ぬか漬けの匂い
最近、無印良品の「ぬかどこ」を購入し、ぬか漬けを作り始めた。
匂いが気になるとか、定期的にかき混ぜる必要があるなど、手入れが必要と聞いて、二の足を踏んでいたのだが、千葉県鴨川市にある「みんなみの里」で衝動買いしてしまった。
みんなみの里とは
ちょっとだけ、みんなみの里を紹介しようと思う。
こちらは鴨川市にもともとあった交流施設なのだが、2018年4月、良品計画に運営を委託、「里のMUJI みんなみの里」として生まれ変わった施設である。
建物は3棟あって、それぞれ直売所とカフェ、無印良品だけのショップ、体験施設になっている。
鴨川市というと鴨川シーワールドに代表されるように、海のイメージを持つことが多い自治体だが、この「みんなみの里」は海から20〜30分車を走らせた場所にあり、海は見えない。
実は鴨川市は山間部も多く、このあたりは「長狭米」と呼ばれるおいしいお米の産地でもある。農業も盛んで、みんなみの里の直売所には、この辺りでとれた野菜がずらりと並んでいる。
私はもともと道の駅や直売所巡りが好きなのだが、特にこの「みんなみの里」の雰囲気が気に入っており、よく訪れる。
そこで野菜と共に陳列されていたのが、こちらの「発酵ぬかどこ」。
その日は季節外れのきゅうりが安かったので、ついに購入してしまった。
ペットたちのお世話も、草花の水やりも、家事も、やることはたくさんあるのに、またタスクを増やしてしまった。ぬか床のかき混ぜ。
帰路に着く車の中で、少しばかり絶望していたが、いざ作り始めるとこれが、結構楽しかったのだ。
ぬか漬けは、懐かしかった
まずは手始めにきゅうりと茄子を漬けてみた。茄子は紫の色素が出なくなるまで塩で揉みすぎてしょっぱくなってしまった。きゅうりもちょっとしょっぱい。
次はきゅうりとかぶ。少し塩味がまろやかになった。かぶは驚くほどおいしい。旦那にも食べさせてみると、「漬物は大根に限る!」と言い切っていた旦那が、かぶの美味しさに驚いてくれた。
次はニンジンとかぶ。にんじんは独特な香りが際立つ。かぶは酸味をしっかり感じるようになった。
と、こういった感じで毎回少しずつ味が変わっていくのが面白い。実験をしているようだ。
また、ぬかをかき混ぜるのも、土いじりと似てなんだか心が安らぐ。
懸念していたぬかの匂いも、懐かしく感じ不快にはならなかった。どこで嗅いだ匂いなのだろう。
そして5回目の野菜を入れた時、急に思い出した。
「これ、ばあちゃんちの匂いだ!」
ばあちゃんの漬物部屋
私の母方の祖母は、良く漬物を振る舞ってくれた。10時のおやつも、3時のおやつも、テーブルの上にはお茶菓子と共に漬物が並ぶ。
白菜の浅漬けを始め、いかにんじん(福島の郷土料理)、たくあん、カリカリのうめ、らっきょう、もちろんぬか漬けも。
祖母は私たちが訪れると、いつも車庫の奥にある、陽の当たらないひんやりとした部屋に行って、たくあんやきゅうりを持ってきた。言うならばその部屋は「漬物部屋」だ。
そう、私のぬか漬けの匂いは、完全に「漬物部屋」の匂いだった。
実は、祖母宅の漬物部屋の全貌を見たことがない。私が小さい頃、祖母の漬物部屋についていくと、悪戯されたら困るからか、入り口に木の板を置かれて、入れないようにされていた。
その名残でなんとなく入ってはいけない部屋のような気がして、今の今まで入ったことがないのだ。そしてなぜかうちの母も、あの部屋に積極的に入ろうとはしない。
あの場所は、祖母の秘密基地。祖母の聖域なのだ。
そんな祖母も最近ではすっかり足腰が弱ってしまい、漬物部屋に行くのも一苦労といった様子になってきたようだ。コロナ禍で1年ほど帰省できていないのだが、漬物たちは無事なのか気になってきた。
私のぬか漬けと、祖母のぬか漬けを合わせたらどうなるんだろう。歴史が違いすぎて、私のぬか漬けの味は霞んでしまいそうだ。というか、ぬか漬け同士を合わせることはできるのだろうか。
漬物初心者、我流を捨ててそろそろベテランに教えを乞うべきか。
と言うわけで、今度帰省できたらあの聖域に入れてもらい、祖母にレシピを洗いざらい教えていただこう。その日までどうか元気でいてほしい。
ついでに私のぬか漬けも食べてもらおう。今からダメ出しが楽しみだ。
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