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GUILTY&FAIRLY 『紅(あか) 別の世界とその続き』著 渡邊 薫    

第三話  この世界

 

どれくらい眠っていたのだろうか。

目が覚めて、音のするキッチンの方へと向かった。

 

「落ち着いたか?」

ウィリアムは、温かい沢山の野菜が入ったコンソメスープを器に装って、僕に渡してくれた。

「まあ……少しは」

リリーはまだ心配そうな顔で僕の事を見ていた。

ウィリアムは優しい声で僕に尋ねた。

「それで、どうしたんだい? 何かあったのか?」

「……」

「まあ、言いたくないのなら良い。ちょうど君の店に服を取りに来たところで良かったよ」

「ウィリアムがベッドまであなたを運んでくれたのよ」

「……そうだったのか。ありがとう。スープまで」

そう言いながら、ウィリアムの方を改めてしっかりと見た。

あれ? ウィリアムはこんな雰囲気だったかな?

……今日はやけにオシャレだ。

上下スーツを着て、きっちり髪をセットしている。

ウィリアムは、いつもはもっと独特なセンスの服を着ているのに。

それに、腹はぺたんこで、身体はとても引き締まっている。

よく見るといつもと全然雰囲気が違う。

——何とも失礼な思考が頭をよぎっていた。

「ごめん、ウィリアム。服を取りに来て出かける予定だったのかな?」

「いや、服を取りに来ただけさ。今日は特に用事はないんだよ。何でだい?」

——じゃあ何で、そんなに気合の入った格好をしているんだろう。

「何だか、今日はとても洋服に気合が入っているなと思って」

僕がそう言うと、リリーが会話に口を挟んだ。

「ウィリアムは、いつもこんな感じのお洋服だと思うけれど。お洋服は誰よりも気を遣っているわ」

僕は、その言葉についあからさまに、えっ? という顔をした。

そうか、こっちの世界まで同じウィリアムのはずがないか。

リリーだって違う。

僕は急にこちらの世界に興味が湧いた。

他はどうなっているのだろう。

似ていると思ったが、色々な事が違っている。

「気分も良くなってきたし、少し出掛けてくるよ」

そう僕が言うと、ウィリアムとリリーが顔を見合わせた。

「じゃあ、私も一緒に行くわ。今日は暇なの」

「私も一緒に行こうかな」

僕が出掛けるというのについて行くと言い出したのはきっと、様子がおかしい僕の事を心配に思ったのだろう。

でも、初めての世界で見覚えのある二人が一緒に出掛けてくれる事は心強かった。

「その前に、シャワーでも浴びて準備をした方が良さそうだね」

ウィリアムが僕の服を見て言った。

僕は、とてもボロボロの格好をしていた。

「……そうさせてもらうよ」

僕は自分の家と似たこの家のシャワー室に向かった。


GUILTY&FAIRLY  『紅 別の世界とその続き』(渡邊 薫 著)
全てはある妖精に出会ったことから始まった。
これは、はたして単なる冒険の物語だろうか。

異世界への扉。パラレルワールドに飛び込むことが出来たなら、どうなるのだろう。
自分自身はどう感じ、どう行動していくのだろう。
あるはずがない。
凝り固まった頭では、決して覗くことのできない世界。 https://a.co/9on8mQd
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