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イオンを創った女 ― 評伝 小嶋千鶴子

※私が読んだ本の書き出しとざっくりした内容を書き留める読書記録です


はじめの一行

はじめに

小嶋千鶴子ーーー日本の実業家。三重県四日市市で四日市岡田家が起業したイオングループの元経営者で、イオンのビジネス精神を築いた。
ウィキペディアではそのように紹介されている。また、岡田卓也イオン名誉会長は「姉、千鶴子がいたからこそ、現在のイオンの繁栄があることは間違いありません」と、その著書『小売業の繁栄は平和の象徴』のまえがきで感謝している。

イオンを創った女 ― 評伝 小嶋千鶴子(東海友和)

おそらく、一般の人からすると小嶋千鶴子さんと言われてもあまり知らない名前ではないでしょうか。私はまったく知りませんでした。
その方の本について、はじめにでwikiの記述を引用し、その一行が非常に本書の印象と合致しているというのが素晴らしい偶然ですね。(もしかしたら、自分で書いた?)

この小嶋千鶴子さんの立ち位置として、岡田卓也氏の言葉を引用したりして、本書の主人公を上手く説明し、権威づけているまえがきに感じました。

本書の内容

イオングループへの私の印象

まずは本とは関係ありませんが、私のイオングループに対する印象を書いてみたいと思います。
今から20年も前になるかと思うのですが、巨大ショッピングモールを続々と全国にオープンし、私の家から車で30分圏内に、3つも4つもイオンモールができました。はじめのうちは珍しいし、海外のショッピングモールをほうふつとさせる雰囲気に喜んでいましたが、だんだんこれだけ増えてくると飽きてきました。どこに行ってもイオングループというマンネリ化を感じたんですね。そして、近隣の小さな家族経営の小さな商店は駆逐されていくような感じを受けて、なんとなく微妙な感情を抱いていた時期もあります。

ただ一方で、たとえばイオングループは環境保護の一環として植樹をいろんなところで行っているそうですが、そのやり方がけっこう丁寧だ、とある方から聞いたことがあります。事実関係の裏とりはしてませんが、イオングループの植林は、ちゃんとその場所の樹木や植物を調査し、その場所のバランスを崩さないような植林をしているというお話がありました。とにかくうえりゃあいい、というアリバイ作り的環境保護とは一線を画する印象を抱きました。その後、台風や災害などである時は「トイレットペーパーがなくなる」とか、「マスクが手に入らない」とかいったとき、もちろん一時的には品切れになるのですが、何とか仕入れを確保して、ドドーンとたくさん売り場に並べる。この辺りが、小売りの意地を見せたれー!的な心意気を感じたことがありました。

ちょっと考えすぎかもしれませんが、そんなイオングループは私の中では最近けっこういい印象を持っていました。そして最近では、店の一角にちょっとした市場的な売り場も作ってみたりと、自分だけで生き残ろうというだけの侵略者でもないのかな、というイメージも感じつつあります。もしその感覚が間違いでないのなら、その社風はどういう経緯でできてきたのだろう?という好奇心が湧き、本書を手に取ることになりました。

人を育てる

三重県でスタートした地方の一スーパーは、岡田卓也氏と小嶋千鶴子氏のたっぐで一気に日本を代表する小売業イオングループを形成しました。
その肝はどこにあるかというと、人づくりではないかと思います。普通、会社が急成長する場合、社長はとにかく前に進むことばかり考えがちです。そうすると、会社の業績は上がっていっても、人のマネジメントがグダグダになり、空中分解することが少なからずあるようです。しかし、イオングループはその人に関する部分を、小嶋千鶴子氏が担当されたようです。そして当時では相当先進的な人事制度を敷き、今に至っているようです。たとえば、イオン大学なんていう教育機関をつくったり、その他、人事制度に関する取り組みはかなり前のめりだったことが本書からわかります。

本書の構成は前半戦が、小嶋千鶴子氏の生い立ちと会社へのかかわり方やエピソード。
そして後半は、小嶋千鶴子氏が行った経営の内にあるものを一つ一つ細かい項目に分けて解説されています。

どちらかと言えば、小嶋千鶴子氏が活躍した時代と言えば、昭和的な根性論が一般的だったと思います。
そういったときに、たとえば、「結果主義と成果主義は違う」という考えを持ち、たんなる結果で人を判断するのではなく、結果のみならずプロセスをしっかり評価する成果主義が大事と説いています。
日本では”成果主義”をいろんな会社が一斉に取り入れた時期がありましたが、それらが上手くいかなかったのは結果だけを評価する結果主義だったからと言っているようです。
こう言ったしっかりとした目を持っているということが氏の強みなのかもしれません。

また、早い時期から女性の社会進出を助けるような取り組みもされていたようで、この辺りの先見の明も素晴らしいと思います。

とはいえ、けっこう厳しい人だったことは間違いなさそうですが……。


いやーーー、読書って素晴らしい。

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ちなみに私はこんな本書いてる人です。


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