自由を手にしたのかもしれない。
※バイトには間に合いました


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