川上カッパ

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スイソウガクブ

 バーの中は、蛍光灯の光で明るい。雰囲気がないバーでは、ソムリエまでも安っぽく見えてコスプレのようだった。  私は、ソムリエがラッパを口元にあてて構えたり、顔の横に立てたりするのを見ていた。繰り返し当てたり、立てたりしている。  ラッパの広がっている部分に何やら紙が貼ってある。ソムリエが動かすたび、ひらひらと動いているので気になった。  注視すると斜線と数字が書いてある。日付か分数かと思いながら、紙を見つつ、今さら「ソムリエは何をしているのか」と考えた。  ふと、友達を呼んで

    • SUSURU

      現在15時。バイト開始予定時刻は13時。終わった。 急いで家を出て、駅に向かう。妙に頭が冴えていて、遅刻していると言うのに冷静だった。 まず、バイト先に連絡しなくては ラインを開くと納豆スパゲッティのアイコンがズラリと並んでいた。何故だ。 バイト先のトークが判別できず、ひとつひとつ開いて見ていると、青い帽子を被って颯爽と自転車に乗ったおじさんがAKIRAの名シーンみたいに私の前に止まる。 「当社の年末の予定はご存じですかね」と、明日から三ヶ日にかけての予定表が渡された。 『〇

      • おこがましい母子

         授業中に発言を求められ、返事をして立つ。前方の生徒たちの首がぐるりと回って、こちらを見る。この時の感覚はたった今、産み落とされたような気分になる。  「他のクラスに間違えて入ってしまったのでは?」と思うほど、私はその光景の新鮮さに感動している。 この時、周りの生徒は私がボーッとしている、アホに見えているはずだ。  そんな視線を気にして、ふと何か言葉を口にする。  教師の眼差しは輝きを失い、口を両手で覆ったかと思えば、のけぞって爆笑し始めた。  生徒たちは、驚いたように前方の

        • 福袋の落とし前

           本棚で壁を覆い尽くした部屋に、国語研究の神と私が座っている。  国語研究の神とは、タモさんのような松本人志のようなとにかく誰もが認められたいような存在だった。私達は辞書の読み合わせを行なっていた。  私は神に認められたい一心で、辞書にある項目の一つ一つを「〜ですよね?」のような口調で確認している。神は逐一頷いた。それでもなお私は質問を続けた。 そういう夢をみた。  昨日通販で買った福袋が届いた。届くのを待ち望んで、朝9時から、1時間に5回ほどはヤマトの追跡をしていた。 届

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